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聖乙女生まれる19

 楽しく泳いだ後はデザートタイムとなった。 この地域で取れるハートメロンという特産品。 その名の通りハートの形をしたメロンで、主に女性人気が高い

 しかもこのメロン、形だけが人気の理由ではなく、美容にいい成分がふんだんに含まれているそうだ

 私は興味ないが、あると言うなら食べるしかない。 メロンは好きだしな

 ちなみに一玉50シルバという高級品なので心して食べる必要がある


 ここでお金の単位や事情について話しておくと、この世界のお金は目に見える形で存在していない。 電子マネーやクレジットのようにカードで支払うのが普通だ

 ではメロンの50シルバというのは何か? それは一応のお金の単位である

 ブロンズから始まり、シルバ、ゴルド、プラティナというのがこの世界の単位で、1ブロンズが大体10円、それが100ブロンズで1シルバ、1シルバは1000円ということになる。 つまり50シルバは5万円だな。 さらに100シルバで1ゴルド、10ゴルドで1プラティナだ


「さぁ皆食べて。 氷魔法で食べるちょっと前に冷やしてるから一番おいしい状態の筈よ」


 スプーンで一口分をすくって食べてみると、メロンに適した温度、その直後にあふれる果汁、そして風味ととろけるような甘み

 今まで食べたどんな果物よりもうまかった


「日も落ちてきたみたいです。 そろそろ上がりましょうか」


 メロンを食べた後も少し泳いだのだが、皆へとへとに疲れ果てていた

 聖獣フィニキアだけはまだ遊びたそうにしていたが、別れを告げて別荘内に戻った。 私に頭を擦り付けて来るので非常に可愛い


「晩御飯は外で立食パーティーのようなものをしようと思ってるの。 その場でお肉を焼いてくれたり、料理を作ってくれるわよ」


 それは非常に興味深い。 超一流のシェフが目の前で作ってくれると言うなら見ておかないわけにはいかないな


 しばらく部屋で休憩(寝ていた)した後立食パーティーが始まった。 もうすでに料理がいくつかできており、ビュッフェのように小皿にとって食べる形式だ


「こちらはヒドリとトマトのコリュペイン風です」


 最初に皿に取ったのは鶏肉のトマトソース煮だ。 唐辛子のような香辛料で辛めの味付けがしてある。 辛いものは苦手なのだが、なぜか辛味をあまり感じなかった。 どうやらこの香辛料の辛味が少なくなるよう下処理を施してあるらしい。 それにトマトソースはまろやかで、鶏肉に非常によく合っていた

 ちなみに料理名のコリュペイン風というのは、コリュペインという地方で生まれた調理法だからだ


 それから次々に皿にとっては食べていく。 あまりにも美味しすぎて限界を超えて食べてしまった。 しばらく動けそうにない


 食休みの後は食後の散歩だ。 湖の周りを歩くのだが、岸際を歩いているとフィニキアも一緒に泳ぎながらついてきた

 クルルと甘えて鳴く声まで可愛いではないか。 このまま連れて帰ってはダメなのだろうか


「ダメですわよ。 この子はこの土地を守る守護聖獣なのですから」


 でしょうね。 思ってみただけですよ


 散歩は気持ちいい。 特に夜の月明かりに照らされ、そよ風に吹かれての散歩は最高だ

 ゆっくりと湖のほとりを歩いていると、私達がいる岸と反対側で騒ぎが起きた

 他の観光客もいるため騒ぐ客もいるのだろうが、尋常ではない。 風の中位魔法“フライ”で飛び、向こう岸へ。 フィニキアも一緒に泳いでついてきているようだ


 何の騒ぎなのかはすぐに分かった。 どうやら酔っぱらった無法者のような男たちが暴れているようだ。 他の観光客に迷惑をかけている


「こらあんたたち! 大人なら節操をもってお酒を飲みなさい!」


 ナリヤが注意すると、男どもは一斉にこちらを向いた


「なんだガキが、文句あるってのか?」


 男たちはすごむが、それでもナリヤはひるむことなく仁王立ちしている


「ん? このガキどもよく見るとかなり可愛い顔してるじゃねぇか。 攫って売っちまおうぜ」


 男の一人がそう言うと、男たちは私達を取り囲んだ


「ひ、な、ナリヤちゃん、怖いよ」


 ライラを守るようにして私とナリヤ、セリセリが男たちの前に出る

 彼女もかなり強くなったとはいえ、まだまだか弱い。 私達と比べると回復能力は高いのだが、ひ弱な少女だ。 今対峙している男たちに掴まれれば抵抗できないだろう


「なんだ? やろうってのか?」


 まったく、盗賊以外にもこういった輩は多いからな。 とりあえずお仕置きしておくか


 戦うと決めた私達はこんな男どもに止められるようなやわではない。 あっという間にのして縛り上げ、兵士詰め所行きとなった

 こいつらはこの辺りを犯罪ギリギリ(裏でばれないよう犯罪をしていたようだ)の行為で荒らしまわっていたらしい。 問題になっていた男たちなので当然報奨金をもらえる。 ラッキーだったな

 ちなみにこいつらの強さはレッドウルフよりも下だった


「ありがとうございました!」


 男たちに絡まれていた観光客たちにお礼を言われ、少しくすぐったさを感じたが、将来こういう感謝をされるようなこともやって行かねば。 偽善かもしれないが、私は人に喜ばれるということが本当に好きになっていた

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