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終わりの始まり1

 サクラは良王だった

 民衆に慕われ、部下に慕われてこの世界を治めている

 この世界は平和そのものだったが、彼女を崇拝しすぎている感もある

 彼女がいなくなったら、この世界は崩壊するかもしれない

 だからこそ彼女は元の世界に戻らずにいるのだろう


「何見てるの? 私の顔に何かついてるの?」

「いえ、あなたはすごいと思いまして」

「褒めても何も出ないの。ほら、このドーナツも美味しいの。食べてみるの。それからこの桜餅、これは私の大好物なの」

「褒めても出てるじゃないですか」

「フフ、私にはこうして対等に話せる友人はもう長い間いなかったから、嬉しいの」

「友人ですか? 私のような得体のしれないモノが?」

「もうこんなに一緒にいるの。友人なの」


 サクラの言葉は嬉しいが、私は親しい人物を作ったことでまた失うのが怖くなってきた

 白は未だに私を狙っているかもしれない

 あの程度で死ぬなら遥かな昔から、世界が無いころから支配者として君臨などできないだろう

 白と黒はあの頃仲が良かった

 少なくとも黒はそう思っていたが、白の方はどうだったのだろう?

 私達眷属は大本と繋がっているため大本の考えが分かるが、白の方は何を考えていたのだろうか?

 いつか黒を滅ぼそうなどと考えていたのではないだろうか?

 いつから白はおかしくなった?

 種蒔く者が生まれたときからか?

 それ以前を思い出してみるが、やはりおかしなところはない

 私達黒と、白が全てだった頃は平和だったな


「お前、何を考えているの? 顔が怖いの」

「いえ、何も…。何も」

「つらいことは今は忘れたらいいの。幸せをいっぱい胸に詰め込めばいいの」

「はい」


 危ないところだった

 サクラに声をかけられていなければまた私は憎しみに飲まれているところだった

 今まで私になかった感情は、私という存在を変えた

 だからだろうか、黒の大本に繋がれない

 不安はあるけど、今のこの幸せな状況を失いたくないとも思った


「大変です王様!」


 突如扉が開いて兵が入って来た

 相当慌てているようだ


「どうしたのサスタ君」

「別世界からまた魔物が来襲しました!」

「また来たの。ここの所多いの。きっと世界がおかしくなっているの」

「え、どうするのですか? 何なら私が」

「客人に仕事させるわけにはいかないの。まぁ魔物程度なら数分もかからないの」

「その、ついて行ってもいいですか?」

「別にいいの。でも面白くはないの」


 私はサクラについて行くことにし、その小さな後ろ姿を追った


「場所はどこなの?」

「レイスール寺院の西の森です!」

「ちょっと遠いの。急ぐの」


 サクラは速度を上げる

 音速はとっくに超えているけど、まだ加速するの?

 私ならついて行けるけど、サスタと呼ばれた兵はすでに遥か後方で見えなくなっている

 それから数十秒ほどでその場所についた

 なるほど、異世界から来た魔物

 その巨体にここを守る兵たちは大したダメージを与えられていないようだった

 

「おーい、全員そこを離れるの。一気に行くの」

「サクラ様が来てくださった!」

「これで安心だ」

「おい! 引くぞ!」

  

 兵は全員一丸となって後方へと下がっていく

 そしてサクラは巨大なカエルのような魔物の目の前に来る

 そのカエルは一心不乱に森の木々を喰らっているようだ


「まったく、最近こんな魔物ばっかり増えて困るの。ここは自然保護区だから荒らしてほしくないの」

「あ、危ないですよサクラ!」

「心配しなくていいの」


 サクラは拳を握って、コンと魔物の体に当てる

 一瞬だった

 そこに次元の渦のようなものが現れて魔物は吸い込まれて消えた


「な、なんですか、今のは」

「うん? 私の力なの。神力を越えた悠久の力。まぁそこまで気にする必要はないの」

「は、はあ」


 なんだこの子は、こんな力、一介の一世界の住人が持つような力じゃない

 神を越えた力を、この子はもっている

 それなのにこんな小さな世界を治めているだけ?

 この子ならもっと大きなことができるだろうに、なぜ?


「不思議なの? 私はそこまで大きなことはしないの。ただ一つの世界の中だけで平和を完成させれてればいいいだけなの。いつか、いつになるかは分からないけど私は元の世界に戻るの。あそこには残したものが多すぎるの。だからそれまでは、この世界をまもって後継を見つけるの」

「後継ですか?」

「そうなの。お前でもいいと思ったけど、お前にはやるべきことがあるの。いつ旅立っても引き留めはしないの」


 彼女も、色々と考えてるんだな

 私もいつまでもここにいることはできない

 でも指針は示されたと思う

 私は何も滅ぼさない

 白と、話をつける時が来たのかもしれない

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