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勇者としての責任

 私が勇者として選定されてからもう一週間。 今皆何をしてるんだろう?

 私についてくれている聖女のエリミーナ先輩はすごく優しくて、ついつい甘えちゃう

 エリミーナ先輩はいつも私のことを気遣ってくれる。 自分だって友達や家族と別れて寂しいはずなのに…


「あなたの使命は重責、でもね、ナリヤ、そこまで気負わないで。 あなたはあなたの出来ることをすればいいの。 前勇者のレギルスさんもそうだったわ。 自分のできることをコツコツ積み上げて強くなっていったの」


「エリミーナ先輩、私、戦うのが怖いんです。 自分が死ぬから怖いんじゃなくて、守れず死なせてしまうことが怖くて、仕方がありません」


 正直に、自分の気持ちを伝える

 エリミーナ先輩は私を優しく抱擁してくれた

 まるでお母さんみたい


「ナリヤ、私だって怖いわ。 でもその時その時を全力で立ち向かうの。 そうすれば必ず結果は出せる。 あなたは強いわ。 きっと、大丈夫」


 この人が言うと本当に大丈夫って思えてくる。 私は人族の代表。 魔人を、魔王を倒し、世界を救う存在。 頑張らなくちゃ

 きっと魔王を倒して、リィリアたちの元へ無事に戻ってくる


「さて、まずは隣国、アードラントへ行きますよ。 勇者会議に出て顔を知ってもらうんです」


 アードラントはこの辺りでは帝国についで大きな国で、世界でも5本の指に入る位に大きい砂漠のオアシスにある国

 そこでは魔王が動いたり、新しい勇者が選ばれる度に勇者会議というものが開かれる

 この勇者会議、世界中からこの世界を守るため選ばれた勇者が集まって、魔王の動向や魔人の動き、新人勇者の顔合わせなどが行われる場で、私は自分の顔を知ってもらうためにその会議に出なきゃいけないの


「ナリヤ、これを」


 エリミーナ先輩が私に白い布を渡してくれた。 砂嵐吹き荒れ、太陽が照り付ける砂漠で肌を守るための布ね

 私達はそれを羽織っていざ砂漠へと繰り出した

 リラクラルという砂漠に生息する馬のような魔物に乗って、オアシスを目指す

 確かリラクラルに乗って二日くらい行けば着くって聞いたけど、とにかく砂嵐がひどくて視界が悪い

 だからこそこのリラクラルが必要なのよね

 この子たちは帰巣本能が強くて、アードラントの街が家だから、そこに向かって歩いてくれるみたいね


「ナリヤ、大丈夫ですか? ほら、手を」


 私とエリミーナ先輩の二人で一匹のリラクラルの背に乗った。 これは、いいわね

 すっごく乗り心地が良くてフワフワとした毛が気持ちいい


「先輩、喉乾いてませんか? 私水筒持ってきたんです」


 私は魔法瓶という中身が劣化しない魔法のかかったマジックアイテムを取り出して、コップに水を汲んでエリミーナ先輩に渡した


「ありがとうナリヤ」


 この辺りはすごく熱いからすぐに喉が渇くけど、二日間持たせなきゃいけないから節約して飲まないとね

 こういう時にリィリアがいてくれたらそんな心配もないのに

 あの子は非常に珍しい空間収納の力を持ってたし…


「ナリヤ、あなたも水分補給しておきなさい。 ここからしばらくは取れそうにないから」


「はい」


 私も水を一杯飲んで口元を布で覆った。 こうしておかないと砂が口に入って大変だから

 そうそう、リラクラルは背中にあるコブに水分を溜めてるから、一週間は飲まず食わずで動けるんだって

 魔物ってすごいのね


 出発してから半日

 なんだかリラクラルがそわそわして落ち着きがなくなってきた


「どうしたの? 大丈夫?」


 背中を撫でて声をかけてあげるとちょっと落ち着いたみたい。 でも、やっぱりなんだか様子が変


「どうしたのでしょう? ナリヤ、少し周りを見てきますからそこにいてください」


「わ、私も行きます!」


 もし砂漠の魔物が襲ってきたらエリミーナ先輩を守らなきゃ

 そしてその考えは正解だった


「どうやら、あの子はこれを気にしてたみたいね」


 リラクラルから降りてすぐだった。 私達の周りを砂の中を泳ぎながら何かがぐるぐると回り始めた


「あのヒレ、恐らくサンドバイパーです」


 砂漠を泳げるようにヒレを持った猛毒の蛇魔物、サンドバイパー

 その毒は少しでも体内に入ると体が痺れて、体中の穴という穴から血が吹き出て悲惨な死を迎える

 その死体を丸のみにする恐ろしい魔物


「エリミーナ先輩、ここは私が!」


「いいえナリヤ、貴方は体力を温存しておきなさい。 この程度なら私一人で大丈夫です」


 そう言うとエリミーナ先輩は神力を解放した


「シルフィナ、サラ、来てください!」


 これが、最強と謳われた先輩の神力…。 精霊召喚。 そして四大精霊のシルフとサラマンダー

 二柱ともすっごくきれいな女性だわ


「あらあら、後輩の前で張り切ってるのね」


「サンドバイパー? これなら私達じゃなくてもエルが倒せるじゃない」


 シルフィナさんとサラさんは先輩をつついてる


「ちょっといいとこ見せたかったんですよ」


 二柱の精霊は、あっという間にサンドバイパーの群れを倒してしまった

 なんてきれいで力強いのかしら


「ありがとうシルフィナ、サラ」


「またね、エル」


 先輩と精霊たちのやり取りだけで先輩がいかに精霊から信頼されているのかが伝わってくる

 精霊に愛された先輩、すっごく心強い


 翌々日の明け方、ここまでの道中特に危険もなくアードラントに到着

 私は砂を払い落としながら入国した

 勇者会議は三日後だから、それまでは休めそうね

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