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咲き誇るは惡の華7

 王はお礼金として相当な額の金貨を渡そうとしてきたがすべて断った

 その金は国をよりよく導くために使うべきであると

 私は、親子の再開を見れただけで十分だ

 前世では金こそが人の全てだと思っていた

 金があれば何でもできると

 しかしそれも数年だけだった

 気持ちはどんどん沈み、虚しくなっていく

 この世界に転生してからというもの、全くと言っていいほど金に執着が無くなった

 稼いだものも生活に必要最低限な分以外は孤児院などに寄付することにしている

 

「でしたらせめてこちらだけでもお持ちください」

「これは?」

「名産のフェレセカという果物です。甘酸っぱくさっぱりとした味わいで、鼻を吹き抜けるような爽やかな香りがしますよ」

「ありがとうございます。ではお土産としていただきますね」


 ありがたくその果物をいただき、セラルさんやセッディちゃんに別れを告げる

 セッディちゃんは別れを惜しんでくれているのか、悲しそうな顔

 服の裾を引っ張る


「もう帰るのか? もう少しここにいても良いのだぞ? そうだ! 我の専属メイドになると言うのはどうだ?」

「せっかくですがセッディ様、私にはやることがあるので…。申し訳ありません」

「そ、そう、か、だがお前と我はともだちなのだ! いつでも我を訪ねて来い! 歓迎してやる!」

「はい、是非ともまたお邪魔させていただきます」


 セッディちゃんは笑顔になり、見送ってくれた

 すっかり記憶も戻り、王女らしく美しいドレスを着たセラルさんも深々と頭を下げてこちらを見送る

 私も頭を下げて、それから聖国へ戻ろうと一歩を踏み出したその時だった


「キャァ!」


 セラルさんの声がして慌てて振り向くと彼女をがっしりとつかんだ何者かがいる

 その顔をよく見ると、あの時、グランベルゲル共和国で遭遇した少女だった

 虚無の少女、名前は知らない


「僕をコケにしたクソガキ見っけ! こいつ、殺されたくなかったらおとなしくしなよ」

「お前は、虚無の…」

「この前はよくもやってくれちゃったね。あの時から僕は頭からお前の顔が離れない! 覚悟しろよ、壮絶な拷問の上で殺してやる!」

「く、セラルさんが」

「お姉さまを放せ!」


 無謀にもセッディちゃんは虚無に近づき、その背中につかみかかる


「邪魔だよガキ!」

「あきゅっ」


 虚無はセッディちゃんの首を掴むと、そのままへし折ってこちらに投げた


「セッディ!」


 王と王妃、が叫び走り出す

 その背中を虚無は何かを手から放って撃ち抜く


「邪魔すんなよ、たかが人族のくせに」


 倒れ地に伏せる王と王妃の体から血が流れ出る


「な、なんということを…」


 私はすぐにセッディちゃんを見たが、首は完全に折れ、すでにこと切れている

 王と王妃も同じように、もはや息をしていなかった

 何故だ…。どうしてこんなことになった?

 私は自分の不甲斐なさに嫌気がさす

 自分を慕ってくれていたセッディちゃんを成すすべなく殺されて、セラルさんまでも人質として取られている

 私は頭をまた黒い感情が埋め尽くそうとしているのを感じた


「待ってリィリア! まだ大丈夫よその子達!」


 聞いたことの無い声。恐らく秘神の誰かだろう


「私の力を使いなさいな。私はミズウリ、“蘇り”の力を持つ秘神」

「蘇り? 死者をよみがえらせれるのですか?」

「死してすぐならね。そんなことよりまず前の敵をどうするか考えなさい。私の力は少し時間がかかるの」

「分かりました。全力で、奴を倒します」


 とはいったものの、セラルさんを人質に取られている以上身動きが取れない


「そのまま動くなよ?」


 近づいてくる虚無

 奴の目は狂気に満ち、ゲタゲタ笑う

 セラルさんは気を失い、その首根っこを掴んで引きずるように近づいてきた


「まずはその手足をもぎり取ってやる。そのあと人形の手足に挿げ替えて、たくさん遊ばせてもらおうかな。そのあとは、クヒヒヒ、獣にでも凌辱させよう。女にとってこの上ない屈辱を味合わせつくしてから僕好みの拷問をして、苦しませて苦しませて殺してやる」


 妄想が暴走気味の虚無

 今がチャンスとばかりに私は神速を超える速さで動き、セラルさんを奪い返した

 可哀そうに、セラルさんはショックで失禁しているようだ

 袋から取り出した布をかけ、ナリヤに任せて私は虚無をねめつける


「お前ぇ! お前お前お前お前お前お前お前お前ぇええええ!! もういい! 殺す! 殺してから死体を辱めてやる!」

「叫んでいるところ悪いですが、あなたは私を怒らせました」

「はん! だからどうした! たかだか人間のガキに何ができるっての!」

「あなたを、倒せます」

「やってみろ!」


 大量の死体で出来た人形を繰り出すと、虚無はその人形で私を攻撃してきた

 しかし所詮は人形。簡単にそれを壊すと虚無との間合いを詰めた

 驚愕する虚無の胸元に手を置く


「虚無は虚無の力でないと討ち果たせないと聞きました。それにあなた、まだ力が完全には戻っていないでしょう?」

「な!?」

「憤怒!」


 私は黒い力を一瞬だけ引き出して手に込め、虚無の胸を撃ち抜いた


「あぐっ。嘘だ、僕がこんなにあっさり」

「まだです!」


 さらに連続して虚無に力を撃ち続けた

 暴走する可能性もあったが、それでも私はその怒りをぶつけるために討ち続け、虚無の形が無くなるまでその攻撃をやめなかった

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