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聖乙女生まれる30

 いよいよ三人が、国の問題解決をして回る最初の日となった

 これを終えれば私も一回り大きくなるだろう。 それこそ身も心もだ


「では行ってまいります。 父様、母様、必ず私はハイプリエステスになって見せますよ!」


「頑張ってねリィリアちゃん。 絶対、絶対に無事で帰って来てね」


「大丈夫だよ母さん。 この子なら立派に務めを果たすさ。 それに聖女になったライラちゃんもセリセリちゃんもいるんだから」


 といいつつも父も涙を流している。 国を回って旅するのだが、確かにいつまでかかるかは分からないし、最初の依頼だけで長期間かかるかもしれない

 魔物や盗賊にやられ、今日が今生(こんじょう)の別れとなるやもしれないのだ

 そう思うと私も両親と別れるのが悲しくなってきてしまった

 大粒の涙を流しながら両親に抱き着く

 死ぬのは怖い。 しかし決意はもう固まっている

 私は、私にたくさんの愛情を注いでくれたこの両親の元へ生まれることができてよかった

 女神さまにも感謝しつつ、両親との別れを済ませた


「リィリアちゃん。 つらくなったら戻ってきてもいいんだよ。 私はいつでも待っているからね」


 聖王様は優しく私の頭を撫でてくださった

 彼の(めい)とはいえ、聖王様自身も心配してくださっているようだ


 ライラもセリセリも両親との別れを済ませると私達は最初の依頼があった村、サビリ村へ向かうことになった

 この村は少し前から水が出なくなり、田畑が干からびつつあるそうだ

 しかしその水が出る川の上流まで行くには魔物が多く、村にいる者では歯が立たない

 そこで私達が上流まで行って原因を突き止めると言うわけだ

 ちなみに上流までは歩いて1日はかかる険しい道のり。 相当に鍛えられるだろう


「サビリ村までは馬車で3日かかるみたいです。 街道はあるのですが、最近は魔物が増えて時々襲ってきてるみたいです」


 ライラがもらった資料を見ている。 この資料は様々な依頼が書かれており、その難易度でランク分けされていた

 黒い丸がついてあり、難易度が高いほど黒丸が増えていくようだ

 サビリ村の依頼は難易度3. 最高難度が7なので比較的こなしやすいと思われる

 

 それから3日、街道で時折襲ってくる魔物を難なく倒しながら道中を進み、時には野営をし、時には川で水浴びをしているところを盗賊に襲われ返り討ちにしたりと、それなりに忙しく進んだ


「もう間もなくつきそうです。 立札が見えました」


 ライラが窓の外を指さすと、そこには小さなボロボロの立札が立っており、サビリ村と書かれているのが辛うじて読み取れた

 村に入ると村人からの目が一斉にこちらに注がれる

 その目は奇異の目ではなく、救いが来たと安堵している目だった


「ようこそおいでくださいました聖女様。 お待ちしておりました」


 この村の村長だろうか? やせこけた老人が杖をつきながら慌ててこちらに走って来た


「無理なさらないで下さい。 ライラ、村長さんをお願いします」


 私はライラに村長さんを一緒に支えてもらい、彼の家へと歩いた


「申し訳ありません。 このようなおいぼれをいたわっていただき」


「いえ、当たり前のことですので」


 前世では考えもしなかった。 老人をいたわることなど

 しかしそんな私をこの世界は変えてくれた

 女神様の愛するもの全てが愛おしい


「それで、村の状況をお聞きしたいのですが」


「はい」


 村長の説明をざっくりとまとめると

 一週間ほど前から川の水、そこと水脈を同じくする井戸も枯れてしまったようだ

 原因を確かめに行こうと村の若者が二人川の上流に行ったのだが、魔物が襲ってきたため逃げ帰ったようだ。 賢明な判断だろう

 だがその二人はその時魔物の攻撃で深手を負い、今も生死の境をさまよっている

 まずはその二人を回復させるのが先決だろう


「そのお二人のいる場所に案内してください」


 村長の息子さんの案内で二人の元へ来ると、どうやら毒にやられているようで顔色が悪い

 私は左手を二人にかざして軽く触れる


「なんと、顔に生気が戻っている。 さすが聖女様だ」


 死にかけていた二人の若者は苦しそうだった顔が嘘のように安らいでいる


「ありがとうございます!」


 若者の家族たちが私にお礼を言うが、問題はまだ解決していない

 水が枯れた原因を探らなければこの村は救われないのだ


「では明朝、村の広場に集合し、川の上流へと向かいます。 私とセリセリなら半日ほどで到着するはずです」


 ライラもそのくらいの速度で移動できるだろうが、彼女にはここに残ってもらって先ほどの若者の治療を引き続きしてもらうことにしてもらった


「セリセリは頑張るのですよ。 村長さん、期待して待っていて欲しいのですよ」


 その日私達は村長さんの家に泊めてもらうこととなった

 セリセリの神力によって数日分の水を確保できたことで村人にも少し活力が湧いた

 田畑を潤わせるだけの水は出せなかったが、飲み水があるのとないのとではやはり全然違うのだ

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