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推しからの愛が強い件  作者: しゃのあーる
あなたとこれから
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迷子の天使

ホテルのチェックアウト時間になって外に出れば、まだまだ夏の暑さが残っていて蒸し暑い。


とりあえず2日間はオフだ、というあかりちゃんは1回自宅に戻って泊まりの用意をして私の家に来る。という予定を立てていた。

都内にあるらしい家にくるか?と誘われたが丁重にお断りする。

推しの部屋は生配信の時にチラ見えするくらいがちょうどいい…。


なんで部屋に来てくれないの。とぶぅぶぅ文句を言うあかりちゃんを電車に押し込み、3時間後に上野駅で待ち合わせの約束をした。

3時間ばかりの自由時間にルンルンと山手線のホームの方へ向かう。

秋葉原に行って薄い本とゲーミングPCを見るんだー。と自由時間ができた時に心に決めていたのだ。


足取り軽く混雑している東京駅の改札内を歩いていれば見覚えのある後ろ姿がフラフラと歩いている。

昨日のほわほわ系女子のAYAMIだ。

女性の平均身長よりも少し高い身長に、均整のとれた体付き。

後ろから見ていれば緩く巻かれている黒髪がふわふわと歩く度に跳ねている。


連日都内に出てきてるんだ、大変だなぁ。と思いながら行く方面が一緒で後ろをついて行くように歩いていたが、ふと彼女が立ち止まりキョロキョロと忙しなく色々な所を見る動きをし始めた。

(また迷子か…)

私もよくやるその動きだからこそわかる迷子特有の動きに、声をかけた方が良いか悩んでいればクルリと首を傾げながら振り返ったAYAMIと目が合った。


「「あ。」」


私に気付いた彼女も少し驚いたように口を開けた。

へらりと笑みを作り片手をあげて挨拶をすれば、物凄い勢いで鼻先がくっつかんばかりにAYAMIが近付いてくる。


「おはようございます。あの、秋葉原方面に行くにはどうしたらいいかわかりますか?!」

「……お、おう、近っ」

整った顔が目の前にあるのはちょっと刺激が強くて、思いっきり視線を逸らしモゴモゴとしていればガシッと手を握られた。

「あの、もう1時間くらいどこかわかんなくて!助けてください!」

また随分迷ってたんだなぁー…。

AYAMIからのヘルプ要請に少し気が遠くなる。

「私も秋葉原に用事あるから。一緒に行きます?」

昔やっていた金融業者のCMのチワワように瞳をうるうるとさせていたAYAMIがパァッと輝くような笑顔を浮かべた。

顔が近い分、破壊力が段違いだ。


「いいんですか?!」


握られていた手を更にギュゥと握られ、笑う彼女に頷いて見せれば「よかったぁ」と言われ握られていた手を恋人繋ぎに握り直された。

私の手を握っている彼女の手が緊張していたのか少し汗ばんでいたから大丈夫の意味を込めて握り返す。

「良いですよ。どうせ、行先一緒だし」

行こう、と促し山手線のホームに向かい手を引いて歩き出す。

「はい!ありがとうございます!」

小さな親切は後々自分に返ってくる。

これワタクシ論。

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