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終わりの始まり4

 白に全てを奪われ、何もかもを白く塗りつぶされた黒の少女

 かつて彼女はネイトと呼ばれていた

 もともとたった一人黒として生まれた彼女は、白に対抗するために自らを分裂させて姉妹を作り出した

 出来ることなら白と争うことなく新たに生まれる世界を共に見ていたかったが、白に生まれた憎しみの感情は思いのほか強すぎた

 ネイトは悩み苦しんだが、それでも白と元通り仲が良かったころに戻れると思っていた

 だが一度殺された時に分かった

 白は変わってしまったと

 そして彼女は殺された瞬間にその体内の中心に白の因子を植え付けられていた

 それにより負の感情を手にいれた彼女は、自らの核をか弱い人間という存在に移すことで感情を制御することに力を注いだ

 そのためか、記憶はやがて薄れて行き、自らが黒の核だった記憶すらなくしてしまった


 目から生気は抜け、その瞳には白の少女の狂気に満ちた笑顔が映っていた


「手始めにこの世界を消しなさい。あなたの力を見せて」


 白がそういうとネイトはおもむろに手を前に出し、根源から得た力を行使した

 一瞬だった

 その直後、今いた世界は白く包まれ、そこは何もかもが無くなり真っ白な世界となった


「フフ、アハハアハハハ! 素晴らしいわネイト! 私の可愛いネイト! 予想以上に強い力、これなら」


 ネイトが消し去ったのは今いた世界だけではなかった

 その周囲に重なって存在していた上下世界、平行世界、数億単位の世界が一瞬で消えたのだ

 

「かなり力をセーブさせたのにこの威力。これなら、大世界も一瞬じゃない? どう、ネイト」

「はい、恐らく可能です」

「アハハハァ! そうよねぇ、ええそう。あなたは私のもの、私達白の思い通りに動いてね」

「はい」


 ネイトの虚ろな瞳はただ真っ直ぐに白を見つめる

 心を壊された彼女の眼にはもはや白だけが全てだった

 

「それじゃぁ次はいよいよ、種蒔く者が一番大切にしている大世界を消しちゃおっか。ほらこっちよネイト」


 ネイトはコクリとうなづくと白の後をおとなしく着いて行く

 驚くほど多くの命をためらいなく奪った彼女の眼から一筋の涙がこぼれた

 白は気づかない

 心が壊れたと思われたネイトの中には、まだほんの小さな心の欠片が残っていた


 この大世界に住む管理者たちは大いに驚いた

 突如として数億単位の世界が消え、その原因である力の流れも感じることができない

 

「どういうことかわかりますか? アカシックレコードはなんと?」

「くっ、簡単に分かったら俺様も苦労しないぜな。アカシックレコードにもデータなし。くそ! くそ! あの世界にいたエイシャはどうしたんだぜな?」

「気配が途絶えました。恐らくは」

「泣いてる暇はないぜな! お前はリーダーだろ! しっかりするぜな!」


 一見すると小さな少女が大の男に対して怒鳴り散らしているように見える

 少女はこの大世界を裏で管理し、全ての世界の過去、現在、未来を視通すアカシックレコードと呼ばれる存在

 そして男の方は神々をまとめるリーダーだった

 この二柱は突如起こった異変を調べるためアカシックレコードにかかりきりとなっている

 調査に向かわせていた神々も消え、男神はかなり焦っているようだ


「おいラシュア! このデータをマキナに持って行くぜな!」

「これは?」

「今起こってる事象を解析するための装置だぜな。まずマキナに力を注いでもらうんだぜな。そのあとはあの双子に渡すんだぜな」

「ルニアとサニアにですか?」

「うむ、あの二人なら原初の娘と仲がいいぜな。あの子ならこの装置を使えばきっと何かわかるはずだぜな」

「分かりました。すぐにでも行ってきます」

「頼んだぜな。俺様はここから動けない。くそ! こういう時もどかしいぜな。あ、それと闇人も一人連れて行くといいぜな。俺様の力を一部分けてるからアカシックレコードにもアクセスできるぜな」

「はい、あなたも無理はしないで下さいね」

「いや無理はさせてもらうぜな。こんな状況、無理しなきゃ打開なんてできないんだよ!」


 アカシックレコードの少女に深く頭を下げると、ラシュアと呼ばれた男神はアカシックレコードを守る闇人の一人を連れて電子の女神マキナの元へと移動した

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