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聖乙女生まれる33

 サビリ村での依頼を終え、次の依頼の確認をするため依頼書の束を取り出した

 次はこの近くにある隣村のガネルン村での魔物退治だ

 どうやら増えすぎた魔物の影響なのか、国の端であるガルネン村にも数多くの魔物があぶれてきているようだ

 まずは対策のための塀づくりとマジックアイテムを設置しての魔物避けだな

 塀づくりはさすがに私達だけでは無理なので村人にも手伝ってもらわなければならないだろう


「ではエドガーさん、私達行きますね」


 セリセリの翼が開き、私とライラを抱えると飛び上がった


「待ってください! なぜ私の名前を!?」


 村長のエドガーさんはそう叫んでいたが、私は片目を閉じウィンクの状態で答えた


「秘密です」


 セリセリは大きく羽ばたくとすぐに村長さんの視界から遠く離れた


「ガネルン村にはすぐ着くですよ。 このセリセリの翼ならどこだってひとっ飛びなのです!」


 二人も抱えているのにセリセリは何と優雅に飛ぶのだろうか

 翼と魔力で力強く羽ばたき羽ばたき、夕刻にはガネルン村に到着した

 その有様は酷いもので、ところどころに魔物に襲われた形跡がある

 村の奥にはたくさんの墓が並び、残された者達が祈りを捧げていた


「聖女様、ようこそおいでくださいました」


 この村の村長は既に魔物に殺され、村を取り仕切っていたのはまだ若い獣人族の女性だった

 この辺りで獣人族はかなり珍しい

 というのもこの国には住人がほとんど住んでいないからだ

 彼らはもっと東の方の獣人たちが作り上げた国、バルガーに住んでいる

 彼女は数年前、ボロボロの状態でここに流れ着いたらしい

 子供だった彼女を保護したのがここの村長だった

 村長夫婦には子供がおらず、彼女を養子として迎えた

 それ以来彼女はこの村の住人として受け入れられ、村長亡きあとは彼女がこの村をまとめていた

 名前はセラル。 彼女は自分の名前以外この村に来る以前のことは何も覚えていなかった


「こちらへどうぞ」


 セラルさんは今にも泣きだしそうな顔をしており、やつれきっている

 もともとは可愛らしい顔であったのだろうが、今は見る影もない


「ここ数年でこの辺りの魔物の発生件数は数倍から十数倍と年々膨れ上がってきています。 対抗策として村のお金をかき集めてハンターを雇い、しばらくはそれで何とかなっていたのですが、お金もそこを突きてしまいました。 しかしそのハンターさんは私達を助けるためだと言ってその後も報酬なしで魔物を倒してくれていました。 ですが、つい先日、うぅ…。 魔物に、殺されました」


 そのハンターは名をラティスと言い、近くの街を拠点に活動した女性ハンターだった

 ランクはCランク。 この辺りでは相当に強い


「彼女のおかげでこの村は守られていました。 この村では戦える者はいません、今はもう女と子供、老人しかいないのです」


 確かに周りを見ると、やせこけた子供達と今にも倒れてしまいそうな老人たちばかり

 これは魔物が来ないよう整えただけでは問題解決になりそうにない

 戦える者がいなければ狩りをすることも水を汲みに行くこともできないだろう

 どうにか手立てを考えなければ


「まず村の周囲に石で塀を作ります。 そのあとは5メートルごとにこの魔物避けの石を埋め込んでいきます。 これで魔物は寄り付かなくなるはずですが、それだけでは狩りに行くこともできませんね…。 どうすれば…」


「それならいい方法がありますわ。 とりあえず魔物を探しなさいな。 手ごろな…。 そうですわね、この辺りならデュアルウルフという魔物がいたはずですわ」


 女神様の助言。 どうして魔物を探すのか分からないが、女神様の言うことに間違いはない


「少し、私は周囲を見回ってきます。 その間にいい方法を思いつくかもしれません」


 石塀の作り方を教え、私は使えそうな素材を探しつつデュアルウルフも探す

 村の外に出てものの数分でそのデュアルウルフは見つかった

 牙をむき出しながら涎をたらし、数匹で私を取り囲んだ


「まず殺さないよう気を付けて気絶させてくださいまし」


 女神様に言われた通りに眠らせる魔法を唱えてデュアルウルフを眠らせた


「これでいいでしょうか?」


「ではデュアルウルフに手をかざしてください」


 私は手をかざしてデュアルウルフを撫でた


「これでこの子たちはあなたのお友達ですわ」


 はい?

 どういうことでしょうか?


「そのままの意味ですわ。 この魔物たちは今あなたのことを大好きになったのです」


 目を覚ますデュアルウルフ達

 その目には敵意ではなく好意が映っていた


「キャン!」


 尻尾を振っている

 魔物たちが、懐いた?


「その通りです。 この世界には魔物を使役する職がありますが、貴方のは使役ではなく友情ですわ。 魔物は懐き、貴方の良き友となりますのよ」


 3匹のデュアルウルフを連れて村に戻る

 案の定悲鳴が上がったが、そこはしっかりとした説明をしておく


「ですから、この子たちは私の神力で友となった子たちです。 きっとこの村を守ってくれます」


 村人たちがデュアルウルフに指示をすると、彼らはその通りに動いた

 しかも尻尾を振り、まるで子犬のようにじゃれて来る

 子供達は大喜びだ


「この子たちは力持ちです。 石運びを手伝ってもらいましょう」


 そこからデュアルウルフ、村人たちと協力して資材を運び、石塀作りを開始した

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