咲き誇るは惡の華8
肉塊と化したであろう虚無の少女、しかしながらその肉塊は未だにグネグネと動き続けている
徹底的に破壊しなければまた復活すると思い跡形が無くなるまで私は攻撃をやめなかった
気が付いた時にはそこにチリしか残っておらず、すでにグネグネと動く肉塊は消えていた
ハァハァと肩で息をし、私は急いですでに死んでしまっている三人に駆け寄る
セッディちゃんの首は180度あらぬ方向を向き、王と王妃は胸に穴をあけられているが、“蘇り”の秘神の話によればまだ間に合うそうだ
手をかざし、蘇りの力を使うと、セッディちゃんの首はゴキュリという音と共に元の位置に戻った
そして胸に穴の開いた王と王妃の傷口もまるで逆再生のように戻って行く
顔に血色が戻り、三人供自律的な呼吸を始めた
「よかった、戻ったようです」
「だから言ったでしょう? 私達秘神の力は強力すぎるの。本来は使ってはいけない力。でもその子達はこの世界の班中外から来た者にやられた。超法規的措置ってやつよ」
「そんな緩い感じでいいのですか?」
「仕方ないじゃない。そうしなきゃあなたまた虚無に飲み込まれてたでしょう?」
「それは…」
確かにあの時また黒い感情に塗りつぶされるような感覚に襲われていた
あのままでは私はまた飲み込まれていたに違いない
そうなるとやはり蘇りの秘神ミズウリさんに感謝してもしきれない
彼らは本当に私のためにと動いてくれている
今の私は彼らを完全に信頼していた
「リィリア!」
セラルさんを安全な場所に移動させ、ライラを置いて戻って来たナリヤ
既に事が片付いていることに安堵したようだ
「あいつは?」
「恐らくですが、倒せたんだと思います」
「ホントに!? あんな規格外の化け物を!?」
「恐らく、恐らくなんですよナリヤ。私にはまだ完全にやつを倒せたという自信がないんです」
そう、確かに虚無の体は滅んだ
しかしそんなに簡単にあのような化け物が滅びることがあるのだろうか?
最後にやつはどんな顔をしていた?
笑っていた
確かに口が裂けんばかりに笑っていたのだ
まるで目的は果たしたと言わんばかりのとびきりの笑顔で
「そう…。リィリアが自信がないなんて、やっぱり」
「分かりません。それに虚無は今の少女だけではありません。それこそどれだけの虚無がいるのか、私には知るすべがないのです」
「で、でも、倒せたんだから、リィリアなら大丈夫よね? ね?」
「・・・」
私は全力を出し切った
それで倒しきれなかったと実感しているんだ
あれだけの力を持っている虚無だ。ほぼ確実に、生きている
「今は、多分大丈夫だと思います。あの虚無も恐らくこのまま引き下がることはないでしょう。しかし次に襲来する時までは必ず、誰も傷つけさせないと約束します」
「それでこそだよ! 私も一緒に頑張るから」
「はい!」
今回は私でも自分で驚くほどに虚無の力を使いこなせていた気がする
憤怒の力は私に馴染んだのだろうか? 今回は体が黒く染まることもなく、すでに染まっている手も黒がおがることはなかったし
怒りをコントロールすることでこの力そのものをコントロールする?と言うのが正しい使い方なのだろうか?
「その力は僕達でもよく分からない。あいつが教えてくれるわけもないしなぁ。それに、憤怒、七つの大罪の力にも全く同じ力があるんだけど、それとは違うようだし…。仕方ない、考えても分からないんだからなるようになるしかないんじゃないかな」
「そんな適当な…」
「まぁ危なくなったらまた僕たちが助けるから、それに君の思った通り虚無はほぼ死ぬことはないと言っていい。多分あの少女も、肉体を捨てて虚無の世界へ帰っただけだろう。本来の虚無は神々と同じような精神生命体だからね」
精神生命体なら精霊と同じ? いやそれより格上なのか
「精霊よりもはるかに格は上だね。神々は精霊より上、その上に今はどこにいるのかもわからない大神、さらに世界を作り出した者たち、虚無はそれらと同格と言っていいかな。まだ世界もないころに淀んでいたもの、と聞いてはいたのだけど、全く、あいつが何か僕らに情報を渡してればもうちょっと何とかなりそうなんだが」
「そのあいつと言うのは、他の虚無と仲違いした虚無のことですか?」
「そうだね。あいつらは目的のために手段は択ばない。君の体に負担がかかろうとも奴らは気にしない。それは君もわかるだろう?」
「はい」
「だが味方になっているのは確かだ。まぁ目的が合致しているうちの味方と考えるべきなんだろうけど、それでもあの虚無たちは、好んで人を襲うような者たちじゃない。きっと、分かり合えると思うんだ」
私の中で話をする時の秘神エススはそう言った
この秘神は、相当に優しい性格をしているのだろう
それに、虚無から離れたこちらの味方である虚無
一度話してみたいものだ