咲き誇るは惡の華11
翌日の早朝、宿場村を後にして再びベルタル王国を目指して森の中を進み始めた
空気が濃くなってきて気持ちがいい。森林浴も楽しめそうだ
レニさんも伸びをしながら歩いている
この森はウッドエルフたちが管理しているのでかなり手入れが行き届いているようだ
木々は自由に伸び、太い幹を携えている
鳥や可愛らしい獣が時折顔を覗かせて、すり寄ってくるものまでいる
恐らくだがウッドエルフで人になれているのだろう
私はもっていたあまり味のしない動物が食べても大丈夫なビスケットを与える
保存食として持っていたが、こうやって動物に与えることもできるのだ
もちろんそれを持っていたのは私の保存食以外に大好きな小動物に与えるためでもある
レニさんも一緒になって動物たちにビスケットをやっていると、後ろで気配がした
振り向くとそこにはエルフの男性と女性が…
「あの、レニ様? 何をしているのですか?」
「あら、フェイにコルティではないですか、お久しぶりですね」
「相変わらずですねレニ様は…。おや、そちらのお子様はもしかして」
「ええ、わたくしの娘です」
「違います!」
「え?え? どちらなのですか?」
「娘と言うのは冗談です。この子はわたくしの弟子、のようなものですかね? この子はリィリア、ハイプリエステス見習いです」
「どうも、リィリアと申します」
「まぁ、小さいのにしっかりしているのね? 私はコルティ、こっちは弟のフェイよ」
「こんにちは、君は何歳なんだい?」
「12歳です」
「え!? その年でハイプリエステス見習いなの!? 凄いね君」
「ほらフェイ、お二人を国へ案内するのよ」
「分かったよ姉さん」
コルティさんとフェイさんについて道を進んで、時折また動物と触れ合いようやくルベタル王国に着いた
ついたとは言っても相変わらず森の中なのだが、奥にはエルフの住処と思われるツリーハウスが見えた
やはり自然と同化しているので非常に見ていて心が洗われる景色だ
つまり美しい情景というわけで、エルフたちの自然に対する思いやりが見て取れる
その後王の元へ案内してもらった
王は世界樹の麓に住んでおり、とても立派とは言い難い質素な家に住んでいた
世界樹の管理も王がしているのでそこを離れることができないらしい
「ふむ、なるほど」
王は非常に美しい男性で、優しい笑顔がチャームポイントだ
名前はクレハルドさんというらしい
彼にこれまでのいきさつを話すと
「分かった。僕らも協力するよ。バルガーの王とはボードゲーム友達でね。その娘の行方は僕もかなり気にかけてたんだ。でも君たちが見つけてくれたんだってね。僕からも感謝するよ」
「いえ、たまたまだったのです」
「そうだ。これをあげるよ」
「これは何ですか?」
クレハルド王は私とレニさんにうっすらと光る液体の入った小瓶を渡した
「僕からもお礼だよ。それは魔力を高めてくれる秘薬でね。飲めば数時間普段の魔力保有量が三倍になって、魔法の質も少し高めてくれる。きっと役に立つと思うよ」
「そんな、こんな高価なもの戴けません!」
「いいからいいから」
「リィリア、もらっておきましょう。私達は人々を守るため強くあらなければなりません。この秘薬はその役に立つはずです」
「・・・はい」
そうか、そうだな。私達は常に強く、人々を守らなければならないのだ
そのためにはこういったものも必要だ
「ありがたく、頂戴いたします」
「うんうん」
ニコリと微笑むクレハルド王
私の目から見ても見惚れるほどの美しさだ
レニさんも顔をほんのり赤く染めて王を見つめている
うっとりしていないのは故郷に愛する人がいるからだろうな
「それじゃあ僕らの方からも調査を出して…。そうだな、君たちにも二人ほどつけよう。フェイとコルティなら適任じゃないかな?」
「ええ、二人ならわたくしもよく知っておりますし」
「よしじゃあ決まりだ」
あっという間にクレハルド王は調査隊を決めてすぐに調査を始めて下さった
良王と言うのは決断が早いものなのだろうな
「お、また一緒だねリィリアちゃん」
「あの、よろしくお願いします」
「まぁ本当になんてかわいいのかしら。ねぇリィリアちゃん、私の作った服を着てくれないかしら?」
「え?」
「ほらあっち行きましょうね」
「はぁ、始まったよ。姉さん妹が欲しかったんだよね。僕も昔から姉さんの自作の服を着せられてたよ。その全部が女の子の服だったけど」
「え、ちょ、待ってください。調査が、ああああああ」
「連れてかれちゃった」
その後私は様々な女の子らしい服を着せられさんざんコルティさんに遊ばれ、もとい着せ替え人形にされた
ヒラヒラがたくさんついていて可愛いのだが、戦闘には向かないな
服のいくつかをいただき、たまにこの国に来た時には新作を着せてもらうことになった
ようやくコルティさんは満足し、ホクホク顔なのだが
私はヒラヒラ多めの服を着せられていた
動きやすさは重視されているので戦闘もこなせる上に、魔法が付与してあるので絶対に燃えたり汚れが付いたりしないらしい
これはもはや高級な魔道具屋に並ぶような代物ではないか…