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蠢くは悪の意思33

 私は少し心配になっていた

 いくら聖女だからと言っても(あ、この子たちはハイプリエステス見習いと勇者だったっけ)、私のような悪魔は彼女たちにとっては敵、いつ私も消されるか分からない

 カレアナは、大丈夫かしら…。いえ、きっと大丈夫、アエトだってあんなに幸せそうにしてたんだもの

 それにこのリィリアって子、この子はなんだかエスターよりも得体が知れないと言うか、底知れない力を感じる

 悪魔の力に近いもの、それに神力に、もう一つは、これはいったい何の力なのかしら…

 私は感知に関してや洗脳については少し自信があるんだけど、この子の力、今まで感じたことが全くない異質すぎる力なのよね

 それに、こっちの勇者、この子に関してはリィリアに影響されてるみたいで、彼女から力の一部が流入してる

 本人は気づいていないみたいだけど、このナリヤって子もヤバいと思う

 悪魔を倒せる力を秘めてるから、私を十分に滅ぼしうる

 カレアナが無事保護してもらえることが分かったから、私はまだ死ねないもの

 エスターは依然私を殺そうと…

 そう言えばあの時エスターはなんて言ってたかしら?

 私を、王女様って呼んでた…。あれはどういう意味? エスターのことだから私を混乱させようと言っただけなのかもしれないけど、なんだかその言葉が妙に私の心に引っかかってる

 悪魔の中で最も力が強い存在、それが王位を持つ悪魔たち

 女王リリスを筆頭にルシファーやサタン、ベルゼブブ、アシュタロトと言った王位を持つ悪魔たちは、それぞれの派閥があって、私達四恐はその中でも大罪と呼ばれる七柱の悪魔の一人、色欲のアスモデウス派だったはず

 ただアスモデウスは私が悪魔になるはるか前にすでに亡くなったって聞いた

 何故か王位を持つ悪魔の中でも異質で、他の悪魔に優しかったんだとか

 いつも女悪魔の取り巻きがいて、日別にとっかえひっかえでまさしく色欲におぼれてたそうだけど、基本は優しかった。そうエスターがいつも語ってたっけ

 あれ? なんだか、頭の中がごちゃごちゃして、人間の頃の記憶、と、この記憶は、一体


「・・・ローナ、ヨローナ!」

「ん? あれ、私、あ、れ」


 ザーザーと頭にノイズが入る

 リィリアたちが呼ぶ声がどんどんと遠のいていく


「ザ、ザザー…。ですがサタン、彼らと戦争をしたとしても、そこに残るのは怨恨と悲惨な結末のみ、私は反対です。平和に、エロティックに、それが私のモットーです」

「ふん、かつて奴らに受けた屈辱を忘れたのか? こちらには元神や天使も数多くいる。神に仕えていたやつらなら奴らの滅ぼし方も知っているだろう?」

「でも!」

「放っておけ、アスモデウスは昔から平和主義者だったろう」

「マモン、それでは戦争に大罪がそろわぬことになるではないか」

「アスモデウス、すまない、君の言うことも最もだが、俺たちはそう割り切ることなんてできないんだ」

「ルシファー…」

「私は苦しむ人間を見ていられなかった。だからこそ火を与えた」

「そうよ、同じく火を与えたプロメテウスは何をされたと思う? 死ぬこともできず、永遠の責め苦を受け続けてる」

「レヴィアタン…。分かっています、分かっていますけど」

「もともと我らだって神であり天使だった。だがやつらはそれを忘れて平和を謳歌している。だからこそ見せつけねば。俺たちが滅んでいないことを」

「だがやつらは俺たちがいたことすら忘れている。それもこれも…」

「戦争は避けられん。分かってくれアスモ」

「では私も行きます」

「何を、お前は戦いたくはないのだろう?」

「ええ、ですがあなた達を守ることくらいはしてみせます」

「どうやってだ? お前の権能では惑わすが精々だろう」

「そうよアスモ、親友のあんたが死んじゃったら、私」

「死にません、私の権能は色欲、確かに惑わせ混乱させ、洗脳するくらいしか、それでも、私は、仲間であり友人でもあるあなた達を」

「わかったアスモデウス、君も来てくれ。だがもしもの時は、すぐに逃げるんだよ?」

「ええルシファザサ…。必ずザーーー」


 頭が痛い。何の記憶?

 記憶の中で私はアスモデウスと呼ばれていた。これは、アスモデウスの記憶なの?

 何で私がアスモデウスの記憶を?


「大丈夫ですかヨローナ」

「え、ええ、ごめんなさい、なんだか頭がフワフワしてて、少し、休んでいいかしら?」

「高山病ですかね? とにかくもう少し進めば夜天族の方が作った山小屋があるみたいですので、そこまで歩けますか?」

「大丈夫」


 今は、記憶のことを話すわけにはいかない。はっきりと分かるまでは

 私は支えてもらいながら、ゆっくりとその山小屋まで歩いた

 山小屋に到着すると、少し痛む頭を押さえて座り込んで考える

 アスモデウスと私の関係は? いえ、そもそも、あの記憶に懐かしさすら覚えてるこの感情は一体何?

 私は人間だった、それは間違いない

 それなのに悪魔に生まれ変わった時、なぜか爵位を持つ悪魔たちに気に入られていた気がするし

 考えたけど、それ以上記憶がよみがえることもなかったから、立ち上がって先に進もうと促した

 山脈には竜も出るって言うし、考えるよりもまずはエスターを問いただすことにしよう

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