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咲き誇るは惡の華23

 白い少女は笑いながら立ち上がると自らが殺した死体を踏みつけ、蹴り飛ばし、さらに破壊していった

 既にぐちゃぐちゃになった死体の上に座り込み、ニタニタと笑い続ける


「負の感情で動く黒、いいわぁ。予想以上に仕上がっちゃったじゃない。白どもをあの調子で滅ぼしてくれれば白は私一人に。そのあとは疲弊したあの黒を殺して、それで全部私のもの。黒以外に私を殺せる者はいない。ふふふ、とりあえずはまた傍観しますか」


 私は自分の育った世界を後にして白を探し始めた

 今の私は様々な記憶が混ざり合い、自分であって自分じゃない状態だ

 その様々な記憶が怒りと悲しみに満ちている

 そうか、これが人間、人の心なのか

 私達黒はただ平和に暮らしていたいだけで、争いなんて望んでいなかった

 それもこれも全てあの種蒔く者が生まれたせいだ

 あれが生まれたから白と黒は争いを始めた

 白はおかしくなってしまった

 あれさえいなければ、白と黒は今も平和に、お互いを害することもなく暮らせていたのに

 でもあれが生まれたから、私は人として生きてこれた

 矛盾に頭が痛くなってくる

 分からないからとりあえず私は様々な世界を回ってみることにした

 リィリアの時のような幸せな生活を送ることはできないかもしれないけど、それでもこの気持ちが少しでも晴れると信じて

 白を滅ぼすことはひとまず後回しにしよう

 恐らくこれはリィリアとしての記憶がそうさせているのだろう

 この子は、私の良心だ

 怒りに身を任せようとする私をとどめたのはこの子の心だった

 リィリアは私に指針を示してくれる

 

 そして私は一つの世界に降り立った

 何の変哲もない、ただただ平和そうな世界だった

 ここに住む人間達は皆幸せそうな顔をしている

 私が少し前までリィリアとして住んでいた世界とは大違い

 その幸せが妬ましい

 ・・・

 私は、何を考えていた!?

 この世界を、消そうと考えたんじゃないか?

 駄目だ、なんてことを考えているんだ私は

 大切な者を奪われたからと言って、私が奪っていい通にはならない

 頭をブンブンと振って幸せそうに走る子供を見る

 そうだ、この世界に降りた理由。ここには何か不思議な存在がいたからだ

 力を感じる

 どこか神のようで、人のようで、鬼のようで、様々な力が入り混じったかのような不思議な者

 それはこの世界の王だった

 すでに数千年という時を生きている別世界から渡って来た王

 種族は鬼神

 気が付くと私はその王、桜色の髪を持った美しい顔立ちの鬼の少女の前に立っていた


「その力、お前はなんなの?」

「それはこちらのセリフなの。あ、私の名前はサクラ。かつて絶桜鬼と呼ばれたしがない鬼なの」


 その少女は別世界から鬼神としての力を試すために様々な世界を渡ったらしい

 そしてその旅の果てにこの世界に定住したそうだ

 彼女はその経験を、長い長い人と人との出会いと別れを語った

 その話は三日三晩にも及んで


「私は今、最高に幸せなの」


 そう締めくくられた

 そうか、出会いと別れは繋がっているんだ

 出会ったから別れがある

 分かれるから新しい出会いがあるんだ

 じゃあ奪われたなら?

 再びどす黒い気持ちが沸き上がって来そうになるのをサクラは私の手を握って止めた


「悲観、喪失、絶望、いろんな苦しみを一気に味わったのね? でも大丈夫、あなたが何者かは分からないけどここにいていいの。傷が癒えるまでいつまでもいていいの」

「でも…」

「大丈夫なの。何が来ようとこの大鬼神王サクラ様に任せればいいの」


 何故だろう。一介の、一世界の住人に過ぎない彼女がなぜここまでの力を感じさせるのだろう?

 何が来ようと大丈夫、そんな力強さがある

 私はしばらくここで彼女と暮らしてみることにした

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