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00.プロローグ
目を閉じると、男の首が宙を舞う情景が見えた。
真っ赤な鮮血と、真っ白な骨。
精々映画やテレビ、ゲームでしか見る事のない情景を目にしても、何も感じなかった。
例えその男が僕を騙し、奴隷の様に虐げてきた相手だったとしても。
普通の人間であれば、死にゆく者に対して何らかの感情を得るものだろう。
しかし、そんな事よりも。
そんな、僕にとって衝撃的で人生観が変わる様な状況よりも。
ただ僕は、首を落とす白髪の女性に、心を奪われていた。
「助けに来た!」
目を開くと、そこにいたのは甲冑を纏った騎士。
血塗られた大剣を肩に担ぎ、まるで少しでも僕を安心させるかの様に笑顔で立っていた。
これが始まり。
何の価値もない怠惰な男と、人を守る為に剣を振るう彼女が、
神様を殺す話だ。




