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聖乙女生まれる29

 ナリヤたちが旅立って数ヵ月後、私達は学園を卒業することとなった

 この年の聖女に選ばれたのはライラだった

 本来ならば私が選ばれるはずだったのだが辞退した

 なりたくなかったわけではない。 代わりに目標ができたからである

 聖女とは選ばれた特殊な職業。 選りすぐりの中でも選りすぐられた者達だ

 そしてその聖女たちの中でも選ばれた極々少数にしか与えられない称号がハイプリエステス、つまり女教皇だ

 聖王様の補佐にして世界中を駆け巡りその強さで魔を撃ち、人々に教えを説く者

 当然世界に一人だけ、それをこなし、勇者のように世界を駆け巡っている存在がいる

 彼女の名前はレニ・ヴァニラ

 女教皇は勇者と同じく前任がいなくなれば次が選ばれるのだが、魔王のいないときでもそれは変わらない

 魔を打ち払い、清浄をもたらし女神の教えを届けるのが彼女の仕事だ

 レニ様は今も世界のどこかで活躍していることだろう。 しかしすでに体力も限界なため、力も衰えてきているらしく、早めの引退も考えられているのだとか

 ちなみに彼女の年齢は27歳とまだ若いのだが、多くの魔物と戦うためか体がボロボロになっている

 引退後は故郷であるこの国で後裔の育成、婚約していた恋人との結婚を考えているようだ

 亡くならなくても前任が引退すれば次は選出されるため、私にもチャンスはあるだろう

 そしてもし選ばれれば、人々の役に立てる上に女神様の布教活動もできる。 さらにはナリヤの手助けもできると言うわけだ

 

「ライラ、おめでとうございます」


「う、うん、ありがとうリィリアちゃん。 でも、本当によかったの?」


「そうだよ~、せっかく聖女様になれるのに~。 セリセリはもったいないと思うのですよ~」


 この二人は相変わらずだが、二人の実力は同年代の中でもひときわ抜きんでている。 きっと聖女としても素晴らしい活躍が見込めるだろう


「では、私はこれで」


「え? どこ行くのリィリアちゃん!」


 ライラ、止めないで欲しい。 私は卒業後は武者修行と布教を兼ねて各国を回るつもりだったのだ

 聖女でなければこの国から出ることはできないが、私の場合なら許しも出るだろう

 今度は女教皇候補としての修行となるため、聖女になるよりも過酷である

 そこいらの魔物に負けず、盗賊を一人で下し、誰よりも優しく、強く、女神の教えを広く伝えれる存在でなければ務まらない

 勇者に次ぐ実力者というわけだ


「私はこれから国を出て各地を回ります。 強くなり、ナリヤを陰から支えれる存在になりたいんです」


「で、でも」


「止めないで下さい。 決意が、鈍ります」


「でもリィリアちゃん!」


「では、またいつの日か会いましょう!」


「待ってってば!」


 ライラは無理やり私を引き留めた


「お願いですから止めないで下さい!」


「リィリアちゃんリィリアちゃん。 まずその荷物を置いてこないとだめだと思うんですよ。 はやる気持ちも分かるけど、卒業式のままの恰好で旅に出ちゃったらきっと後悔しちゃうとセリセリは思うのですよ」


 確かに、そうだ

 私の今の恰好はどう見てもおしゃれをした子供。 貴族の令嬢のようにしか見えない

 しかも卒業の祭典でいただいたものも盛りだくさんに抱えている。 こんな格好で旅に出ればそれこそ盗賊の格好の的だろうし、魔物と戦うのにも支障をきたす


「そ、そうですね。 慌てすぎました。 出立は明日にします」


「それはちょっと待って欲しいのですけどね」


 後ろから声がした

 振り向くと聖王様が立っておられるではないか


「リィリアちゃん。 確かに君は今までで一番の実力者と言えるでしょう。 女神さまもついておられる。 それでも、君はまだ幼くか弱い…」


「ですが、ナリヤは旅立ちました! 私も、この世界のために何か役立ちたいのです! 一刻も早く!」


 聖王様は私の頭にそっと手を置いて優しく語り掛けた


「いいかいリィリアちゃん。 ナリヤだって弱くはない。 君に次ぐ実力者で、戦闘センスに至っては君以上だった。 それに頭も切れる。 きっと危険があれば引く強さも見せてくれるだろう。 君は慌てずもっと実力をつけるのです」


 聖王様の言うことはもっともだ

 私は戦闘訓練、剣術においてはナリヤに一度も勝てていない。 彼女はいつの間にか私より強くなっていた

 それも彼女の努力の賜物だろう


「そこでです」


 聖王様はさらに続ける


「まだ国を出ることは許可できませんが、君にはこの国の様々な問題を解決してもらいます。 それと…。 ライラちゃん、セリセリちゃん。 君たちには聖女としてリィリアちゃんの補佐をしてほしいのです」


「え!?」


 一番驚いたのはセリセリだ

 彼女も聖女候補に残っていたが、聖女にはなれなかった。 そのため教会の職員として就職することが決まっていた

 口を大きく開けて驚く彼女の顔は可愛らしくもあり、久しぶりに笑ってしまった


「セリセリ、聖女になれるんです?」


「君は十分に聖女としての条件は満たしているよ。 本当は二人を選ぼうと思っていたのだけど、今回は勇者のごたごたもあったからね」


 今この場でセリセリは聖王様自ら聖女へと任命なされた

 つまりはこの三人で国の問題事を解決するのだ。 これほど頼もしいことはない

 私達は大いに喜び、また、少しでもナリヤの手助けができると張り切った

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