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蠢くは悪の意思40

 今回はすぐに目が覚め、崩れた建物から起き上がると、街の人達が不思議そうな顔をしてオロオロしているのが見えた

 ただ、自分たちが操られていたという記憶はうっすらとあるようで、助かったことに安堵しているようだ

 私は自分の体を見てぎょっとした

 私の小さな手、その指先が黒く染まっていたのだ


「これは…」

「ごめんリィリアちゃん。僕らでも全てを取り除くことができなかった。また虚無の力を使えば、さらに浸食されてしまう。だけど、なんとか食い止めなくちゃ。仕方ない、あいつに相談するしかないか」

「あいつ?」

「えっと、君に虚無の力を与えた、虚無の男。協力関係にあるのは確かなんだけど、目的達成のために前が見えてない節があるからなぁ。あいつの仲間はまだ少し話を聞いてくれるんだけど」

「とにかくその方と話せば、私のこの力も抑えられるのですか?」

「たぶん…」

「多分ってなんですの!? わたくしのリィリアが危険な状態ですのよ? そのようにあいまいなことでは困りますわ!」

「ご、ごめん。でも僕らだって精いっぱいなんだ! この子には、ただの人間にはない受け入れる力がある! だからこそ、この子は…、虚無になどさせない」

「あの、頭の中で喧嘩しないで下さい。響きます」

「ごめん」

「ごめんなさいですの」


 素直に謝る二人を少し可愛いと思ってしまった

 とりあえずその虚無の男と言うのが気になるけど、それはエススさんが何とかしてくれそうだ

 私は彼を信頼できるようになっていた

 まぁこれだけ助けてもらっていたのでは信用するしかないのだけど

 

 内なる会話が終わったことで私はようやくその場に戻って来ていたナリヤとヨローナに気づいた

 ヨローナはなんだかガクガクと震えている


「リィリア、あなた一体…。何よその力…。死がこちらに迫ってくる恐ろしい力。あなた一体、何者なのよ!」

「これは…」

「まさかリィリア、またあの力を使ったの?」

「あの少女にあてられて、無理やり…」


 私の力のことを話してしまっていいのだろうか?

 今回分かったばかりの私のこの力の正体は虚無の力で、私をその虚無という種族に変えてしまうものだのだと言う

 そうなれば、私は完全に黒く染まり、全てを虚無に変えてしまうのかもしれない

 それなら話しておいて、彼女たちに私が危険だと言うことを分かってもらっておいた方がいいのではなかろうか?

 私は一呼吸おいて話し始めた


「今から、私のことについて、お話します。ナリヤ、ヨローナ、私が転生者なのはもうわかりましたよね?」

「ええ、でもそれとこの力と、何か関係があるの?」

「関係があるかどうかは分かりませんが、私の中には女神様がおられます。女神ティライミス様が…」

「なっ!? それ本当!?」

「はい」

「でも、それだけじゃその黒い力の説明がつかないわ」

「ええ、女神様からはたくさんの神力を頂戴しました。この世界の安寧を願っておられるのです。しかし、私の中にはそれだけではない力が与えられていました。それが、秘神と呼ばれる神々の力と、虚無と呼ばれる者たちの力です。秘神も虚無も世界から隔絶されていて、その原因を作ったのが私にこの黒い力を与えた虚無でした」

「ちょっと待って待って! この世界の女神があなたの中にいるってだけでもよく分かんないのに、秘神に虚無? 聞いたことないわよそんなの」

「ヨローナが混乱するのも無理はありません。虚無の影響を受けてしまった秘神や私に力を与えた虚無たちは、みんなその存在をあいまいにされてしまったそうで、世界の記憶からも消し去られていたのですから」

「うーん、まだついていけないけど、なんで虚無は仲間の虚無にそんなことしたの? 仲違いでもしてるってこと?」

「そうですね、恐らくはその通りだと思います。秘神のエススさんもそう言ってましたから」

「話できるの!?」

「え、ええ、でも私からは話しかけれなくて、女神様となら話せるのですが」

「それより、その黒い力は、虚無の力は、制御とかできないの? さっき感じたけど、暴走、してたんじゃ」

「ええ、制御は、残念ながらできていません…。ですが、エススさんが何とかしてくれそうなので、今それを待っている状態ですね」


 一通り説明を終えたところで二人は黙り込んでいしまった

 それから数分の沈黙が流れて、ようやくヨローナが口を開いた


「まぁ、あなたのことだもの。きっと何とかするんじゃないの? 今までを見てたらそう思えるもの」

「うんうん、ヨローナ、分かってるじゃない!」


 二人は私の肩をポンと叩いて励ましてくれた

 いい仲間、だな

 

 それから私達は死んでしまっていたエスターと、パペットマスターと呼ばれる悪魔の死体を回収し、弔った

 確かにエスターはまさに悪というにふさわしい者だったが、それでも、こんな死に方はあまりにも可哀そうではないか

 死してなお尊厳を奪われ、人形として弄ばれていた

 丁寧に死体を野山に植え、花を供える


「ありがとうリィリア、エスターには、いつもいじめられてたけど、でも、なんだか、放っておけなくて…。」


 もしかしたらヨローナの、いや、アスモデウスの記憶がエスターのことを思い出させているのかもしれない

 アスモデウスは自分の記憶が戻るまで守ってほしいと言っていた

 エスターが死んでしまった今、ヨローナの記憶を取り戻すきっかけが無くなってしまった

 ヨローナが言うにはこの世界に来た悪魔で生き残っているのは自分だけなんだと言う

 仕方がない。待つしかないだろうな。ヨローナがアスモデウスとしての記憶が戻るまで

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