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咲き誇るは惡の華2

 早速その村へとやって来たのはいいが、肝心の村長、セラルさんがいなかった

 村民の話によると、近くに黒く染まった魔物が現れたということで、村の若い男たちと共に調査に向かったのだそうだ

 まだその黒い魔物とやらに何かされたわけではないのだが、一度魔物に滅ぼされかけている村だ。心配なのだろう

 

「お姉さまが魔物の調査を!? 駄目なのだ! 我らもすぐ行くのだ!」

「は、はい」

「あの、聖女様、そちらの方は? 高貴な身分の方のように感じるのですが」


 村人に尋ねられたので説明しておく

 すると村人たちは皆平伏していた


「ふむ、苦しゅうないぞ。しかし村長、お姉さまはまたなぜこのような辺鄙(へんぴ)な、おっとすまぬ、馬鹿にしているわけではないのだ。お姉さまのことが、心配で」


 私はセッディ王女の肩に手を置いて安心させる

 とにかくセッディ王女を危ない目に合わせるわけにはいかないので、この村にいてもらうことにして…。かなり説得が大変だったが…

 ライラとナリヤを連れ、彼女が向かったと思われる森の方へ行くことにした


「あ、この道足跡がありますよ」


 ライラが何人かの人の足跡を見つけ、それを辿って道を進む

 足跡は森の奥へと続いており、段々と薄暗くなっていく

 途中途中で魔物が現れるが、大した強さではないので問題はないが、少し数が多い気がする 

 セラルさんは大丈夫なのだろうか?

 それからさらに道を進むと誰かが倒れているのが見えた

 急いで助け起こすと、その男性は目を開いてこちらを見る


「よ、よかった、助けが来たのですね。セラル村長を、どうか、お助け下さい」


 彼はそう言うと再び気を失ってしまった

 ひとまずライラに回復を任せて周辺を探ってみると、魔物の死体が転がっていた

 黒い魔物とやらではないようだが、何か不思議な魔力を感じる

 それに、この魔物はパイルエンコという猿型の魔物、か細い体に人を襲わない温厚な魔物として知られているはずだ

 それが、大きな腕を持ち、凶悪な顔つきになっているのだ

 その周辺には人間のものと思われる血も飛び散っている


「これは急いだほうがよさそうですね」

「うん、ライラ、その人をお願いできる?」

「はい、村まで連れて帰ります」


 村人をライラに任せて私達は再び足跡をたどって道を進んだ

 エンコの死体があった場所からしばらく進むと誰かの怒号が聞こえてきた

 この声は、セラルさんだ


「ティッカ! 危ない!」

「うおっ! 村長、ありがとうございます!」


 どうやら何かと戦っているようだ

 すぐに駆け付けると、確かに見たことの無い黒い魔物と戦っていた

 その黒い魔物は背中にグネグネと波打つ触手を持った猿のような魔物で、顔は狼のように大きく裂けた口を持っている

 腕は筋肉質でゴリラのようだ

 セラルさんは何とかこの魔物の攻撃を受け流しているようだが、すでにボロボロになり、周りには村の男たちが倒れている

 数人は既にこと切れているようだ


「聖女様! 助かりました!」

「セラルさん、この魔物は一体…」

「私にもわからないのです。少し前村の男性が目撃したのを始めにこの周辺で度々目撃されるようになりました。その時は村を襲うことはなかったのですが、まるでこの村を偵察しているかのようでして、不気味なので調査に乗り出した、ところまではよかったのですが、ご覧の通り逆に待ち伏せされて襲われた次第なのです」

「魔物が待ち伏せを!? いえ、猿の魔物ならそれも可能、ですね。しかし、あの魔物、まるで人間のようではないですか?」

「はい、私もそう思っていました。虚実を入れた戦闘スタイルにあの感情の起伏」


 黒い猿魔物はケタケタと笑いつつまた一人村人の男を殴り倒した

 私はすぐにその魔物との間合いを詰めると拳に魔力を込めて思いっきり殴りつける

 すると猿の方はその拳を簡単に受け止めてしまった

 

「なっ」

「聖女様!」


 拳をグッと握られ、その骨がバキバキと潰れる音がする


「あぐっ、このっ!」

「リィリア!」


 ナリヤが剣でその猿を斬りつけてくれたおかげで拳が自由になる

 ぐちゃぐちゃにつぶれた拳をすぐに治癒して今度は秘神の力を発動する

 

「リィリア! 俺の力を使え! 俺はラバシィ。力は“覇”だ!」

「分かりました!」


 ラバシィという秘神の力を作動させると、いきなり体が爆発するかのような力の流れを感じた


「俺の力はあの“消滅”や“破壊”とは比べ物にならないほど強すぎてな! そのせいで秘神に成っちまったってわけだ。さぁ一緒にやるぜ相棒!」

「相棒、ですか?」

「なんとなくだよこういうのはよ! とにかく、目の前の敵を倒せ!」


 乱暴な物言いだが、どうやらラバシィは少女のようだ

 彼女に言われるがまま“覇”の力を使うと私の周囲の地面がボコリとくぼみ、力があふれ出す


「叫べ! 覇拳!」

「覇拳!」


 叫んで撃ちだすと、猿が目の前で弾け飛び、周囲が跡形もなく吹き飛んだ


「ちょ、ちょっとラバシィさん…。これはその、やりすぎでは?」

「細かいこと言ってっともてないぞ」

「なっ」


 とりあえず私達は怪我人を治療し、亡くなった方たちを弔い村に戻った

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