咲き誇るは惡の華6
終わった、やっとパレードが終わった
まるで魔王を倒した(おっとすまないカレアナ)勇者のような扱いだったのが何とも…
あ、ナリヤはまさしく勇者であるのだがな
「お前たちのおかげでお姉さまは国に帰れた。感謝するのだ」
改めてセッディちゃんにお礼を言われた
この後は王と王妃に謁見し、セラルさんを合わせる手はずになっている
しばらく休むよう言われたので今は用意された部屋で紅茶にクッキーをいただきながらその時を待った
この紅茶とクッキー、かなり美味しい。香り高い茶葉に甘さ控えめのクッキー
次から次へと頬張っているとメイドが呼びに来てくれた
ここのメイド、皆猫耳や犬耳の美少女ばかりなのだが、なぜみんなこのように際どい衣装ばかりなのだろうか? 目のやり場に困る
「む、リィリア、やらしい目で見るでないぞ。この国の獣人たちは皆軽装を好むのだ。それを証拠にほれ、お姉さまも軽装であろう?」
「た、確かに動きやすい方が私も好きだわ」
「な? 獣人は動きやすさ重視でな、水着で戦う者もおるくらいだ。まぁさすがに水着だと危ないから魔法を付与してちょっとやそっとじゃ傷つかないようにはなってるがな」
なるほど、そう言う理由だったのか
とにかくメイドに案内されて王と王妃の待つ謁見の間とやらに行くことにした
メイドの後をセッディちゃん、セラルさん、私とナリヤ、ライラの順番でついて行く
セラルさんはウキウキした顔で向かっている。記憶が無くてもここが自分のいた場所だと体が覚えているのだろうか? メイドよりも先に道を曲がったりもしている
「やはり姫様、姫様で間違いないのですね」
「さあ、私記憶が無いから本当にそうなのか、分からなくて」
「私にはわかります。長年姫様のお世話をしていたのですから…。ずっと心配しておりました」
メイドは目に涙を浮かべている
どうやら彼女はセラルさんのお付きのメイドだったようだ
それから謁見の間に着くと巨大な門が開かれて広間が見えた
その奥に王と王妃と見られる二人が椅子に座っている
二人はセラルさんの姿を見たとたん飛び上がってこちらに走って来た
そしてセラルさんを抱き上げると強く抱きしめた
そのとたん、セラルさんの様子がおかしくなる
頭を抱えてうずくまり、気を失った
「セラル!」
「セラルちゃん!」
王と王妃は泣きながら名前を呼ぶ
すぐに彼女の様子を見たが、ただ気を失っているだけのようだ
とりあえずセラルさんお付きのメイドが彼女を抱え、セラルさんの自室のベッドへ寝かせる
「セラルは、セラルはどうなったのでしょう聖女様」
「はっきりしたことは分かりませんが、恐らく記憶を取り戻し始めているのかもしれません。その記憶の扉が開き、一気に蘇ったことで脳に負荷がかかり気を失ったのでしょう」
「そ、それじゃあ」
「ええ、目を覚ました時記憶が戻っている可能性は高いです」
お二人はほっと安心されたようで息を吐いている
ひとまずはセラルさんを安静に眠らせておいて、私達は王と話をすることになった
ちなみにセッディちゃんは「お姉さまは我が見ておくぞ」とのことで部屋に残った
「そうでしたか、二年もの間探し続けたのですが、まさか聖国の村にいたとは…。しかし、見つかってよかったですよ」
このバルガーの王であるリオス・ヴァイゼル王は非常に温厚な方のようで、笑顔が柔和だ
その王の話によると、セラルさんがいなくなったのは二年と一月前のことで、大きな地震が起きたのでその被害状況を見に兵たちと向かったところ、突如発生した嵐のような物に巻き込まれ、兵を守ろうとしたセラル姫のみがその嵐に吸い込まれるようにして消えたのだそうだ
その後王は人手を出し、冒険者や聖女にも頼ったが一向に見つからなかったらしい
そしてつい数日前、聖国で見つかったという情報を得て大喜びしたようだ
「本当に感謝してもしきれません。しかしその嵐が一体何だったのか調査しても分からなかったのです。魔力の気配も神力の気配もない、自然現象ならば不可解な点が多すぎる。我々だけではよく分からないのです」
「そうですか、そちらに関しては私も気になるところ。必ず聖国で調査いたします」
「ありがとうございます聖女様」
王と話をしていると扉が開かれて先ほどのメイドが慌てて入って来た
「リオス王様! セラル様が、セラル様がお目覚めに!」
「そうか! すぐ行く!」
王と王妃は脱兎のごとく駆けだしてセラルさんのいる部屋に飛び込んだ
するとセラルさんは既に起きあがっていて、セッディを抱きしめていた
「お父様、お母様」
「セラル、記憶が」
「はい、なんだか長い夢を見ていたようで…。あの村の方には大変お世話になりました」
どうやら記憶を失っていた間の記憶も残っているようだな
記憶喪失から戻った時は二つのパターンがあると言う
一つはその記憶を失っている間の出来事をすべて忘れる
もう一つは覚えているパターン
セラルさんは後者だったというわけだ
ともかく記憶が戻ったのだ。彼女は元通り姫としてこの国にいなければならない
まぁガネルン村にも時々来るそうなので村の人たちも喜ぶだろうな