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蠢くは悪の意思32

 悪魔であるヨローナと魔王カレアナを保護し、話を聞いた

 それによると、この世界に来た悪魔は四恐と呼ばれる四柱の悪魔たちで、下級悪魔としては上位の方だったらしい

 ただ、その四恐の中に中級悪魔が紛れていたらしく、それがエスターという最後に残った悪魔だ

 ヨローナの話をすべて信じたわけではないが、彼女にはなぜか人を信頼させる雰囲気がある

 笑顔は人懐っこく、どこか守ってやりたくなるかのような、そんな気配も漂わせていた


「それで、そのエスターという悪魔はどこへ?」

「えっとたしか、クーレアル山脈の方へ飛んで行ったわ。でも、本当にあの悪魔を倒すの? あいつは、私達にも力を隠してた本当に力ある悪魔よ? 私達たった三人で、倒せると思う?」

「大丈夫です。秘策があるので」

「リィリア、もしかしてそれって、あの黒い力じゃ」

「違いますよ。もう二度とあの力は使いませんから安心してください」

「そう、それならいいんだけど」


 秘策はある。あの人たちにもらった力が

 彼らは自分たちの力をなるべく使うように言っていた。黒い力は危険すぎるとも

 黒い力を授けた者と彼らは確かに協力関係にあり、信用しすぎるのは危険だと思うが、彼らには私を助けてくれたという恩もある

 

 そう言うわけで私達三人はエスターというこの世界に害を及ぼす悪魔を探すことになった

 アエト、ライラ、セリセリはさすがに危険と言うことで聖国に残ってもらうことになったが、彼女らは私達を心配して手作りのお守りを持たせてくれた

 星詠み族に伝わる守護のお守りと呼ばれるもので、星型をしていて可愛らしい

 それを大切に懐にしまうと三人で連れ立ってクーレアル山脈へ向かった

 クーレアル山脈は年中雪が降り積もる極寒の地で、その先にはグランベルゲル共和国という大きな国があるらしい

 その国との国交はないに等しく、どういう国なのかも詳しく分からないが、山脈を迂回する比較的安全なルートを通っての商業くらいはあるらしい

 そのルートは確かに安全なのだが、本当に大回りをしなければならないのでグランベルゲルに到着するのに約一年を要するらしい

 空輸も考えたが、この山脈の中空はドラゴンの制空圏であり非常に危険とのこと

 ドラゴンと言えば泉の神獣フィニキアちゃんだが、あそこまで人懐っこくおとなしいドラゴンは珍しい

 普通は人を襲い喰らうというのが一般的なドラゴンの解釈らしい

 ただ、私には神力“龍言語”というものがある

 もしかしたら会話が成り立つかもしれない

 

「会話はできるかもしれませんが、話が通じるとは限りませんわ。フィニキアはわたくしの眷属ですけども、そのドラゴンたちは遥か昔魔族や魔物の祖神となった神の産んだものでしょう。魔族はこの世界にもいますし、聡明で人の良い方も多いのですが、魔物はまったく別です。人を淘汰するために生まれたもの、それが魔物です」

「なるほど、ですが一応対話は心みてみます」

「そうですか、気を付けてくださいまし」


 一路クーレアル山脈への旅を急ぐため空を飛ぶ

 聖国から帝国上空をさらに進み、三日後にようやくクーレアル山脈麓にある国、夜天族というカラス天狗のような種族の住む国へ到着

 彼らはめったに人間の前に姿を現さないが、私達聖国の人間は信用しているとすんなり入れてくれた

 かなり昔からお互いに国交があったため、信頼を得れていたのが幸いしたようだ

 彼らの信仰するのは自然で、それはすなわちこの世界を信仰しているのだという

 だからまあ女神様の信徒であることには変わりないというわけで、その信仰心は女神様に還元されているというわけだ

 そんな彼らの話によると、確かにこの山脈はドラゴンの飛来地になっているそうで、空を飛べる種族である夜天族でもそう簡単には山脈を超えることはできない

 ただ、ドラゴンは山脈の山頂付近に近づかなければ襲ってくることはないらしい

 だが私達がこれから行うべきは山脈越えであるため、絶対に山頂を通らなければならない

 

「ふむ、そういえばかつて龍言語を操る研究者がこの山脈のドラゴンと対話したという話を聞きましたぞ」


 そう話してくれたのは国長と呼ばれる要するに王様だ

 王とは言っても夜天族しか住まない本当に小さな国なので、町長くらいに思ってもらえればいいだろう

 その日はこの国で世話になり、明日の朝、日が昇る頃に入山することになった

 氷雪系の魔物も多く住むため気を付けなければな


「では、くつろいでださい聖女様」


 王様はニコリと微笑んで私達をもてなしてくれた

 それにしてもかなりの実力者である夜天族でもドラゴンには全く歯が立たないと言う

 確かに私の元居た世界でも竜や龍とは恐れられる存在であり、人が倒せるようなものではないと伝承にもある

 まぁ一部の聖女や聖人、勇者などは一人で倒した者がいると言う伝承も残っていたが…。聖女マルタなどがその類だ

 いや、そう言えばあの世界では竜がいたかも怪しいな

 とにかくだ、私なら倒せるだろうが話し合いができると言うならそれを試みたい

 龍や竜は確かに魔物などを生み出した女神から同じく生まれているが、ちゃんと知性を持った生き物であるという

 ならば、人と変わらない感情を持ち合わせていたとしてもおかしくないと言うのは甘い考えだろうか?

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