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蠢くは悪の意思38

 明らかに死んでいるその少女、死体を操るなど、非道な

 私は不快感をあらわにしながら死体を操っている少女を睨む


「ああ、いいねぇその目、ゾクゾクする。僕にもっとその視線を注いでくれないかな?」

「気持ち悪、リィリア、こいつが多分元凶よ。ほらヨローナ、あいつを倒…。ヨローナ?」


 ヨローナを見ると、その顔が絶句に変わっていた

 どうやらその目は死体となった少女に注がれているようだ


「嘘、嘘、そんな…。仮にも中位の悪魔なのよ? 魂すら、消されてるじゃない! エスター!」

「え!? あの死体の子、あれがエスターなの!?」


 驚いたことに、その死体の正体こそが私達が追っていたエスターだった


「あれ? これって悪魔なの? あんまりにも弱いからさ、人形にして遊んでたんだ。手足はなんか汚かったからこうやって僕好みの手足に変えてさ。そうそう、目もほら、見てよ。綺麗だろう?いやぁストックを持って来ててよかったよ。あ、それでさ、このパペットマスターって力さ、悪魔から奪ってみたんだけど面白いよね? あれで男爵? 爵位の悪魔だからちょっと期待したのに、一瞬すぎて僕、力を出す間もなかったよ」

「まさかあんた、“パペットマスター”のアボルを」

「さぁ、名前なんて知らないよ。でも力は面白かったからね、こうして…。えっと、あ、ここにあった。ほらそのアボル君人形。こいつは僕好みの顔じゃなかったけど、力が欲しかったから人形にしといたんだ。あ、この子は僕好み。力は大したことないけど顔はよかったから人形にしたんだ」


 エスターは敵だった。それは間違いないし、人間を殺しまわっていたと聞いていたから許すことはできない

 だが、その死体を弄ぶこいつは、もっと醜悪で、私は怒りがこみあげてくるのを感じた

 目から光は消え、だらしなく口を開けて体液を垂らすエスターが哀れになったのかもしれない

 笑みを浮かべている少女を見ると、私を冷たい目で見つめていた


「お前が、あいつらが力を与えてる存在…。僕はね、あいつらが大っ嫌い! そしてやつらに肩入れされてる君もね! ふふん、調べたら君、別世界から転生したただの転生者らしいじゃない。それが何の因果か、分不相応な力をてにいれちゃってまー…。反吐が出る! 弱いくせに!」

「転生…? リィリア、それって」


 ナリヤが不安そうな顔でこちらを見た

 これは、彼女には正直に言った方がいいな


「ええ、私には前世の記憶があります。前世は平和な世界でのうのうと暮らしていた何のとりえもない男でした…。人をだまし、ひどい仕打ちをたくさんした、クズのような人間、それが前世の私です」

「リィリアが、転生者…?」


 ナリヤは驚いたように目を見開いている

 無理もない、ずっと中身が男の見た目少女と行動を共にしていたのだ。当然共に風呂も入ったことがある

 まぁ私に少女趣味はないので興奮はしないが、それでも彼女にとってはおぞましい話だな


「転生者、そっか、それでリィリアってあんなに物知りで大人っぽかったんだ! ずるい! 私にもその前世の知識教えてよね!」

「え? 気持ち悪くは、無いのですか?」

「何で? 前世が男でも今はリィリアって一人の女の子でしょ? それに親友なんだもの、気持ち悪いなんて思うわけないじゃない!」


 本当に、この子は、素晴らしい子だ…。守りたい、この命を賭してもこの子を

 大切な仲間を


「最後の話、終わった? 全くこれだから人間ってのは…。じゃ、殺しちゃうから、せいぜいあがいて見せてよ」

「ええ、そうさせてもらいます」


 その時またしても頭の中で声がした。女神様とは違う声が


「く、もうそんなところにいたのか! リィリアちゃん、そいつはこの世界の力が一切通用しない! 悪魔や神をも殺しうる存在、それがそいつらの一族、虚無だ!」

「虚無?」

「ああ、僕らと対立し、全ての世界を無に帰そうとしている種族。悪魔たちも彼らに騙され今のような姿になったんだ。君のその黒い力を与えたのも、虚無だ」

「この力が、虚無の…」

「うん、力を与えた虚無はこいつらと袂を別った奴らだけどね」

「とにかく、敵で間違いないってことは分かりますよ。そして、ここで倒しておかなくちゃいけないってことも」

「うん、僕も力を貸すよ。そうだね、自己紹介をしておこう、僕はエスス。“時”の力を持った秘神。全ての世界から拒絶されし神々の一人」

「全ての世界から、拒絶? それはいったい」

「今はそれは言えない。でも僕だって神だ。君に強力くらいはできるさ」

「分かりました。よろしくお願いします」

「それじゃあ行くよ! 叫んで! 言霊に僕の力を乗せるんだ! 言霊は思いの強さで強くなる! 君はもうわかっているはずさ、どう叫べばいいかね!」

「ええ! エヌラベラ、エスス!」


 頭に浮かん出来た言葉、それが彼の力を正しく使うためのトリガーとなっている

 その言葉を叫んだ瞬間、この場の時間を私が支配した

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