表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/155

聖乙女生まれる32

 既にあの悪魔の姿は消え、その力の残り香すらない

 セリセリと二人でしばらく恐怖に震えていたのだが、少しやすんで落ち着いた

 今はただあの悪魔のことは考えないように上流の水源が止まってしまった原因を探そう


「セ、セリセリはまだ怖いのですよ。 あ、あんなの絶対勝てるはずないのです」


 そうだろうな。 私だって勝てる気がしない

 だが今は村の水源に何があったのかを探るのが先決だ

 

「セリセリ、こっちに来てください」


 探索から数分でその原因が分かった

 落石だ

 巨大な岩が水源を塞いでしまっていたのだ


「これは、大きいですね。 セリセリじゃ持ち上げれないです」


 岩をつつくセリセリ

 さて、右手の力が役立つな


「セリセリ、下がってください」


 私は右手を岩につけて神力を注ぐと岩は砕け散り、そこから噴水のように水が噴き出し、川に注ぎ込まれた

 川には清水が流れ始め、広がっていった


「ふぅ、これで大丈夫」


「のどが渇いたです。 飲んでもいいですかね?」


「いいと思いますよ。 視たところここの水源はこういった事故でもない限り枯渇しそうにないですし」


 セリセリは手で水を一すくいすると啜った

 良く澄んでいておいしそうだ。 私も一口手ですくって飲む


「美味しいですね。 なんだかすがすがしい気分になります」


 さっきの悪魔の恐ろしさを洗い流してくれているようだ


「さてと、これで水も戻ったでしょうし、村に戻りましょう」


 帰りはセリセリと共に飛んだ。 行きに歩いて行ったのは村人たちが上流に行くための道を確保するためでもあった

 途中途中に魔物避けのマジックアイテムも置いておいたので村人でも上流にたやすく行けるようになるだろう


「しっかり掴まっててね」


 セリセリは翼を大きく広げると飛び上がった

 魔法による補助もあるため私を抱えたままの飛行も可能なのだ

 空を飛ぶ彼女はまるで天使のように美しい。 思わず見とれてしまう


「風、気持ちいいですね」


「でしょー。 セリセリも飛ぶの大好きですー」


 夕日が下界を照らし、森林は金色に輝いている

 何と美しい光景だろうか


「村が見えてきましたよ。 降りますね」


 もう少しこの景色を見ていたかったが仕方ない

 村に戻ると村人たちが盛大に出迎えてくれた

 村に水が戻ったのだ


「ありがとうございました聖女様、おかげで村に水が戻りました。 それにほら、二人ともこんなに元気になりまして」


 村長の後ろにいるのは魔物に襲われ瀕死だった若者二人

 血色もよく、魔物にやられた傷がうっすらと残っているが元気そうだ


「ありがとうございました。 あのままでは私達は死んでいたでしょう。 本当にどう感謝したら良いやら」


「回復してくれてよかったです。 もう、毒も大丈夫そうですね。 あ、それと村長さん。 上流までの道を切り開いて安全を確保しておきました。 これで管理はしやすいと思いますよ」


「それは本当ですか! ありがとうございます! 本当に何から何までお世話になりまして」


 それからその夜は宴会となった

 私がとって来たグランドトードの肉も食卓に並ぶ

 他の食材はライラと回復した若者たちで取りに行ったらしい

 この村でも久しぶりのごちそうだ

 

「これ美味しいですね」


 私が手を付けたのはグラントードの塩焼き

 シンプルな味付けだが、ハーブと一緒に焼いたことで香り高い美味しいものとなった

 それに鳥型魔物のフリットとサラダ和え

 フリットの方は塩加減がいい塩梅で、サラダ和えはすっぱすぎないビネガーで味付けされている

 これは、ブドウのビネガーだろうか

 レタスのような野菜がシャキシャキしていて甘みを加えてくれており、ビネガーの風味がより引き立っていた

 ぶどうジュースも味わい深い。 ここではブドウでワインを作っているのだが、その醸造前のジュースを私達にふるまってくれたのだ


「聖女様、これをどうぞ」


 村長さんが何かを私に渡してくれた

 綺麗な石のはまったペンダントだ


「これは私の娘の形見です。 数年前魔物に襲われ、まだ12歳で女神さまの元へ召されました」


 村長さんの娘さんは五年前に突然村に入って来た魔物に襲われて亡くなったらしい

 このペンダントは村長さんが娘さんのために作ったもの

 昔川で拾った綺麗な石を加工して作ったそうだ


「すごいですわ。 そのペンダントの石、ただのアクアマリンですが加護が宿っています。 愛の加護よ」


 愛の加護ですか? それは一体


「その娘さん、イリーナね。 私の元へ還って来た愛おしい魂。 その子の最後の願いは、村長、エドガーへの祈り。 どうか彼を守ってくださいっていう思いですわ」


 どうやらそのイリーナの祈りが加護となってこの石に宿ったようだ


「そ、そんなもの戴けません! それは村長さんにとって大切なものなはずです」


「いえいいんです。 あなたを最初に見たとき、娘と姿が重なりました。 もう一度娘に会えたような気がしました。 お願いです、どうかもらってください。 この石がきっとあなたを守ってくれます」


 村長さんはそっとそのペンダントを私の手に握らせる

 力を感じる。 確かな愛の力を

 

「ありがとうございます村長さん」


 村長さんは満足そうにうなずいた

 こうして私達は最初の依頼を完遂することができた

 だが問題が残った。 悪魔という異質な問題が…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ