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聖乙女生まれる12

 それから数年、様々な基礎を叩き込まれた私達は心身ともに強く成長し、中等部へと進んでいた。 ライラ、セリセリ、ナリヤは12歳、私は10歳。 中等部からは必ず四人一組で組まなければならないため当然いつもの四人で組んでいる。 成績はなかなかにいい方だろう、努力の結果私は何とか学年トップの座をキープしているが、ナリヤが二位で私に追いつく勢いだ。 魔法も中級から上級の初歩までを覚えている。 私が彼女に勝っているのは魔法と武術くらいだろう

 次にライラ、彼女は非常に回復魔法に優れており、その力は優秀な司祭たちに迫る勢いだ

 そしてセリセリなのだが、学問は苦手なようで、中の下ほどだが、持ち前の武闘センスと風魔法によって下手をするとナリヤと互角かもしれない…。 成績はともかく


 中等部からは魔物との戦闘訓練が度々行われるらしい。 以前とは違い12歳ともなれば冒険者として登録できる年齢だ。 この世界は16歳で成人らしいから大体が16歳で登録するのだが、戦闘力の高い者の中には生計を立てるために12歳ですでに登録している子もいるのだとか。 果たしてそんな子供がやっていけるのかとも思うが、聞いた話だとやはりほとんどの子が魔物にやられて死ぬ、あるいは盗賊によってひどい目に合っているようだ。 まぁ私に冒険者になると言う意思は皆無。 あるのは女神様への信仰を集めることへの思いだけだ


「なんと、そんなにもわたくしのことを…。 ママと呼んでもいいので」


 呼びません


「まぁ、照れちゃって、可愛いですわね」


 さて、そろそろ仲間の元へ行こうか。 今日は課外授業と称した魔物退治。 この国の周囲、お世辞にも治安がいいとは言えない。 魔物は年々増え、その被害は相当なものらしい。 それ故にたまに魔物を討伐しておかなければ街にまで攻め込んでくる可能性があるのだ


「そろったですか? 今回ははぐれゴブリンの討伐です」


 今日指揮してくれる先生は小人族のサリューイ・マトントという女性。 人形のような非常に可愛らしい見た目をしているがこれでも100歳を超え、成人していると言うから驚きだ


 ん? ゴブリン族とは百年ほど前に友好関係を築いたと教わったが、討伐とは穏やかではないな


「はい、疑問に思う人もいると思うですが、はぐれゴブリンたちはゴブリン族の国に属さない野盗のような亜人たちです。 放っておけば人間の女性を襲ってどんどん繁殖し、溢れかえった結果街一つが簡単に滅ぼされる。 なんてこともざらにあるですよ」


 ほほぉ、亜人ならば人間と繁殖もできるということか…。 だが愛のない子作りはいただけない。 私達も気を付けなければならないな。 このゴブリンたちは女性を攫い、男性を殺して物資を奪うというまさしく野盗。 当然討伐依頼も出ているような輩だ。 退治しても問題ないということである

 問題があるとすれば、人型の敵だということだろう。 人に近い敵を今の私達で倒せるか? それがこの授業の意味である


「危なくなったら先生が助けるですので、すぐに救難魔法を使うのです」


 救難魔法はその名の通り救難信号を打ち上げる生活魔法の一つだ。 かなり遠くまでのろしが届く上に、居場所までもわかる優れもの。 覚えておいて損はない魔法の一つだな


「では各自、気を付けて事にあたってくださいです」


 先生の号令と共に討伐が開始された。 それぞれ森の中へ入っていくチームを組んだ生徒たち。 それぞれがなかなかに強く、この周辺の魔物ならばEランクまで対処可能。 はぐれゴブリンもEランクで私達でも十分戦える


 森の中は薄暗く、魔物の声や不気味な鳥の鳴き声が聞こえてくる。 セリセリとライラはおびえているため私とナリヤにべったりと引っ付いて離れない


「うううう、怖いですよセリセリは…。 リィリアちゃん何でそんな平然としてられるんですかぁ~」


 怖くないからである。 この世界には幽霊、ゴーストなどがいるらしいが、どうやら聖魔法(回復魔法でもいい)で倒せるということだ。 倒せるなら怖くないではないか。 生前見た映画のような幽霊ならばどうしようもないがな


「あ! そこ何か動きましたよ!」


 ライラは恐る恐ると言った様子で今しがた揺れ動いた茂みを指さす。 だが飛び出してきたのはホーンラビットと言う魔獣だった。 縄張りを荒らさなければ害のない可愛らしい兎である。 ぬいぐるみにもなっているくらいの市民権は得ているようだ


「な、なんだぁ、うさちゃんかぁ」


 ぴょこぴょこと飛びながらホーンラビットは去っていった。 ほっとしたのもつかの間、再び茂みが揺れて醜悪な顔をしたゴブリンが分け出て来た。 そいつはこちらを見て下品な笑いを浮かべる。 こちらを得物として認識したようだ


「ひっ」


 私以外はその笑みに怖気付いたようだが私が落ちつかせると冷静に対処を始めた。 相手は一人、決して勝てない相手ではない。 それぞれが得意な武器を構えた

 私は近距離から遠距離までと幅広くこなせるため、刃のついた弓を持っている。 これはカリスと言って、両刃曲刀に弦を付けた特別製のもので、近距離から遠距離丸々をカバーできる。 また、魔法発動体としての役割も果たしてくれるのでかなり重宝している。 これは母からの10歳になった誕生日プレゼントとしてもらったもので、ランクはレア

 ライラは錫杖で、これには回復魔法の威力を底上げしてくれる魔法がかかっているいわばマジックアイテムだ。 ランクはアンコモンである

 ナリヤはアーマードソードという特殊剣。 これは魔力を流すことで体に鎧を付与する力を持つ。 ランクはレアだそうだ

 そしてセリセリはスプレットガンという魔砲銃だ。 風と水の弾を同時に撃ちだすもので、威力は岩を砕くほど。 ランクはアンコモンだ


「それでは、行きますよ!」


 私は素早く指示を伝えてそれぞれで行動を開始した

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