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蠢くは悪の意思37

 雪国ってなんでこう寒いのかしら?

 分かってる、寒いから雪がふるんでしょうね

 リィリアの魔法であったかい空気に包まれてはいるんだけどねえ、こう雪景色が続くと、なんだか身も心も寒くなっちゃいそう

 ヨローナの方に目をやると彼女はそんなこと全く意に介していないみたい。正直彼女はものすごく薄着だから見ているだけで寒い。彼女は平気そうなんだけどね

 で、おかしな村から続いている轍をずっと辿ってるんだけど、かなり進んでもまだまだ続いてて嫌んなっちゃう

 でも途中から雪が溶けた道になっていて、ようやく土肌が見えることにちょっと安堵した

 雪が無くなったから轍も薄れるかと思ったけど、土にしっかりと痕がついてるからこのまま追撃を続行ね


「まだ続くのかしら。飛んで行く?」

「いえ、あの村に異変を起こした何かに発見される恐れがあります。慎重に歩いて行きましょう」

「そうねリィリア、わかったわ。ほらヨローナ、元気出して」

「うん」


 それから一日ほど轍を追いかけたところでとうとうその痕が途切れてしまった

 でも心配ないわ。だってそこからは土をならして舗装した道になっていたんだもの


「この立て札によるともう少しで街に着くようです。何かが潜んでいる可能性もあるので気を付けて進みましょう」

「ええ」


 リィリアは探知を発動しながら先頭を歩いてくれる

 私がその後ろで、最後尾をヨローナが歩く

 なんだか二人に守られるようにして歩いてる感じなんだけど、それも仕方ないかな? 私がこの中で一番弱いんだもの

 

 小一時間ほど歩いてやっと街に着いた

 かなり大きな街で活気にあふれてて、行き交う人々も笑顔

 あれ、でも…


「やっぱりここも、そうですか」

「ええ、皆同じ行動をずっと繰り返してる」

「うーん、やっぱり反応ないわね」


 私は客の呼び込みをやっていたお姉さんの顔の前で手を振ってみたんだけど、こっちを見もしない

 ヨローナは明らかにカツラをかぶってるおじさんからカツラを取ってみてるけど、全く怒らない

 ここもやっぱりあの村と同じように人々の行動が一定のことしか出来ないようになってるのかも

 何かに操られてるのかな?


「リィリア、これってまるで、人形劇みたいじゃない?」

「ええそうですね、私も同じことを考えていました」


 私達が幼いころに興行に来ていた人形劇団

 カラクリを使ってカタカタと同じ行動を繰り返し、音楽をかなでていたそれとよく似ている気がする

 手分けして街の人たちを確認して言ったけど、やっぱり誰も反応してくれなかった


「これはいよいよ何かに操られています。でも魔力の痕跡も神力も見えませんね」

「ほんとに、何ておかしな光景なのかしら」

「エスター、の仕業…。いえ、でも、力を隠していたとしてもここまで持続して人間を操れる魔力なんて、それこそ侯爵以上の悪魔じゃないと難しいわ。エスターは精々中位だもの。エスターの仕業とは考えにくいわ」

「なるほど、ではエスター以外に人間をこのような状態に変えれる悪魔に心当たりはありますか?」

「うーん、そうね、男爵の“パペットマスターアボル”、子爵だけど魔力は侯爵クラスの“傀儡のデュルメルス”くらいかしら…。でもその二人は今別世界に召喚されてたはずだし、それに悪魔の力なら私が感知できるはずだもの」


 そっか、悪魔の力なら魔力も宿ってるし、私達でも感知できるはずだもんね

 じゃぁこれをやったのって、悪魔じゃないってことよね? 一体何が起こってるって言うの?


「取りあえずもう少し調べてみましょう。危険かもしれないので今度は一緒に。あの区画はまだ調べてないのでそちらに行ってみましょうか」


 リィリアの言うようにその区画を今度は三人で調べてみた

 この辺りは貴族の区画なのか、豪華な服を着た人たちが歩き回って、先ほどいた商業区の人達のように同じ行動を繰り返していたわ

 なんだかみんな張り付いたような笑顔で気味が悪い

 三人一緒になってそれこそ隅々まで調べて、最後の豪邸、多分領主が住んでいると思われる豪邸に足を踏み込んだ

 その瞬間、一斉に矢がこっちに向かって発射せれて、リィリアが結界で防いでくれた

 矢が飛んできた方向を見ると、これもまた張り付いた笑顔を浮かべたこの館を守る兵らしき人達が弓を構えていた

 第二波が来たけどそれも結界で防いで、私達は彼らを気絶させるように少し叩いた

 うん、どうやら気絶させることは可能みたい

 倒れた彼らを寝かせて先に進むと、そこかしこから鎧を着た兵士たちが現れては私達を攻撃してきた

 その度に傷つけないよう気絶させて、寝かせて、先に進むと言う行動を繰り返して、少し疲れながらも最奥の部屋にたどり着いた

 要するに領主の部屋ね

 豪華なんだけど薄暗くて、その椅子には領主らしき人が笑顔で座ってる

 彼はまるで操り人形のように私達に向き直ると、しゃべり始めた


「誰かは知らないが、人の城にずけずけと踏み込んでくるなどぶしつけもいいところではないかね? 私は今気持ちよく寝ていたというのに」

「誰かがその方を使って話しているのですね? 姿を見せなさい!」


 珍しくリィリアが声を荒げている

 多分人間を玩具のように操っていることに怒ってるんだと思う


「ハハ、僕が僕の玩具を使って遊んで何が悪いの? それよりも、僕の玩具箱を荒らした罪は重いよ? 君たちも操り人形にして、死ぬまで僕の前で踊らせてあげようっか」


 その声は幼い、少女のような少年のような声で、まるで私達を馬鹿にしているかのような感じを言葉の節々に感じる

 そしてゆっくりと、領主さんの後ろにあった壁が扉のように開いて、そこから訳の分からない力を纏った少女が姿を現した。手足を球体関節人形の手足に変えられ、その切り落とされた傷口から血を流す女性と一緒に

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