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聖乙女生まれる41

 ルビーの蹴撃が何もない空間を蹴りつける

 ゴシュッという激しい打撃音が響いて何かが現れた

 これが、ニーズリザードか

 トカゲというよりまるでワニのようだ

 かなり巨体で、その大きさはざっと見たところ20メートルはありそうだ

 そんな巨体を蹴り飛ばすとは、ルビーの脚力はすさまじいと言える


「リィリアさん! ルビーと私が抑えている間に魔法を叩き込んでください!」


 アエトとルビーの絶妙なコンビネーションによってニーズリザードは攻めあぐねている

 口を開けて噛みつこうとすればルビーの蹴りがその顎を閉じさせる

 鋭い爪でひっかこうとすればアエトの拳撃で軌道を変えられる

 尻尾を振りぬこうとすれば、一人と一匹の同時攻撃で弾かれるといった具合だ

 私は狙い時をしっかりと見極めて、ライラとセリセリにも同時攻撃を支持した


「アークフレイム!」


「クロスバレッド!」


「アシッド!」


 私は炎の中位魔法を、セリセリは銃による攻撃を、ライラは酸の魔法で敵の鱗の鎧を溶かしにかかった

 ライラの酸によってニーズリザードの横っ腹の鱗が解け落ち、そこに私とセリセリの攻撃が直撃する

 大ダメージとまではいかないものの、なかなかの傷を負わせることができた

 次いで街の兵、ハンターたちの攻撃が続いた

 私の意図を汲んでくれたのか、酸で溶けた鱗の部位をひたすらに攻め抜く

 しかしやはりSランク、この程度で死ぬことはなかった

 むしろ傷を負ったことで余計に暴れ出している


「あっ! みなさん、回避してください!」


 アエトが叫ぶと一斉にその場からの回避行動が始まる

 だがまずい、逃げ遅れたものが数人

 ニーズリザードの腹が膨れ、のどが膨張し赤く光り、溶岩の塊のようなものを履きだした


「うわぁあああ!!」


 逃げ遅れた者たちが悲鳴を上げる

 私も防御結界を展開しようと走るが、間に合わない

 そこにアエトが彼らを守るようにして間に入った


「ドラゴンスケイル!」


 アエトは全身を竜の鱗で包むと自ら当たるようにして燃え盛る溶岩塊をその身に受けた


「あああああああ!!」


 火炎に耐性があるであろうアエトのドラゴンスケイルをもってしても完全には防ぎきれず、アエトは右半身に酷い火傷を負って倒れた


「アエト!」


 私は近づいて最大限防御結界を張ると火傷に苦しむアエトの治療に取り掛かった

 その間も襲ってくるニーズリザードはルビーが抑えてくれているが、彼女もまた傷を負い、持ちこたえるのがやっとだ


「う、ぐう、痛い、痛いよぉ」


 アエトの火傷は重症だ

 すぐにでも治療院に連れて行き、万全の態勢で治療したいが、奴の猛攻に応急的な治療が精いっぱいだ


「リィリアちゃん、私が見ます!」


 ライラは治療魔法と補助魔法に特化している

 彼女ならば適切に処置してくれるだろう


「頼みます!」


 私はライラにアエトのことを頼むとすぐに戦線に復帰して再び魔法を放った


「フリーズエンド!」


 今度は魔力の消費量など気にしない

 大切な友人を傷つけたこいつを確実に屠るため、私は上位魔法を放った

 半永久的に凍らせる魔法

 トカゲならば寒さに弱いはずだからな


「動きが鈍ったぞ! 一斉攻撃で畳みかけるんだ!」


 ハンターの一人がそう言ったのを合図に一斉攻撃が始まった

 動けない敵相手ならばどうとでもなるだろう

 私は勝敗の行方も見ずにアエトに駆け寄り、宙を飛んで治療院へと駆け込んだ

 ライラの適切な処置のおかげでアエトは今眠っている

 火傷の具合はかなりひどい

 可愛かったアエトの顔は右半分が焼けただれてケロイド状になっていた

 私がもっとしっかりしていれば…。 結界の展開をもっと早くできていれば、このようなことにはならなかった

 女の子の顔にこの傷は、あまりにも残酷だ…


「治療は承りましたが、たとえ助かったとしても、この傷まではわたくしたちではどうにも」


 治療院の先生は首を横に振ってありのままの事実を伝えた

 やはり、ダメなのだろうか


「ですが、希望はあります。 この街より南西に20キロほど行った山奥に、どんな傷でも治すと言う伝説の魔法医がいると聞きます。 名前をラタリウス・フロイト、異世界から来た人間です」


 異世界人、だと?

 この国に異世界人がいるのは初耳だった

 確かにこの世界には異世界人が時折流れ着くと女神さまから聞いてはいたが、この国にその一人がいるとは


「ええ、確かにラタリウスは異世界から来ていますわ。 ただ、かなり頑固で偏屈なので、わたくしのことを、いえ、それどころか教会の人間全てを信じていません」


 だったらなぜこの国にとどまっているのだろう


「それはわたくしにもわかりかねます。 神と言っても上位の神々と違って心のうちまでは覗けませんから」


 でもここにいてくれてよかったです

 そのラタリウスさんとやらに会えばアエトを治してもらえる


「ええ、行ってみる価値はありますわね」


 女神様も同意してくださったので私達はそのラタリウスさんの元へ行ってみることにした

 ちなみに問題のニーズリザードは無事討伐されたようだ

 依頼も完了したことだし、アエトを眠り魔法で完全に眠らせてから空を飛んで急いだ

 アエト、少しの間苦しいだろうがなんとか持ちこたえてくれ

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