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蠢くは悪の意思36

 食べるものも食べてしっかり眠って、すっきりした気分で私達は頂上へと再び歩みを進める

 かなり大きな崖もあれた雪道も平気で進んで、ついに私達は頂上へと上り詰めた

 恐ろしいほどの快晴で雲一つない空はすがすがしい気持ちにさせてくれるんだけど、ここには竜が住むみたいだし、いくら私が悪魔だからと言って油断ならないんだと思う

 リィリアが話してみるとは言っていたけど、竜ってそんな話の分かる奴だっけ? 少なくとも私がいた世界の竜は人間なんて虫程度にしか思っていない

 仕方ない、もし何かあった時は私がこの二人を守らないと。竜なんて人間が勝てる相手じゃないものね


「止まってください! 上から来ます!」

「え!?」


 上を見上げると大きな影が見えて、私達の目の前に巨大な、それこそ小山ほどありそうな竜がドスンと降り立った

 その衝撃で山脈に雪崩が起きている


「何をしに来た人間! 夜天族に伝えていたろう、ここは我らが領域、侵入すれば殺すと」


 うわ、しゃべるんだ竜って


「竜言語必要ありませんでしたね」

「何冷静に言ってんのよ! 逃げるわよ!」

「まぁまぁ、ちょっとこの竜お話ができないみたいだから、私が話せるようにしてあげるわ」

「何言ってんの!?相手は竜だって言ってるでしょ!?」

「何か策があるってことですか?」

「まあ任せて」


 私は竜に近づくと見上げる


「なんだ? 我は女子供だろうと容赦はせんぞ? ブレスで溶けてなくなりたいようだな?」

「うーん、ちょっとお話を聞いてほしいだけなんだけど、そっちがその気ならちょっと痛い目に遭ってもらいましょう」

「ハッ! 人間風情が何を!」

「人間じゃないんだなこれが」


 私は体内に抑えていた魔力を少し解放した


「いくら私が四恐最弱だって言ったって、この世界の生物とは比べ物にならない力があるの。ほら、貴方も分かるでしょ?」


 魔力を少し竜にあててあげると、竜は泡を吹いて倒れた


「あらら、20パーセントくらいだったのに…。悪いことしちゃった」


 しばらくして目を覚ました竜の顔を見ていると


「うわわ! な、なぜ我を殺していない! 生殺与奪は貴様が握っていたんだぞ!? 殺せ!」

「いやそんなことしないって。私生き物殺したことないもん」

「は? それだけ邪悪な魔力を垂れ流して置いて殺したことが無いだと!?」

「本当ですよ。彼女はなりたくて悪魔になったわけじゃないんですから」

「あ、悪魔だと!? 余計にヤバイではないか! 何ちゅうもんを連れて来とるんだ!」


 竜は涙目で、それはもうかわいそうなほど狼狽していたので、とりあえず落ち着かせて話を聞いてもらった


「は、はい、そうです、私はここに住む竜のまとめ役であるグァンザットと申します。ええ、はい、人間相手だと思って調子に乗ってました」


 人間形態になった竜は実はメスだったようで、羨ましいほどの大きな胸に煌びやかな甲冑を着て、宝石のような角が額より少し上に生えている。髪の色は光を帯びた青で、顔立ちはすっきりとした美人ね

 ほんと、羨ましいほどの美人


「取りあえず、私達は話を聞きたいだけなんで」

「そ、そうか、いや、そうですか。何をお聞きになりたいのでしょう?」

「実はですね、こちらからグランベルゲル共和国の方向へ悪魔が一人向かったのですが、それを見ていないでしょうか?」

「あ、ああ、確かに強大な力を持った何かが飛んで行くのは見た。得体が知れなかったので我らはなにもみなかったことにしたのだが…。そうか、あれも悪魔か、してなぜ悪魔が悪魔を? まさか、世界を滅ぼそうと」

「してません! 私はその悪魔を止めようと思ってるの。むしろ世界を救いたいのよ」

「はい?」

「だから、その悪魔を倒すのよ」


 それから混乱する彼女に説明したけど、いまだ頭の中がこんがらがっているみたい

 でも今は構ってられないし、とりあえず通してもらえたから先を急いだ

 そのまま山はふぶくこともなく順調に進んで、翌日の夕方には山脈の麓、夜天族の国の反対側に来れた

 麓には綺麗な雪景色が広がっていて寒い。リィリアが魔法で温めてくれたおかげで大丈夫そう

 で、雪には馬車の轍があって、それを辿って行けば街に着けそうってことでそのまま進んだ

 しばらく轍に沿って進んで、やっと村らしきものが見えてきた

 その村は閑散としていてのどかで、平和そのものって感じなんだけど、なんだか人の様子がおかしかった

 話しかけても何も答えないし、黙々と作業を続けている。こっちを見もしない


「何でしょう、変な違和感があります。ここまで何の反応もしないなんて…」

「こっち見て、このおじさんくすぐっても眉一つうごかさないわ!」

「ホントだ、こっちのおばさんも笑わない」


 これはいよいよ異変が起こっていると確信して、村を調べてみた

 でもどこにも魔力の痕跡とか、悪魔が何かした痕跡はない

 もしかしたらエスターはそういった力を隠すのに長けてるのかも

 今までだって私達に力を隠していたしね


「取りあえず、原因が分からないのでこの国の勇者に会いましょう。勇者会議には出ていなかったようですが、この国にも勇者はいるのでしょうナリヤ?」

「うん、確か若い男の人だったはずだけど、私も性別しかきいてないし、顔は分かんないわよ?」

「まぁ誰かに聞けば知ってるんじゃない? とりあえずここの村のことも偉い人にに報告しないと」

「そうですね、では行きましょうか」


 目標を定めた私達はその勇者を探すことにした

 とりあえずはこの村からさらに続いていた轍を辿ってね

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