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聖乙女生まれる17

 それぞれが思い思いの家族との時間を過ごしてから一週間後、首都に戻って来た私達はさっそくクラヴァリヴィルレイクへ行く準備を整え、集合した

 今回は皆両親なしの友人同士だけでの旅行だ。 夏真っ盛りのこの季節である。 湖で泳ぎたくなると言うのは必然だと言えよう


 大聖堂前の女神像広場。 ここには巨大な女神ティライミス像がそびえ立ち、人々を見守っている


「あ、遅いわよリィリア」


 集合時間少し前だと思うのだが、すでに私以外が全員集まっていた。 おかしい、皆で示し合わせたのだろうか? まさか、私だけハブられているのか!?


「フフ、セリセリ達が先に来ていたのは、リィリアちゃんにこれを渡すためなのです!」


「ああ、ああ、もう。 せっかくサプライズしようと思ったのに」


 なんだろうか、セリセリはリボンのついた箱を私に渡した


「これは?」


「もうすぐ誕生日でしょ? みんなでプレゼントを用意したの」


 なんということか、友人たちからのプレゼント…。 これほどうれしいことはない

 そうか、私達は魔物退治で稼げるようになっている。 そこからお金を出し合って買ってくれたというわけか。 なんて良い友人を持ったのだろう

 箱を開けると、蝶を模った髪留めが入っていた。 銀の装飾に赤い宝石がちりばめられたもので、マジックアイテムのようだ

 効果は身体能力の向上。 デザインも可愛らしく、少女のこの体にはよく合っている


「リィリアちゃん、似合ってますよ」


 ライラも褒めてくれている。 中位魔法で氷の鏡を作り出して見てみる。 ほほぉ、これはなかなか似合うではないか(自画自賛である)


 さて、いよいよ出立の時。 それぞれ親に見送られながらクラヴァリヴィルレイクへと向かう馬車に乗り込んだ。

 この馬車は乗合馬車のため他にも客がいる。 その中に一人気になる男がいた。 どこか挙動不審で怪しい

 馬車が森に差し掛かると急に停車した


「あれ? もう着いたのですか?」


 セリセリが窓から外を覗くと、急に馬車の扉が開かれて剣を手にした男たちに引きずり降ろされた


「ひぃ!」


 ライラが悲鳴を上げると、男の一人が剣を彼女の頬に当てた


「おとなしくしろよお前ら。 まずは金目の物を全てこの袋に詰めろ。 それと女どもはこっちで縛らせてもらうぜ」


 盗賊か。 全く持って不愉快。 なにも私達がバカンスに向かうときに襲ってくることは無かろうに

 まぁ盗賊たちには悪いが、ここは一気に片をつけさせてもらう

 私を怒らせたことを後悔してもらわなければな


「バインドサークル」


 無詠唱で敵を縛る魔法の円を展開して盗賊の身動きを取れなくした


「な! なんだこれ、動けねぇ」


 盗賊たちは痺れ、全く動けなくなった。 その間に悠々とライラを救い出し、盗賊を一つにかためると、たまたま商人が持っていた縄で縛り上げた


「ぐ、くそう、このグスター盗賊団が、こんな小娘に」


 グスターと名乗る盗賊のリーダーらしき男を小突いて気絶させると積み荷に乗せてクラヴァリヴィルレイクにある兵士詰め所に連れて行くことにした。 実は盗賊などを殺さず捕らえると賞金が出るらしい。 もちろん生け捕りは殺すよりも難しい。 まぁこのようにとらえられる魔法があれば話は違うが。 それもこれも無詠唱で相手に悟られないことが前提だな


「こんなところにまで盗賊とは…。 お嬢ちゃん助かったよ。 君は怪我はないかい?」


 ライラの頬を見るが、どうやら傷ついてはいないようだ。 まぁもしそうなっていればこの盗賊たちにはきついお仕置きをする予定ではあったのだがね


「よし、これで進める。 みなさん、まもなく出発いたしますよ」


 幸いにも誰一人怪我人はおらず、すぐに馬車は動き出した

 盗賊の男たちは既に荷台に括りつけられて呻いている。 がたがた揺れる度に体に負担がかかるだろうが、自業自得なので気にする必要はない


 数時間ほど馬車に揺られ、お尻が痛い。 お尻が、痛いんだ…。 乗合馬車の椅子は木で出来ている。 こんなものに長い間乗っていたら痔になるではないか!

 そしてようやく着いたクラヴァリヴィルレイク。静かな湖畔とはまさにここのことだろう

 澄み渡った水に鳥のさえずりと頬を撫でる優しいそよ風。 そして何より涼しい

 意外なことにそこまで観光客はおらずすいているのが嬉しい

 まずは盗賊たちを兵に受け渡した。 幸運なことに奴らは賞金首だったようだ

 思わぬ収入にホクホクである


「それじゃぁ別荘に案内するわね」


 そう、ここにはナリヤの別荘がある。 しかも使用人付きらしい


「ここが、私の別荘の一つよ!」


 胸を張ってナリヤがその別荘の前に立った

 なんという大きさのログハウス調の別荘…。 さすが大商人の娘と言ったところか

 しかもこの別荘、直接湖へのテラスがついており、そのまま飛び込める

 全く至れり尽くせりではないか

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