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聖乙女生まれる25

 街に到着。 人がごった返す迷宮都市エルドは活気に満ち溢れていた

 まず最初に目についたのが様々な料理が味わえる屋台。 迷宮を囲うようにして街があり、その街の周りを様々な店が軒を連ねる

 屋台はそんな店々の中に点在しており、何とも食欲を誘う香りが鼻をつく


「ちょっと屋台を見て回りませんか? 恥ずかしながら私、こういったものを食べたことがなくて」


 一応提案してみる


「リィリアもなの? 私もないのよね。 せっかくだから色々食べて回ってみない?」


「いいね~、セリセリお腹ペコペコなのですよ」


「私も食べたことないです」


 どうやらセリセリ以外露店や屋台で食べたことはないようだ。 前世でもこういった場所に行ったことがない私はかなりワクワクしており、おそらく年相応の反応をしていたと思う

 とにかく私はこの食欲を満たしてくれる最高のものを探そうと走り回り、気が付くと一人になっていた


「まずいな、はぐれるとは…。 少しはしゃぎすぎたようだ」


 独り言をブツブツと言っていると突然肩を掴まれた


「ひゃぅ!」


 驚いて声をあげ、肩を掴む手の主を見ると、いかにも悪人と言った面構えの男たち数人が笑いながら私を見ていた


「お嬢ちゃん、迷子か? 良かったらお兄さんたちがお父さんとお母さんの元へちゃんと返してあげるぜ?」


 そんな本当にいかにもなセリフでついて行くのはよっぽどの馬鹿か分別のつかない幼子だけだろうに。 いやまぁ今私は小さな女の子ではあるのだが、脳内は既に成人を大きく過ぎているわけだ


「知らない人について行っちゃだめってお母さんに言われてるので、失礼しますね」


 そう言って手を振りほどいて逃げようとしたが、どこから現れたのか、さらに数人の男が私の前に立ちふさがった

 まわりを見るとほとんど人がいない。 どうやらここは裏路地のようだ

 最初から狙われていたのか、それともたまたま見られてここで待ち伏せていたのかは分からないが、この人数は少し厳しいかもしれない

 相手は12人、私は一人。 助けを呼ぼうにも私の声は人の多い大通りまでは届かないだろう

 力を使うべきか? いや、それでは殺してしまう

 魔法を使うか? いや、数人ならばともかく、人数が多い。 何人かを迎撃している間に捕まるのが落ちだ

 私の筋力は人間の中ではかなり強い方だと自負しているが、それでも大人数に押さえつけられれば抵抗できないだろう


「ほら、抵抗しても無駄だって。 お兄さんたちが一緒にいいところに連れて行ってやるからよ」


 私の腕を掴んで無理やり連れて行こうとする男たち。 一旦抵抗せずに隙を見て逃げるか?


「おい、袋だ」


「へい!」


 下っ端と見られる男が大袋を取り出すと私にかぶせた

 どうする、どうすればいい。 こんな状況は初めてだ。 混乱してどうすればいいのか分からない


「声を出したら殺すからな」


 恐ろしい。 攫われると言うのはここまで体が震えるものなのか

 声も出せずに、私は男たちに担ぎ上げられた

 その時である


「な、何だこの女!」


「ぐあっ! 強ぇ!」


「ダメだ! おい引くぞ!」


 男たちは私をドサリと乱暴に地面に転がすと逃げ去ってしまったようだ

 袋が開けられ辺りを見渡すと、見知った顔があった


「まったくもうリィリアちゃん。 こんなところに入ってきちゃだめじゃないの!」


 そこにいたのは他国の母国語を教えているサーリ・レナマリア先生だった

 彼女は妖魔族という魔族に近い種族で、高い魔力と多くの魔法知識を持った種族だ

 魔法と縁の深い妖魔族は当然のように無詠唱で魔法を使えるアドバンテージを持っているが、体力はないため近接戦闘となると途端に不利となる

 ただ、このサーリ先生にそれは当てはまらない

 長い年月をかけて自らを鍛え上げ、しなやかで細い筋肉から繰り出す剣術は達人クラスとなっている


「ほら、皆の所に戻りましょ。 これで涙を拭いて」


 言われて気づいたが、私は泣いていたようだ。 いや、私ではなくこの体が勝手に泣いたのだ。 断じて泣いたのは私ではないのだ

 サーリ先生に手を引かれてナリヤたちの元へ戻れた


「リィリア! よかった、無事で」


 私がいなくなってすぐに三人は手分けして探そうとしてくれたらしいが、サーリ先生がどこからともなく現れてそれを止め、ここで待つように言ったそうだ


「本来なら私が出て来た時この訓練は終わりで補習を受けてもらうんだけど、今回は事が事だったから大目に見てあげる。 いい?リィリアちゃん。 あなたは確かに強いし、頭もいい。 でもね、まだ小さな女の子だてことを忘れちゃだめよ。 あなた可愛いんだから、どんな悪人や変態が狙ってるか分からないんだから。 変態の中にはあなたくらいの年齢が好きなヤバい奴だっているの。 それからね…」


 みっちり30分説教されたが、安心感で私はその説教を心地よく聞いていられた

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