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終わりの始まり8

 全ての世界の端にある何もない場所

 そこでネイトは目を覚ました

 記憶が混濁し、リィリアとしての記憶が前面に出ているようだ


「あれ、ここは、私は何をして」

「あなた黒の核だったのね。それも中心の」


 頭上で声がして見上げると角の生えた美しい女性が顔をのぞき込んでいた

 驚いて飛び起きると女性はニコニコと笑いかけた


「まだ心がその体に馴染んでいないみたいね。ほら、これを飲みなさいな」

「これは?」

「ただのジュースよ。安らぎを与える効果があるの」

「ありがとうございます」


 不思議と初めて会ったはずの彼女なのに妙な親近感がある

 彼女からは大きな力を感じ、それは白や黒と同等、あるいはそれ以上だと分かった


「う、うう、頭が痛い、私はあれから」

「まぁ少し休みなさい。白が来ても私が倒しておくから」

「あなたは一体何なのですか? 見たところ鬼人、のようですが」

「うーん少し違うわね。私は鬼神、鬼人から鬼仙に進化、童子を経て鬼神、そして古からの力を経て世界の特異点となった者。そうね、世界を陰から守る者とでも認識してもらえればいいわ。本来は神々がやるべきなんだろうけど、あの人たち弱いから」


 神をもってして弱いと言わしめる彼女

 黒としての記憶をたどっても彼女が何者なのかが掴めない

 ただ一つ、彼女には全ての力を感じる

 魔力も、気力も、仙力も、聖力も、ありとあらゆる力が彼女の中に渦巻いている

 それらが統合されて黒や白と同じ力も加わっているようだ

 私の中のネイトとしての記憶がそう告げている

 

「どう、落ち着いた?」

「はい、ありがとうございます。私を白から解放してくださったのですか? 私とあなたとは何の接点もないはずですが」

「接点、あはは、そういうこと、まぁ分からないのも無理はないわ。そうね、私の目的のためとでも言っておこうかしら」

「目的ですか?」

「ええ、白を根絶し、世界に平和を取り戻すの」

「それは!」

「やっぱり、黒にとって白は姉妹同然だものね。でもあれはもう元には戻らない。もう手遅れなのよ」

「ですが、まだ何か手は、あのおとなしく平和な白に戻る方法が何かあるはずです!」

「無理よ。私も最初の頃はそう思って語り掛けてた。でもあいつらは聞く耳を一切持たない。世界全てを憎んで、全てを壊したいって衝動が抑えられなくなっている。止める方法はもはや消滅しかないの」


 彼女は本気で全ての白を消し去るつもりだ

 それで、全てが解決するのだろうか?

 私は、白をどうしたいのだろう

 大切な者全てが奪われた私は、白を滅ぼしたいのだろうか

 

「まぁじっくり考えるといいわ。ここは時間の流れがないの。あなたの心が導く結果を私は否定しないわ」

「はい」


 彼女は母のような包容力があり私を常に安心させてくれる

 そんな彼女との生活は非常に楽しく、あの世界で出会ったサクラという鬼神と同じような…


「あれ、もしかしてあなた、サクラですか?」

「なによ、今気づいたの?」

「は、はい、見た目があまりにも」

「ああ、こっちが本当の姿よ。 あの時は力を封じて姿を変えてたのよ。力を抑えてないと周りに影響しちゃうから」

「それほどの力を…」

「まぁあなたを助けれてよかった。とにかく今は心を静めなさいな」

「はい」


 この人は一体どれほどの研鑽を経てここまでの力を得たのだろうか

 大きな力には責任が伴うと何かで聞いた気がするが、彼女はその通り重責となっている力を使いこなし、その責任をしっかりと理解している

 彼女は強い


 それから時間のないこの世界で体感にして数日が経った

 白は来ない

 落ち着いた私はとりあえずこの体になれることから始めた

 基盤がリィリアの体とは言えそれにネイトとしての黒い力が混じっている

 体が作り変わっているため思うような力が発揮できないからな

 それにしても今頭の中がごちゃごちゃしている

 リィリアとしての記憶、ネイトとしての記憶、そして宗十郎としての記憶が入り混じっておかしな感じがする

 そして記憶はそれだけではなく、それ以前の人間として暮らした記憶がいくつも混ざり合い、別人格のように形成されようとしていた

 わたしは、誰だ

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