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咲き誇るは惡の華19

 アイスナイトは物陰から急に表れた

 その恐ろしい苦悶の表情で、一目で私は硬直させられてしまった

 辺りには私の魔法による温気を一気に奪ってしまうほどの霊気が立ち込める

 なんという怨念なのだろうか、この世界全てを恨むかのようなその霊気に気を失いそうになる

 だがなんとか耐え、私は動かない足を無理やりに動かして走った

 幸いにも奴は追ってきていないが、なるほど、あれは相手にしてはいけない

 殺されないにはしろ、こちらもただでは済まないだろう

 何せ呪力というのは死してこそより強く発揮されると聞く

 アイスナイトの恨みはその呪力をさらに強力なものにしてあり、そのせいで払った瞬間にこちらに呪いが一気に降りかかるというヤバいものになっていた

 必死で逃げ続け、後ろから追ってくる気配がなくなったところで翡翠の凍て地から抜け出ることができた

 一体なぜあそこまでの恨みを持っているのだろうか?

 アイスナイトの過去は一切分からないが、関わるべきではないのかもしれない


 翡翠の凍て地から出て数時間後

 竜人の里が見えてきた

 切り立った山に造られているらしく、ところどころに橋がかけられ、空を飛べない種族も入れるように配慮されているようだ

 竜人は強者が多く、なにが来ようとも対処できるという自信の表れでもあるのかもしれない

 入口と思しき岩の積み上げられた場所に来ると、竜人の青年二人が門番のように立っているのが見えた


「む、人間か、それも子供だと? ここまでたどり着いたと言うことはそれ相応の実力があると見えるが、それにしてもお嬢ちゃん、その年でここまでの道のりを一人で? 道中はAランクの魔物も出たはずだが? 特に凍て地のアイスナイトなどAランク指定はされているものの、実質SSランクほどの呪いを振りまいているのだぞ?」

「アイスナイトなら遭遇しましたが、なんとか逃げ切りました。道中のAランク魔物なら倒して進みましたよ」

「なんと、その年で!? ふむ、お嬢ちゃんからは悪い気配は全くしないが、一応身分を確認したい」

「はい、私は聖国のリィリアと言います」

「なんと! 聖女であったか。それなら問題なく入国を許そう。いやはや、聖女ならば納得がいく。そうかそうか…。私はセンという。案内をするからついて来てくれ」

「はい、ありがとうございます」


 彼、センさんは竜人の中でもかなりの実力者だそうで、実力試しに来る者を門前で払いのける役目も竜人の王から仰せつかっているそうだ

 相当王に信頼されているらしく、それを自慢げに語っていた


「どれ、なに用で来たか知らないが王に会うのだろう? 王は実力者が好きな方でな。お嬢ちゃんほどの実力者なら会いたいとおっしゃられるはずだ」

「そうなのですか?」

「ああ、ご自身も生粋のバトルジャンキーでな。年に数回格闘技の大会に行くほどだ。もちろん出場者としてな」

「それは、またすごい人ですね」

「うむ、私達の自慢の王だ」


 センさんが嬉しそうに語っている辺り、かなり愛された王なんだろう


「よしついたぞ。ここが王のおわす王室だ」

「王室? 直接部屋に通していいのですか?」

「いいも何も、王はこの部屋と食堂くらいにしか姿を現さないからな。格闘のこと以外は基本引きこもっているのだよ」

「そ、そうなのですか…」

「失礼します王よ、客人を連れてまいりました」

「え、ちょ、待ってセン君! 今裸!」

「え?」


 扉が開かれると、そこには竜人の美少女が裸で座っていた


「ちょっとセン君! 何して…。あれ? その子は?」

「あ、はい、聖国から来た聖女だそうで、巨龍の谷にいたAランクの魔物を倒してここまで来たそうです」


 巨龍の谷というのは翡翠の凍て地を抜けた先にある谷の名前だ

 遥かな昔に世界を荒らしまわった伝説の巨龍が討伐され、その死体が落ちた場所らしい

 その死体からは瘴気があふれ、今でもAランクの魔物を生み出し続けているのだそうだが、今でも瘴気を出していると言うのが恐ろしい

 幸いにも通り道には瘴気はなく、今でも通行は可能なのだが…


「まぁ! 貴方凄いじゃない! ちょっとこっちに来てくださる?」

「王よ、その前に服を」

「あ、そうね。てかセン君ずっと見てたの? エッチ」

「はぁ、いいから早く来てください」

「もう、最近からかっても反応してくれないね。昔はもっと可愛い反応を」

「いいから早く着なさい!」

「ちぇ、分かったわよ」


 この少女、竜人の王らしいのだが威厳が、何というか、ない

 服もダルダルの寝間着のようなものを着ているし、下着も付けていない

 本当に王なのか疑わしいが、少し力の流れを見て分かった

 まさしく王の風格にふさわしい力の流れを感じる

 恐らく聖国の聖女が数十人束になっても叶わないであろう


「私はこの国で王をやってるネフィラよ。で、聖女なのあなた?」

「正確には、ハイプリエステス見習いですが」

「まぁ! レニの弟子なのね!?」

「レニさんをご存知なのですか?」

「友達よ。何度かここにも来たことがあるの。すごく強いわよねあの子」

「ええ、尊敬できる方です」

「いい子よね~…。でもそっか、それならあなたも相当な実力がありそうね。どう? あとで一試合」

「すみません、今は少し急いでいまして」

「あそっか、用事があって来たんだもんね。で、その用事って?」

「黒い少女がこの国に来なかったでしょうか? 時期は半年ほど前です」


 それを聞いてネフィラ様は驚いた表情をする

 そして黒い少女について語ってくれた

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