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咲き誇るは惡の華5

「おしっこ!」


 突如そう告げたセッディちゃんは顔が青ざめている

 股を抑え、必死の形相で、涙目になってこちらを見て来る


「え、えっと、乗る前に行ってこなかったのですか?」

「うう、忘れていたのだぁ。は、早く降ろすのだ」

「とは言われましても、すでに離陸していますし、このあたりだと降ろせる場所が」

「ひっぐ、そんなぁ…。お姉さまぁ」

「どうしましょう…。あ、そうだわセッディちゃん。ここに空の瓶が」

「それだけは王族としてできないのだ!」

「でもそうしないともっと大変なことになるわよ?」

「うぐぅ」


 どんどん顔色の悪くなってくるセッディちゃんをどうしたものかと考えていると


「そうだ! リィリア、口を開けるのだ!」

「はい?」

「飲め!」

「ちょ、ご自分で何をおっしゃっているのか分かっています?」

「分かっているのだ! その瓶にするくらいならお主に飲まれた方がましなのだ!」

「ちょ、やめ、ナリヤ助け、ひぃ!」


 すでにヒラヒラのついたスカートを捲し上げてこちらに迫ってくる彼女を必死でセラルさんが止めてくれている

 トイレに行きたい気持ちが強すぎてセッディちゃんもかなり混乱しているようだ

 そこでふと思いついた


「転移魔法!」


 私はセッディちゃんを抱えると転移魔法を使って一気に下の森に降りた

 ここなら木陰や茂みがたくさんあるので誰にも見られず用を足せるだろう


「でかしたぞリィリア! さすが我のともだち! すぐ済ませて来るゆえそこで待っておれ」

「あ、一人で大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫じゃ! お主我を子供だと思うておるな? 我とお主じゃ歳は変わらぬじゃろうが!」

「あ、そう言えば同い年ですね」

「そうじゃろう! 一人で出来…。あ、今ので少し」

「早く行ってください!」

「う、うむ!」


 急いで走り、茂みへと消えていく彼女を見送る

 一応周囲に結界を張って警戒も怠らないで置かねばな。何せこういった森は魔物が多い。いつ何時襲われるとも限らない

 しばらく待っていると、すっきりした顔でセッディちゃんが戻って来た


「大丈夫ですか? ちゃんと拭きましたか? 先ほど汚れた下着はちゃんと取り替えましたか?」

「わ、分かっておるわい! 母上かお主! ほれ着替えもここに…。ない…。空馬車の中じゃ」

「ああ、でしたらこちらを」


 私は空間収納からおろしたての綺麗な下着を一枚取り出すと渡した


「ほほぉ、お主なかなかに気が利くではないか。それにこのデザイン、気に入ったぞ!」

「そう言っていただき光栄です」


 私が渡したのはクマがプリントされた可愛らしい下着だ。私の趣味であるが何か?

 どうせ少女の体なのだから、可愛いものを身につけたいではないか


「よし、履けた。してどうやって戻るのじゃ?」

「場所は捕捉できているので、もう一度転移で飛びます」

「そ、そうか、お主すごいんじゃのう。転移魔法などごく一部の者しか使えぬと言うのに。我の国でも一人の宮廷魔術師しか使えぬぞ?」

「これは、たまたま覚えることができた、かつ素質があっただけですので、私自信がすごいのではないのです」

「何と謙虚なことよのう。まぁいい、お姉さまの元へ帰るぞ」

「はい」


 もう一度セッディちゃんを抱えると私は転移で空馬車内部へ戻った


「うわ、びっくりした。今のって転移魔法よね?」

「はい」

「ありがとうリィリアちゃん。セッディちゃんもほら、お礼を言わなきゃ」

「そ、そうだった。ありがとうなのだ!」


 うむ、満面の笑みを浮かべるセッディちゃんは太陽のように眩しく、そして可愛い

 彼女の危機も去ったことだし、一路バルガーへの道のりを悠々自適と楽しんだ


「あ、あれ! 龍ではないか!?」


 突如セッディちゃんが声をあげ、窓の方を指さした


「ヒッ! ほ、ほんとに龍じゃないあれ!」


 龍、それは竜とは違い温厚で、こちらが何もしなければ襲ってこないおとなしい生き物だ

 神獣と呼ばれる個体も多いらしく、有名なのは神龍だろう

 この世界にもいるらしいので会ってみたいものだな

 そして今回見れたのは一般的な緑色の鱗を持った個体で、うねうねと上下しながら大空を飛んでいる

 日光を受けるその様はなんとも美しい姿で、皆見惚れるほどだった

 まさか龍が見れるなど幸先がいい旅なのかもしれないな

 ただあまり近づくと危険なので、段々と距離が離れて行く

 恐らく御者の男性があのグリフィンちゃんに離れるよう言ってくれたのだろう

 遠ざかっていく龍にセッディちゃんは一所懸命手を振っていた

 向こうが気づいたかは分からないが、彼女も満足そうで何よりだ


 龍を見てから数時間後、獣人族の国バルがー、その王都であるガルデニアに到着した

 そこは自然との調和の取れた美しい街で、中心に王の住まう城がそびえ立っている

 空馬車から降りるとすぐに迎えの馬車がやって来て、私達を歓迎しながら城まで送ってくれた

 なにせ記憶を失っているとはい言え第一王女が見つかったのだ

 国を挙げてのパレードも致し方が無いと言える…。非常に恥ずかしいがな

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