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終わりの始まり9

 私は自分が誰なのか分からなくなった

 しかしそれでも、私は私であることに変わりはない

 様々な記憶が混在しようとも、根幹の部分で私は常に同じだった

 私のやることはただ一つ

 世界が安寧で平和を保ち続けれるように動くだけだ


「その表情、どうやら悩みは吹っ切れたようですね」

「はい、白が元に戻らないというのなら、私が戻します。叩いてでも殴ってでも、たとえそれによって私が消えようとも」

「それがあなたの覚悟なのね。何としてでも白の目を覚まさせる。いいわ、どこまでできるか分からないけど手伝ってあげる。ただし、私がもうだめだと判断したら白を消す。それが私の役目なのだから」

「ありがとう、サクラ」

「まぁ白の分体程度なら任せなさいな。何度も戦ってるから弱点は分かってるし」

「え? 本当にあなたは何者なのですか?」

「そのうち教えてあげるわ。今はまず体と魂をしっかり馴染ませなさい」


 サクラの言う通り、魂が体に馴染まなければ黒の力はまともに扱えないだろう

 私は時の止まったこの世界でサクラに守られながら体感にして数年かかりようやく体に魂が馴染んだ

 その頃には私の中にある魂も一つに統合することができた

 今私の核たる記憶を担っているのはリィリアとしての記憶

 愛しい者を目の前で殺され、あれほど憎しみに満ち満ちていた心は今は凪のように落ち着いている

 失われた者は返ってくることはない。私は白に対する憎しみと恨みを確かに抱いてはいたが、それ以上にあの悲しい存在を助けたいとも思ったのだ

 落ち着いた心で私はサクラに告げた


「行きます。白を止めに」

「そう、それじゃあ行きましょう。その前にまずはあなたの仲間に会わなくてはね」

「仲間、ですか?」

「ええ、白と戦える者は段々と育ってきているわ。最初に私の故郷に行きましょう。そこにいる私の子孫が白と戦える力を持っているわ」

「あなたの故郷、それは見てみたいですね」

「ええ、全ての種族が仲のいい素晴らしい世界よ。魔族ですらね」

「魔族まで…。それはすごいですね」


 魔族は大体が人と敵対しているとサクラから聞いた

 なんでも魔族たちの祖神となった神がかつて全てを呪い恨んだときに生まれたのが魔族らしい

 それ故に魔族たちは人を見ると憎しみがあぶれて来るそうなのだが、現在その憎しみの怨嗟はその神がまともに戻ったことによって断ち切られたらしい

 これからは魔族や魔王ですら世界をより良い道へと導く存在になるのかもしれないな


 二人で端の世界から抜け出すと突然目の前に時空のひずみが生まれ、そこから見覚えのある顔が三つ飛び出してきた


「リィリア!」


 抱き着く彼女は、私の心をかき乱し、涙を流させるには十分な人物だった

 

「ナリ、ヤ? 本当に、どうして、何で生きて…。ナリヤ、それにライラ、ヨローナまで」

「私達、助けられたの」

「助けられた? でもあの時確かに」

「ええ、死んだわ。でも魂を保護してくれた人がいて、そのおかげでこうして生き返ることができたの」

「魂の保護? そんな高度な技術、一体だれが」

「私よネイト」


 ライラの鎧が光り、その本来の姿を現した

 その顔は、私の親友にして姉妹のレヴァだった


「レヴァ? あなたも、死んだはずじゃ」

「危なかったわ。あなたがそばにいたからそれを免れたの。殺される瞬間に私の中にある核の一部を植え付けて復活の基盤にしたの。で、あの後白が去ってから復活したってわけ。あなたの中から殺されていくあなたの大切な人達の魂を保護してたってわけよ」

「よかった、よかったです。私、本当にみんなが死んだと…。ええ、サクラ、私はこれで心置きなく戦えます! 白の目を覚まさせることに一つの曇りもありません!」

「分かったわ。で、レヴァだったかしら。あなた、白の分体を倒せる?」

「ええ、一人では難しいですけど、この子達と共になら」


 ナリヤ、ヨローナが着こんだ鎧が輝き、そこに懐かしい顔が見えた

 彼女たちは私の姉妹。セブという部隊の面々だった

 これだけのメンツがそろったのだ。これなら白と戦える

 私はその時まだ気づいていなかった

 そレが始まりだったのだということに

 

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