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聖乙女生まれる39

 あれからアエトは私達の友人となった

 素直で優しい彼女はライラやセリセリともすっかり打ち解けていた

 とにかく彼女の汚名を返上させてやりたいが、まずはこの依頼書の束を片付けるとしよう

 彼女と共にこの依頼をこなしていくことが認められる第一歩となるだろう

 こういったことに関しての近道などはない

 ゆっくりと着実に歩んでいくしかないのだ


「次は迷宮都市エルディーラの司祭、ナコさんからの依頼です。 最近増えすぎた都市回りの魔物を討伐してほしいとのことです」


 前にエルディーラに行ったときはそこまで多かったイメージはない

 あの時は一見してもに三匹ほどいたくらいだったのだが、数ヵ月で出現数が数倍にも増えていた


「ひとっ飛びで行くです。 あ、でも、セリセリは二人までしか運べないです…。 誰を連れて行けばいいですか?」


「それならライラとアエトを連れて行ってください。 私は自分で飛べるので」


 ライラも風魔法で飛べるが、私とセリセリほどの長距離を飛べるわけではない

 この街からエルディーラまではなかなかの距離がある

 ライラでは途中でばててしまうだろう


「私、自分で飛べますよ」


 アエトが少し力むと背中から翼が飛び出した

 竜の翼、それも白く輝く美しい翼だ


「これ、もともとはえてるんですけど、人型になってから自由に出し入れできるようになったんです」


 自分で言ったように翼の出し入れをしている

 バサバサと翼をしまったり広げたり、それを見てライラとセリセリが喜んで手を叩いている


「翼があるなんてすごい!」


 セリセリ、君にもそれはあるはずなのだが…


「あ、私もあった」


 ともかく、まずはエルディーラに行かなければならない

 セリセリはライラを抱え、私とアエトは自らの力で空を飛び、エルディーラへと急いだ


「わー、すっごい! 人間がいっぱいいる」


 アエト、あまり大声でそういうことは言わないように

 さて、依頼人のナコさんに会いに行くか


 街の教会。 もちろんティライミス様の教会だ

 そこの司祭であるナコさんは私達を温かく迎えてくれた

 見たところ猫の獣人のようだ

 猫耳の生えた老人だな

 ナコさんは聖王様からの信頼も厚い人格者。 人が傷つくのを見過ごせないような人物なのだが、戦闘力は皆無なのでそれが歯がゆいのだそうだ


「多くの旅人がその被害を受けています。 私が討伐に迎えればよいのですが、この通り私の神力は成長自在というものでして、このように」


 これは驚いた

 先ほどまで年寄りの姿だったはずなのだが、今は子供の姿である

 まずい、これはまずいぞ

 これでは出てしまう、私の母性本能が


「あ、あの、抱っこしてもいいでしょうか?」


「あ、いや、ちょっとそれは、はわわわわ、やめてください~」


 子供など抱っこしたことはないのだが、何て柔らかく癒される抱き心地なのだろう

 彼女はもがいているが、私よりも小さいため抜け出せないでいる

 が、残念なことに大人に戻ってしまった

 それも20代くらいの姿に

 20代だとかなりグラマラスで悩ましい体つきをしている

 はぁ、せっかく可愛かったのに


「あなた、そのような一面があったのですね…」


 何をおっしゃいますか女神様、私はもともと子供好きですよ

 子供はいいですよ

 純粋で、曇りのない心

 私は世界中の子供が平和に暮らせる世界にしたいです


「その道のりはかなり厳しいですわ。 わたくしも何度もそう願いました。 時には力も貸し、導いてきましたが、人々は私のことを忘れるばかりです」


 女神さまは落ち込んでおられるようだ

 だがこのお優しい女神様のためにも私が実現するのだ。 平和な世界を


「ありがとうございます。 それだけでわたくしの心もいくらか救われますわ」


 叶えて見せますよ、私と女神さまの夢を


 ナコさんはよろしくお願いしますと私たちを送り出した

 ここに来るとき上空から街の周りを見ていたのだが、確かにかなり魔物が目立つ

 果たして私達だけでこれだけの数を討伐できるだろうか?


「任せてください! 人に仇名す魔物は私が許しません! 私のお友達に来てもらって倒してもらうんですよ」


 そうか、そう言えばアエトの力は魔物を召喚できたはず

 これなら戦力が大幅に強化できるな


「じゃぁアエト、お願いします。 ナコさんのおかげで人払いはできてますから、存分に」


 アエトはうなづいて友達の魔物を召喚し始めた


「アーク、レノ、ミコリー、マリシア、セットー」


 彼女の呼びかけで五匹の戦いに長けた魔物が召喚された

 これはまたなんとも立派な魔物だ

 アークという魔物は体に鎧をまとったトカゲ型魔物で、炎のトサカを持っている

 レノは可愛らしい熊のような魔物で、氷魔法が得意なのだそうだ

 ミコリーは巨大ムカデで、顎と外骨格は鋼鉄並みに硬い

 マリシアは真っ赤なカラスで、風を巻き起こして切り裂く攻撃を得意としている

 そしてセットー、こちらはスライムのうようなのだが、通常のものとは違い、色が白い。 どことなく愛嬌があって可愛いかもしれない


「みんな、この辺りに人を困らせる魔物がいっぱいいるらしいの。 みんなでそいつらを倒してほしいの」


 アエトが友達にそう頼むと、彼らは一斉に嘶いてアエトの役に立とうと頑張り始めた

 これはすごい、みるみる目につく魔物が倒されていく

 この魔物たち、相当強いようだ

 私達も負けじと四人で一匹ずつ着実に倒していった

 

 そして数時間後、適度に休憩を挟みながらだったので時間がかかってしまったが、あらかた魔物を倒し終えた

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