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蠢くは悪の意思34

 ヨローナの様子がおかしい

 でも彼女は特に怪しい行動も言動も見せないから問題があるわけじゃないんだけど、時々頭を押さえてうずくまったり、何かをブツブツとつぶやいてたりとなんだか怖い

 でもリィリアが特に問題にしないなら、私はこのまま何も言わない

 リィリアが信じるって決めたのならそれに従う


「山小屋が見えてきました。あそこで少し休みましょう。ヨローナ、大丈夫ですか?」

「あ、うん、少し頭が痛むけどもう大丈夫」

「ほら掴まって」

「ありがとう」


 私は彼女に肩を貸して歩き始めた

 なんだかフラフラしててほっとけないんだもん

 小屋に連れ入るとそこに保存されていた食料を少し分けてもらって遅めの昼食をとった

 このあと山頂付近に一応保存食の蓄えられた小屋があるみたいだけど、今日は早めにここで暖と休みを取って、明日の朝早くに小屋を出ることにした

 私とリィリアで食事の用意を初めて、ヨローナには休んでいてもらう

 彼女はエスターの気配をしっかりと辿れるからここでダウンされても困るものね

 それに何より、私はヨローナを心配していた

 悪魔なんだから、もしかしたらだましてるかも、裏切ってくるのかもって思うのに、それでも彼女を信じずにはいられないし心配せずにはいられない

 それが彼女の力なのかもって思ったけど、リィリアにそれとなく聞いてみたら力の流れはまったく感じないって言ってた

 ってことは、彼女は素で構ってあげたくなるオーラを出してるってことなのかな

 悪魔らしくない


「できました。干し肉と玉ねぎを簡単にシチューにしたものですが、これで体が温まるはずです」

「ほらヨローナ、食べて」

「じ、自分で食べれるから!」

「あ、ごめんつい」


 思わずスプーンですくってフーフーした後にヨローナの口まで持って行ってた

 恥ずかしそうに私からスープを受け取ったヨローナはハフハフ言いながら食べてる

 うん、さっきよりは元気そう


「ヨローナ、あなたやっぱりカレアナちゃんのこと気になってるの?」

「え? ええ、それも、あるんだけど…」

「それも? 何か別の悩みがあると言うのですか?」

「それが、その、何て言っていいのか分からないんだけど、自分の前世、みたいな…。あ、前世は人間だったんだけど、それより前の前世っていうか、そんな記憶がね、私の頭の中にふとした瞬間蘇ってくるの」

「前世ですか? 人間になるより以前と言うことですよね?」

「うん、多分、そうなんだと思う。その記憶では、私はアスモデウスって呼ばれてて、王と呼ばれる王位を持つ悪魔たちと一緒に戦争へ向かおうとしているの。で、その戦争で私は死んじゃって、そこで記憶がぷっつり途切れるの」

「アスモデウス…。七つの大罪、色欲を司る悪魔…」

「そう! その悪魔なの!」

「え、リィリア、なんでそんなこと知ってるの?」

「あ、いえ、以前何かの文献で読んだような気が…」


 リィリアって本当に物知りね

 でも七つの大罪?に色欲を司る悪魔?だったかしら? そんなもの聞いたことない

 それに王位を持つ悪魔って何? そんなヤバそうなのが他にいるってこと?


「あ、このこと内緒にしようと思ってたのに、何かしゃべっちゃった。でもいっか、あんたたちなら大丈夫。そう思えるもの」

「いえ、話してくれてよかったです。まぁその話はまたいずれ詳しく聞くとして、今日はもう疲れたでしょう? あとはゆっくり休みましょうか」

「うん」


 まだ浮かない顔のヨローナだったけど、話を聞いてもらえて安心したようで、毛布にくるまるとすぐに寝息を立てていた

 そしてその日の夜中のこと、とんでもないものが私達の前に現れた


 みんなが寝静まった深夜

 私はなんとなく目が覚めてむくりと起き上がると、うなされているヨローナを見た

 それに気づいてリィリアも同じように起きあがって私を見る


「ヨローナ、うなされてる」

「ええ、苦しそうですし、起こしましょう」

「うん」


 ヨローナを起こそうと二人で立ち上がると、そのヨローナの体から光る何かが飛び出して、私達の目の前で人型に変わった


「な、なにこれ!」

「分かりません、何でしょうか?」


 リィリアがおっかなびっくりその人型に近づくと、光が薄れて淡い光となった

 それは少女のような大人の女性のような女の私から見てもあまりにも魅力的な人


「ああ、あなた達が今の私を守ってくれているのね?」


 その女性は私達を見るなりそう言って抱き着いてきた

 ほのかにいい匂いがして思わずうっとりとしてしまう

 リィリアも同じようにうっとりとした顔


「あらあら、ごめんなさいね、私この姿だと常時魅了を振りまいちゃって、同じ王位を持つ悪魔ならレジスト出来るんだけど」

「あ、あの、貴方がもしかして」

「ええ、私はアスモデウス。アスモちゃんって呼んでいいわよ」

「あ、ではアスモさん、あなたは本当に、ヨローナの前世なのですか?」

「ええそうなるわね。こうやって魂だけの時は記憶がちゃんと蘇るからこうして話せるんだけど、この体に戻ればまたヨローナとしての人格に戻っちゃうから、今話しておきたいの」

「で、でもあなたは悪魔なんでしょ!? そんな奴の言うこと信じれないわ!」


 私は魅了に必死に抵抗してそう言った


「あら、魅了に抵抗するなんて、やるわね。でも今はそんなことどうでもいいわ。あなた達に伝えたいことがあるの…。ああ、だめ、まだ目覚めないでヨローナ…。う、く、ダメみたい…。ねえあなた達、次私がいつ出てこられるか分からないから、一つお願いがあるの」

「お願いですか?」

「ええ、このヨローナを、私を守ってほしいの、私としての記憶がよみがえって、元に戻るまで」

「でもそうなればあなたは悪魔としての本分、人間を堕落させるのではないのですか?」

「そうね、確かにそれが悪魔。でもね、私は人間が好き。それは今も昔も変わらない。だから信じて」

「にわかには信じられませんが、嘘はついていないことは分かります。分かりました、守ると誓いましょう」

「ありがとう、きっと悪いようにはならないから」


 そう言ってアスモデウスはまたヨローナの中に戻って行った

 そしてヨローナが目を覚ます


「キャッ! なに!? 何なのよ!?」

「ごめんなさいヨローナ苦しんでたみたいなので」

「あ、う、うん、そうなの?」


 とりあえず今起こったことはヨローナには内緒にしておいて、また眠りについた

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