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聖乙女生まれる22

 勇者様とミューシャさんはそのまままた旅に出てしまった。 ここでは魔人の目撃証言を元に来ていただけらしい

 巧妙に気配を隠していた魔人二人は私達を殺そうとしたときに思わず魔力を周囲に振りまいてしまった。 それを感知して勇者様は私達の前に現れたというわけだった

 この一件で私は痛感した。 まだまだ私達には伸びしろがある。 勝てないならば強くなればいいのだ。


「あら、意外と前向きですのね」


 こんなことで落ち込んでいるわけには行きませんからね。 私の、私達の夢はこの程度で砕けるようなやわな夢ではありませんよ


「さすがわたくしの見込んだ方ですわ。 確かにあなたはまだわたくしの神力を十分に引き出せてはいません。 悪魔の右手もあの魔人には効果がなかったでしょう。 しかしです。 神力を鍛えればきっとあの魔人にも対抗できるでしょう」


 それを聞いて安心しました。 もっと強くなって見せますよ女神様


「はい!」


 女神さまは再び眠りについたようだ。 当面の目標は強くなる、ということになるわけだが、それよりも今は返って来たフィニーちゃんを愛でることに必死なのである


「リィリアは本当にフィニキアが好きね。 ずっとここにいるつもり?」


「そ、そんなつもりはありませんが、名残惜しいのは確かですね」


 フィニキアも私との別れを惜しんでいるのか、悲しそうな顔をしている


「まぁそんなに遠くないんだからまた来たらいいじゃない」


「セリセリもそう思うですよ。 なんならセリセリがいつでも連れて行ってあげるのです」


 確かにそうだ。 ただ、セリセリの申し出はありがたいが、休みが終わり、授業が始まれば街の外には出ることができなくなる

 まぁまた休みの日に来ればいいな


「それでは帰りましょうか」


 すでに荷物をまとめ終えていた私達は、そのまま乗合馬車に乗って首都のティライミスへと戻った

 お尻が痛い


「ふい~、今度から空を飛んで行くことにするです」


 その意見には同意だが、ライラとナリヤの魔力が持たないと思う。 セリセリは魔法と翼で何とかなるだろうが、二人には少しばかりきついだろうな


「さてと、一週間後からまた授業が始まるわね。 みんな宿題はもう終わったでしょう? それならまた学園の演習場を借りて魔法の特訓しない?」


 ふむ、ちょうど私もそれを考えていたところだった

 ナリヤは行動力と思い切りがあって本当にいいリーダーシップを発揮してくれる

 本当は私がそうあらねばならないのだが、ついついナリヤに甘えてしまうのは彼女がお姉さん的な魅力を醸し出しているからなのかもしれない


 翌日の朝、学園前に集まったのは私達だけではない

 かつてのナリヤの取り巻きだった少女たち、ミィ、キィ、イィという三つ子もいた


「ナリヤ様」

「本日は」

「私達が」

「相手を」

「務めさせて」

「いただきます」


 この三人は思考が一緒なのか、ミィから順番に言葉を紡いでいく


「リィリアさん」

「もしこれで私達が」

「勝った暁には」

「ナリヤ様を」

「返していただきます」

「ます!」


 返していただきますも何も、私は奪ったつもりはないのだが…。 それとこの三人。 一人目、二人目で言葉が終わった場合、残りが語尾を繰り返すようだ


「いいでしょう、まぁリィリアに勝てるとは思わないけど、あなたたちも頑張りなさい」


「「「はい!」」」


 返事は同時なのか


 学園に入り、演習場の使用許可を取ってから演習場へ向かった

 危険がないように一応教諭がついて来てくれる。 今日はタップ先生と言う数学を教えてくれているホーリーゴブリン族である男性の教諭だ

 昔襲ってきたような野蛮なゴブリン族ではなく、聖職者として神に仕えるゴブリン族をホーリーゴブリン族というらしい

 しかもタップ先生はゴブリン族ではないのではないかというくらいにイケメンなのだ。 どうやらホーリーゴブリンはエルフに近い姿になるらしい。 違いと言えば耳の長さがエルフより短いのと、額に二本の小さな角があるくらいか


「では私はここで見ています。 危険を感じたらすぐに止めますから安心して練習しなさい」


 ニコニコと笑顔を向けてくれるタップ先生に女子たちはうっとりとしている(私も女子だがまだ男に惚れるという感覚は分からない)


 さて、まずは戦闘訓練と行くとしよう。 当然いつも使っている武器ではなく、木剣や木槍、弓は痛くないようスポンジを付けた矢をつがえてある。 それとセリセリの魔砲銃は威力を下げて空気の塊を出せるようにカスタマイズした


「じゃ、実戦形式で、一撃でも貰った人は戦闘不能ってことで向こうのベンチで待機ね。 チーム分けは私達四人と…。 あなた達三人だからもう一人必要ね」


「それなら」

「大丈夫です」

「です!」


「ちょうどほら」

「来ました」

「メイルです」


 メイルというのはこの三つ子と私達共通の友人で、ライラよりもおとなしく、かなり無口な少女だ

 無口だが感情は激しく、その顔での感情表現が非常に分かりやすい


「ではメイルも」

「来ましたので」

「実践訓練と行きましょうか」


「任せ、て」


 メイルもやる気満々のようだ。 かくして四対四の戦闘訓練が始まった

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