黒と白
始まりは何もない
何もない世界
世界というのもおこがましい場所だった
そこで全ての始まりとなる白と黒が突如として生まれた
白は自分達の世界を作り出し、黒は漂った
真っ白な世界で白は平和に暮らし、何もない場所で黒はただただ時を過ごした
二つの色はまじりあうことはないが争うこともなく、時間という概念もないまましばらく続き、突然終わりを告げた
種をまく者、それが生まれた
彼らは世界の意志とも言うべき存在
次から次へと世界の元になる種を植え付け、芽吹かせていった
そのため白と黒には居場所がなくなる
二つは話し合った
自分たちの世界を守るため種をまく者を消すと意見する白と、共に歩み、共存を望む黒
二つは意見を違わせ、対立して争った
白と黒は眷属を産み、長い間争い続ける
それは世界の裏で起こることであり、種をまく者にも、彼らの創り出した世界の住人にも関することはない
やがて黒は白に勝利し、世界と共存する道を選んだ
一方で負けた白は世界の裏から虎視眈々と全てを壊す算段を画策する
まずは黒だ
奴らがいなければ白はただ自分達の世界で平和に暮らせていたのに
日に日にその憎しみが増していき
白は壊れた
黒は考える
白と袂を別ったが、白は友人で、恋人で、家族だった
共に生まれた白を、大切に思っていた
だからこそ消滅させなかったのだ
黒は嘆いた
世界が生まれたのは必然で、自分達は世界と共にあるべきだと考えた
だから協力して種をまく者たちに力を与えた
そしてそこから光と闇という概念が生まれ、その後光と闇から神とその反存在の混沌が生まれる
黒は次から次へと生まれる自分達とは違う意志ある存在に喜んだ
白は暗躍する
黒を消すために
世界を消すために
狡猾に、何者にも認識されることなく世界を裏から壊した
それは大きな悪意となって世界に広がり続ける
黒は気づかない
白はおとなしく世界の裏に引きこもってしまったと思ったから
やがて大本となる世界からも小さな世界が生まれ始めた
白はそれを狙って少しずつ悪意を放っていく
そして、黒の世界を見つけ、壊した
幸いにも黒自体は一つの眷属を除いて生き残った
偶然の産物か、それとも運命だったのか
死した眷属は自らを世界の小さな住人の魂に移し、世界を白の脅威から守ると誓った
現在から数億年前
種をまく者の子供の一人が白の悪意によっておかしくなった
そのせいで世界は大混乱を起こすことになる
黒はそれを白によるものと理解し、行動を開始する
消えた眷属を探し、供に戦うために
白と黒の戦いは
遥かな昔から、袂を別った時からずっと続いている
それはどちらかが滅びるまで終わらないだろう