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聖乙女生まれる34

 石で塀を作り始めてから一週間、北から東、南と2メートルほどの高さの塀ができたが、それだけでは十分ではない

 私の横にはデュアルウルフと数日前に友達となったロックバードとヒートタイガーの子供がいる

 ロックバードは口から体内で合成した、硬度の高い岩を吐き出すことができるので素材を出してもらっている

 ヒートタイガーの子供は怪我をして鳴いていたところを保護した。 その傍らに親の死体が転がっていたので、他の魔物に襲われたのだろう

 親の死体と共に別の魔物の死体があったので恐らく相打ちだったのだ

 それから子供の手当てをするとすっかり懐いたのでそのまま友達として村に連れてきたのだ

 村の子供達といい遊び相手になってくれている


「もう少し塀を高くしないと大きな魔物なら這いあがってきてしまいますね」


「はい、私はもう少し素材を取って参ります。 リィリア様はお休みください」


 私達の持って来た食料や水で村の人々は回復したようで、村長となったセラルさんも今ではその可愛い笑顔を取り戻してくれていた

 よく見ると高貴そうな顔立ちをしており、獅子の獣人だと言うことが分かった

 獣人は力が強く、戦闘に長けているものが多く、このセラルさんも例外ではない。 それどころか戦闘センスは学園の戦闘教官であったビーズ先生すらしのぐ


「一人で大丈夫ですか? 念のためデュアルウルフのトレスをつけましょう」


 トレスというのは三頭のうちの一頭の名前だ。 それぞれイチ、セスタ、トレスという名前を付けてある

 中でもトレスはセラルさんによく懐いているので、魔物から守ってくれるだろう


「はい、ではトレス、行きましょう」


「キャン!」


 嬉しそうに尻尾を振りながらセラルさんの後をついて歩くトレス

 これなら安心して任せれそうだ


「さて、私は西の塀を取りつけにいきます。 ライラ、一緒に。 セリセリは上空から魔物の接近がないか警戒をお願いします」


 二人に指示を出して私は西の村出入口へと急いだ

 こちらの塀はまだ出来てはいないのでここから魔物に侵入される恐れもある

 念のため村人数人に見張りを依頼してあるが、戦えない子供達だけなので、魔物が来たら私の元へ報告するだけにするよう頼んである


「あ、聖女様だ!」


 私の姿を見て見張りの子供達は駆け寄って来た


「どうですか? 様子は」


「はい、大丈夫です! こっちはあんまり魔物がいないみたいだよ、です!」


 私とあまり年が変わらないであろう子供達は敬語を使うのに慣れていないため、普通に話して構わないと言ってあるのだが、たどたどしいながらも敬語を使おうとしてくれている姿が何とも可愛らしい


 子供達の見張りを家に帰した後、私はイチ、セスタ、ロックバードのキースと共に石を運んで積み始めた

 ロックバードのおかげで遠くまで石を取りに行く必要がなくなったのはありがたい


「キース、もう少し石をお願いします」


「ピュイ!」


 キースは一鳴きすると口から岩を吐き出した

 それを私は魔法でカットしていき四角く加工する

 そしてお手製のセメントでそれらを積み重ねて固めていく


「ふぅ、イチ、木材を少し持ってきてください。 セスタはそちらの岩を向こうに運んでおいてください」


 二匹は言われた通りの作業を従順にやってくれる。 何と頼もしいのだろうか


「もうすぐここも出来上がりそうですが、もう少し塀を高くした方がよさそうですね」


 それから数日をかけて西の方も塀が出来上がった

 だが、もう数メートルは高くしなければなるまい


「あともう少し高くします。 そうすれば大概の魔物は寄りつけなくなるでしょう」


 セラルさんを含めた大人たちにそう告げると感謝された

 感謝は出来上がってからと言いつつもやはりうれしいものだ


「大変です聖女様!」


 作り上げた高台から村の周囲を見ていた少年が走って来た


「どうしたのですか?」


「それが、南のゲートに向かって魔物の群れが迫ってきてるんです。 えっと、いちにいさん…。 いっぱいいました!」


 ここの子供達の識字率や算学に関する知識は非常に低かったため、ライラが先生となって教えていたのだが、さすがに一瞬で数を数えるようなことはできないだろう


「分かりました。 ライラ、セリセリ、行きましょう! 村の人たちは奥へ逃げていてください。 念のためイチ、セスタ、トレスを護衛につけておきます。 キースはこっちに!」


 キースは空を飛べるのでセリセリと共に上空から援護してもらう

 南口へ来るとすでにすぐそこまで魔物が迫って来ていた

 数は20匹ほどだろうか。 同じ魔物なので群れなのだろう


「あれはホーンオックスです。 肉食性の牛なので村に入られれば村人たちが危険です」


 ライラが冷静に魔物の説明をしてくれた

 見た目は一角の牛だがその凶暴性は高く、村人たちでは太刀打ちできないだろう


「私も戦います!」


 そう声をあげて私の横に立ったのはセラルさんだった

 その手にはお手製の木槍を持っている


「セラルさん、危険です。 ここは私達に任せてください」


「いえ、私は自分自身の手で村を守りたいのです。 この村はよそ者の私を受け入れて家族のように接してくれました。 恩返しがしたいのです」


 決意は固いようで、槍を構えて先頭のオックスに突き立てた

 その槍さばきは見事なもので、木槍であるにもかかわらず、しなやかに打ち付け、突き刺し、折ることなくオックスを圧倒していた

 私達もそれに加勢し、一時間後にはオックスは全滅していた

 こちらは多少の怪我を負ったものの、死者はゼロ

 完全勝利だった

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