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咲き誇るは惡の華10

 実は彼自身もその時の記憶がはっきりしておらず、人がいたという記憶もつい最近蘇ったものらしい

 人影は小柄で、磁気嵐の中から飛び去って行ったらしい

 その飛び去った方向と言うのがルベタル王国というエルフの住む国の方向だと言う

 エルフは自然信仰が主なので女神信仰である聖国とは相いれないが、一応交流はある

 争いが嫌いな聖国とエルフだからこそ宗教間抗争がないのだろう

 しかしながらその話も二年も前の話だ。ルベタルに行ってもその人影がいる可能性は限りなくゼロに近いのではないか?

 まあ目撃者がいないとも限らないため、私達はエルフ族の国ルベタル王国へ向かうことになった

 ここでエルフの説明をしておくと、これから向かうのは通常エルフ族と呼ばれる長耳種で、森エルフやウッドエルフとも呼ばれるその名の通り森にすむ種族だ

 比較的おとなしく、森の恵みに感謝し、自然と共存し、精霊と心を通わせて精霊魔法を使いこなす種族だ

 この森エルフ以外にも泉エルフ、ルーンエルフ、エンシェントエルフやハイエルフ、ダークエルフなどの種類がいる

 ダークエルフは闇のエルフとも思われがちだが、話してみると案外気さくで交流もある

 現に聖国にも数百名ほど住んでいるので見慣れている

 

「ウッドエルフに合うのは初めて?」

「はい。レニさんは?」

「私は何度か布教活動できてるんだけど、ティライミス様よりも精霊様を敬う傾向にある種族かしら? でも自然を大切にする教えとしては同じところがあるからもめることはないはずよ。それに、美男が多いのよぉとんでもなく!」

「は、はぁ…」

「あら、リィリアちゃんはまだ興味はないのかしら?」

「いえそう言うわけでは」


 そうか、考えてみれば私ももう異性が気になってもいい歳ごろというわけか

 だが男と恋愛と言うのも、うーむ、しかし体がそうなのだからして…

 考えれば考えるほどドツボにハマるとはこのことなのかもしれない

 ショートしつつある頭を切り替えて私はレニさんの後について歩いた

 ひとまず王と王妃に挨拶し、調査のためルベタル王国へ向かう旨を伝えた


「分かりました。私達もその調査に協力いたします。書状を書くので少しお待ちください」


 バルガーとルベタル王国は同盟国だ。書状を書いてくれるなら話もスムーズに進むだろう

 少し待っていると王はスラスラと書状を書いて渡してくれた

 丁寧でありながら味のある字で読みやすい


「ありがとうございます。では行ってまいります」

「よろしくお願いします」


 道はレニさんがよく知っている。私はその後ろをついて歩く

 まずはバルガーから西にある森の方へ歩く

 森までは街道があり、馬車もあるのでスムーズに進めるだろう

 そのまま森の切り開かれた道を進んでから奥へ奥へと進むと巨大な樹が見えて来るらしい

 それこそが世界樹と呼ばれる樹で、精霊のよりどころだと言う

 世界樹の上には精霊達の国があり、精霊の王が鎮座しているという

 一度会ってみたい気もするが、今はそれどころではない。また時間のある時(あればいいのだがここの所忙しいからな)謁見願おう

 

 二人で馬車に乗り、揺られながら数時間後、森前の馬車停留所に着いた

 ここはちょっとした村のようになっていて、宿屋もあるようだ

 今日はもう日も暮れ始めているためここで一泊し、翌日にルベタル入りすることにした


「リィリア、お風呂もあるみたいよ。一緒に入りましょうか?」

「い、いえ、一人で入れますから」


 母親と離れていることに気を使ってくれているのか事あるごとに私を気遣ってくれている

 今までレニさんという女性をよく知らなかったが、恐ろしく優しく母性の強い人だと言うことが分かった

 とにかく子供が好きで、孤児院も経営しているらしく、そこでは子供達が自分の好きなことに順次して将来職に着けるようサポートも充実しているらしい

 そこではレニさんは皆の母親というわけだ

 ちなみに故郷は聖都ではなく聖都から少し離れた小さな村だ

 そこに幼馴染の彼氏がいるらしく、私が彼女の後を継いだ暁にはその方と結婚し、故郷の孤児院でのんびり暮らすそうだ

 優しくおおらかな彼女にはぴったりの余生だと思う

 

「お風呂先にいただきました」

「いただきました? 飲んだの!?」

「あ、いえ、先に浸からせてもらったということで」

「アハハ、リィリアちゃんたまにじじ臭いわね」

「う…」


 気にしているのだがな…。まだ抜けきっていないと言うことか。一応この体で12年も過ごしているのだが 

 いやまあ前世は60年ほどあの体だったからそう簡単に抜ける訳もないのか

 

 風呂のあとは部屋を一部屋取り、私とレニさんは同じベットで寝ることになった

 今更女性に欲情することもない。彼女は私を自分の子供の用に抱き、優しく撫でる

 そのまま私は眠ってしまった

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