花火のお話、その2
*蘭視点*
「久しぶりー、なつぅ!!」
家に上がると、出迎えてくれたこの家の猫に挨拶をする。
グリグリと頭を撫でればンナァーと掠れた声で鳴いて挨拶を返し、猫はそのままニノちゃんの部屋へと入っていった。
「アイツ、ちっともあたしには懐かないんだ」
猫の後ろ姿を見ながら文句を言う彼女の横顔を見ながら「同族嫌悪なんじゃない?」と言ったらバーカ、と背中をバンッと叩かれて笑ってしまった。
夕食に宅配のピザをとり、何をするでもなく、リビングでお互いに携帯を弄りゴロゴロと缶チューハイを飲みながら過ごしていれば、ドンドンっと聞こえた花火の音に彼女が飛び起きてベランダへと出て行った。
「ねぇ、来て!!花火!!どこの祭りだろ?」
ベランダから彼女の元気な声が聞こえてくる。
私も起きあがりベランダへと行けば次に上がった花火の音の大きさと風景に「わぁ!」と歓声をあげた。
ベランダ側に建物がないこの家からは少し離れた場所から打ち上がる花火がちょうどよく見える。
彼女と2人で凄い!綺麗!とはしゃいでいれば、彼女がここに居て!とベランダから部屋の中へと慌てて戻っていった。
「はい!」
先程まで飲んでいた缶チューハイと、私のタバコケースをリビングから持ってきた彼女は自分もベランダに出てきてタバコに火を付ける。
「最後まで見よ!」
リビングの電気も消えていて、暗がりの中、花火の光に彼女の笑顔が浮かんだ。
「花火とか興味なさそうなタイプかと思ってた」
彼女と同じようにタバコに火を付け、ふぅ、と煙を吐く。
風に乗って火薬の匂いがする。
「花火とか祭りって好き」
彼女がそう言って笑った。
次々と打ち上がる花火をツマミに缶チューハイを煽る。
私の人生のここ数年で1番、贅沢な夏の夜の過ごし方なんじゃないかと思うほどだ。
「…また来年も見たいなぁ」
ポロリと零れた本音に彼女が一瞬驚いたような顔をしてから直ぐに笑みを浮かべてくれた。
「来年は祭り会場で見ようよ、2人で」
彼女からの誘いに今度は私の方が驚いてしまった。
「そこは、みんなでじゃないんだ?」
クスクスと笑い、隣にいる彼女の横顔を見れば、ぷぅと頬を膨らませ「あたしはニノさんみたく鈍くないから」と言っていた。
「じゃあ、2人で見に行こう」
見た目よりもずっとサラサラな彼女の金髪に触れて、色白な頬を撫でる。
「約束ね?」
簡単に口にした約束という言葉に彼女がニィと笑い「絶対、守れよ」と返してきて唇に軽くキスをされた。
クライマックスに近付くにつれて次々と打ち上がる花火でまわりは眩しいくらいに明るい。
「…そんなんじゃ足りない」
「んっ…」
彼女の手から吸いかけのタバコをとりあげ、自分の方へと引き寄せた。
小柄な彼女と20cm近く身長差があるおかげで彼女の体をすっぽりと包み込む。
細い顎を持って上を向かせてもう一度口付けると彼女の好む苦いタバコの味が口いっぱいに広がった。
夏っぽいお話を急に描きたくなっただけで、いきなり過ぎるだろ、とか後悔はしてないっ((吐血))




