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咲き誇るは惡の華3

 村に帰ると猛烈な勢いで何かが私に突撃し、みぞおちに衝撃が走って吹き飛ばされた


「ぐふぅ」

「おい! お姉さまは無事なのか!? どうなんだおい!」

「セッディ様、そちらの方、では? グフゥ」

「お姉さま!」


 セッディ王女が私の示す方を向くと、急に大泣きし始めた


「うわーーーん、お姉さまぁあああん、会いたかったのだぁああ!」


 王女はセラルさんに抱き着きその胸に顔をうずめる


「あの、えっと、あなたは誰なのかしら?」

「え? お姉さま? 我だぞ? セッディだぞ?」

「セッディ…? ごめんなさい、昔のことが何も思い出せないの」

「そ、そんな…。お姉さまが、我を忘れるなど…、嘘なのだ!」


 セッディ王女はまた大泣きし始め、セラルさんから離れようとしない

 それは当然だ。二年もの間行方不明になっていた姉が見つかったのだからな

 セラルさんは泣き叫ぶセッディ王女を見てなんとなく察したのか、彼女の頭を撫でる

 すると王女は泣き止み、スヤスヤと寝息を立て始めた

 ここまでの道のり、すっかり疲れてしまっていたのだろう。夜もあまり寝れていなかったようだしな

 

「なんだか、昔もこうしてこの子の頭を撫でていた気がします。何というか、懐かしい感じが…。でも思い出せない」


 するとセラルさんの目から一筋の涙がこぼれ、あふれ出してくる


「あ、あれ? 私なんで泣いて…」


 やはり忘れても大切な記憶は体に染みついているのかもしれない

 もはや彼女が獣人族の第一王女、セラル王女で間違いないだろう。顔立ちもそっくりだしな

 しばらく二人だけにしておき、私達は部屋から出た


 それから二日が経った

 姉妹で多くの話をしたのだろう、記憶がなくともそこは姉妹ゆえに、もう打ち解けて毎日同じベッドで寝ているようだ

 セッディ王女は記憶のない姉を献身的に支えている 

 その姿はまさしく姉妹そのもので微笑ましい

 だが問題はこの先どうするかである

 記憶のない彼女を王国へ連れ帰るのか、それともこのままこの村で村長を続け、余生を過ごすのか

 やはり第一王女ゆえに国には帰らなくてはならなくなるだろう

 国王も必死になって探しているらしいしな


「分かりました。でも私は過去の記憶が一切ないのです。それで王女が務まるとは思えないのです。どうすれば…。そうだわ! リィリアちゃん、あなた、一緒について来てくれないかしら? 私じゃうまく話せないと思うの。セッディちゃんもまだ小さいから説明できないと思うし」

「だ、大丈夫だぞ! 我だってそのくらい出来るぞ! えっと、お姉さまが我のことを分かんなくなってるから、それから、えっと、うだぁああああ!! まどろっこしいぞ!」

「ほらね、だから、ね、お願い」

「はぁ、それはいいですが、村長としての仕事はどうするのですか?」

「それなら大丈夫。村長補佐のティッカがいるから」

「ぼ、僕ですか!?」


 驚いたのはセラルさんの横にいたティッカと呼ばれた少年

 少年とは言ってもこの世界ではもう成人しているのだが、彼は非常におとなしそうな見た目だ

 皆を率いる村長としては少し頼りないように見える


「大丈夫よティッカ、あなたは魔法適正もあるみたいだし、何よりいつも皆を守ろうと努力してるじゃない」

「で、でも僕なんか」

「大丈夫ですよティッカさん。もし村を守るのが不安なら教会が聖女と冒険者を派遣しますので」

「本当ですか!?」

「ええ、それなら安心なのでは?」

「は、はい! なんだかやれそうな気がしてきました!」

「フフ、ティッカはね、これでも剣の腕はこの周辺の村々で一番なの。魔物だって何匹も倒してるんだから」


 ほぉ、頼りなく見えていたけれど、魔物を倒せるだけの実力はあると言うことか

 それなら聖女と冒険者がいれば問題なさそうだ


 ということで私達はそのままバルガー王国へ向かうことになった

 ここは代々ヴァイゼル王家が治める獣人たちの国で、数百年前までは人間族との争いが耐えなかった国なのだが、その和解を測ったのが当時の聖王様だったらしい

 そこから獣人と人間の国交が開かれ、獣人との恋愛も自由にできるようになったというわけだ

 ちなみに三代前の獣人国の姫は人間族の母と獣人族の父を持つハーフだったという

 そのバルガー王国なのだが、まず馬車で隣国ビルカルトに出て、そこから長距離馬車で一週間かけてドワーフ族の国エンダール王国を横断した先にある

 少し長旅にはなるが、これもセラルさんのためだ

 ひとまず村から少し離れた街コーリーナで準備を整えてから出立することにした

 

 二時間後、コーリーナに着いた私達は食料などを買い込んで準備を済ませる

 お金はセッディ王女が出してくれた

「お姉さまと帰るのだ。金に糸目はつけぬ」

 とのこと

 私達は馬車に揺られ、どうちゅう襲ってきた魔物や盗賊を退治しつつ隣国ビルカルトを目指した

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