彼女と彼女の
*あかり視点*
ちょっと、ダークだよ!
東京駅から電車に乗って約40分。
私の住んでる家がある街。
春には川沿いの桜並木が有名で、おしゃれなカフェなんかが最近は多くできてきた。
ニノちゃんも一緒に来てくれれば良かったのに、遠慮して別行動になっちゃったのが残念。
昨日あんなことした後なのに普通に…っていうか、あの人朝は猫の心配しかしてなかったけど…。
それに泊まりの準備してくるって言ってもついてきてくれないし!
家でボストンバッグに下着の替えと着替え、携帯の充電器とかを入れながらニノちゃんの態度と行動にムカムカしてくる。
まぁ、本人にそんな事で怒ったりとかしませんけどねっ!
大人な私はっ!
手荒く荷物をまとめれば少しだけ待ち合わせ場所に向かうまで時間がある。
「はぁー…」
多少手狭な1Kの部屋でベッドに大の字に寝転んで携帯の画面を開く。
蘭から「何時に帰ってくるの?」とメッセージが入っていて「夕方くらい」と返せば直ぐにOKとスタンプで返信があった。
向こうは向こうで仲良くやってるみたいで安心する。
蘭をその気にさせて、あの2人の関係を"お友達から恋人"に昇華させて、これで鬱陶しかったキミをニノちゃんから引き離せた。
ふふっ…と口元が緩む。
ニノちゃんとベッタリで何年もニノちゃんの家で暮らしてたんだからもう良いよね。
自分に向けられてる好意に酷く鈍感なニノちゃんだから、これからは私がしっかり守っていかなきゃ。
メッセージアプリを閉じて待ち受けに戻せば、この前のミニライブの時に一緒に撮ったツーショット写真の待ち受け。
写真のニノちゃんは照れ臭そうに笑ってる。
「可愛い…本当に」
思わず漏れた独り言とほぼ同時にニノちゃんがSNSに投稿した通知が入った。
通知を開けば、パソコンが大量にある店内の写真とパソコンだけの写真。
『どれがいいかわかんない。オススメ教えて!』
と、いった内容。
でも、なんだか胸騒ぎがする。
「え…これ…」
店内を写した写真の端の方に写る黒髪の長身の女。
昨日一緒にいた子に似てる…。
画像を拡大して横顔を見ても昨日の子。
偶然…?
偶然だよね?
有り得ない!
飛び起きてニノちゃんに電話をかけた。
何回か呼出音が鳴って、いつも通りの素っ気ない声音で「どうしたのー?」とニノちゃんが出る。
「あ、あのね、準備終わったから少し早く待ち合わせで…『ニノさん!これ、あ!ごめんなさい!』」
話しの途中に電話の向こう側でニノちゃんに話し掛ける女。
『あ、ゴメン、あかりちゃん待ち合わせがどうしたの?』
手が震える。
落ち着いて、落ち着くのよあかり。
「ニノちゃん、今どこでお買い物してるの?少し早く待ち合わせ出来そうだから、迎えに行くね」
何回か深呼吸してそう伝えれば電話の向こう側でニノちゃんが『ホントー?今ね、アキバでパソコン見てるんだよー。どれがいいか悩んじゃってさ』と声を弾ませて答えてくれた。
アキバのニノちゃんが好んでいくパソコンショップ…。
心当たりがあるところは1箇所だけ。
見付けるのは簡単そう。
タクシーで飛ばせば電車より多少早くつける。
まとめた荷物を持って家を出れば、通りに出てタクシーを捕まえて乗り込む。
「待っててね!ニノちゃん!」
ニノちゃんにつく悪い虫は全部全部、退治しないといけないんだから!




