咲き誇るは惡の華16
ウキウキと私の体を精密に調べようとするケスティル様
食事の後すぐに自室に通されて服を全てはぎ取られた
そこからまず魔力の流れを指を這わせられながら確認される
「ふ~む、魔力におかしなところはない、か。気力も普通、神力は異常なほど強いが、女神様が一緒なのだから当然か」
「え?」
「なんじゃ? 女神様はそこにおられるのであろう? 間違っておるか?」
「いえ、間違っていませんが…」
「わらわほどになればそのくらい見抜ける。恐らくエルフの王も気づいておったはずじゃぞ。まああやつは分かっておっても空気を呼んで何も言わんかったじゃろうがな」
「はい、確かに何も言っていませんでした…。あ、女神様が驚いてます」
「ハハ、なに、女神様に何かするわけなかろうて。それにおぬし、依代なのじゃろう? 危害を加えるなどとんでもない」
「安心しているようです」
「ふむ…。しかし何というか、お主、一体どういう力の流れを持っているんだ? 闇の力、いや、それよりももっと深い闇のような…。それに神の力? まったく、どれだけ訳の分からん力を持っているのだ。だが、それだけに調べがいがあるというもの、今夜はお主を寝かせぬぞ!」
「あの、お手柔らかにお願いします」
「分かっておるとも、分かっておるんだとも」
ニタァと不気味な笑みを浮かべて迫るケスティル様に、私は調べつくされた
そして翌日
「はぁ、結局お主の力が何なのか分からんかったわ。じゃが、そうか、秘神の力に混沌の力、のう。聞いたこともない力な上に、もう一つ、力と認識できない力、その腕に込められた何かがあるのじゃな。これは研究のし甲斐がありそうじゃ。少しだけその腕の表皮を採取させてくれ」
「はい、もう好きにしてください」
とにかく疲れていた私は表皮を採取されながらそのまま眠りについてしまった
そしてその夢の中、私の前に見知らぬ女性と男性が現れた
二人とも笑顔をこちらに向け、何事かを放しているようだが、何を言っているのか分からない
ただ、何かを伝えようとしていることと、その目がまるで子供を見ているかのような目なのは分かった
一体何者なのかは分からないが、私は彼らに妙な懐かしさを覚えて、手を振ってみた
すると彼らは手を振り返し、また何事かをしゃべる
何故聞き取れないのか分からないが、私はこの二人といる安心感で心が満たされていくのを感じた
そして二人のうちの女性の方が私の黒く染まった右腕に優しく触れた
そのとたん右腕の黒が侵食していき
驚いた私はその女性を突き飛ばした
女性は悲しそうにこちらを見ると、困ったように微笑んで、また何事か言葉をつぶやいて男性と共に消えた
右腕を見ると、黒は肩口まで広がっていた
そこで目が覚める
慌てて右肩を見るとやはり黒はそこまで広がっていて、体の調子が良くなっていた
どういうわけなのだろうか
自分で考えてもわからず、女神様も分からないとおっしゃっているので、ケスティル様に聞いてみることにした
「ふむ、夢の中に、か。いやすまん、わらわも全く見当がつかんし、そもそも女神様が分からぬことがわらわ程度に分かるはずもあるまいて。なんにせよ、その右で全体が侵食されているのは気になるところだな…。おっとそうだった。忘れるところだった。これを見てくれ」
ケスティル様の手には何か薄っぺらい紙片のようなものが置かれている
それを手に取って見てみると、人間の皮らしきものだと分かった
「それはお主から採取した表皮だ。ほれ、黒いものが消えて元の皮膚に戻っておるだろう?」
「確かに…。でも採取した場所は元の腕がすでにないのですよ?」
「ふむ、恐らくこの黒いものがお主の腕を再生させたのではないか? はぁ、余計に分からなくなったな。お主にとってその黒いものは悪いものではない、とは思うんだが…。もう少し調べてみたいんだが、どうだろう?」
「そうですね、私としても気になるところではあるのですが、これ以上蟲人族を待たせるわけにもいかないので、帰りにお寄りしてもいいでしょうか?」
「うむ、それで構わん。わらわもこの表皮をもう少し調べてみる」
「よろしくお願いします」
ケスティル様に表皮をさらに詳しく調べてもらうことにして、私は蟲人族、インセクトイドの国へ向かうことにした
彼らの国はゼブカブラと言って、甲蟲人の王女が治めているらしい
どのような姿なのかは分からない
聖王様が入国した時代からかなり経っているので恐らく女王も変わっているだろうとのことだ
ダークエルフの国から少し森を進んだ辺りにあるのですぐ到着するだろう