迷子の迷子の子猫ちゃん
たわわな果実を見た後、疲労感に襲われながらも残りの面接をこなして行けば早くも最後の組になった。
ソロの子で、AYAMIという名前で活動中。
経歴はジュニアアイドルから地下アイドルに転身、ジュニアアイドル時代は新政党にぶっ壊されそうなテレビ局の番組にでていたらしい。
「失礼します」
澄んだ声が聞こえ、ゆっくりと入ってきたAYAMI。
黄色のサマードレスに黒髪のゆるふわカール。
色白な顔に清楚系メイクで全体的に避暑地のお嬢様っていうような風体だ。
お顔だけでいえば私的になかなか好み。
薄紅色のグロスを塗った唇がまた嫌味なくらい似合っていて可愛い。
「今はソロ活動というか、シンガーソングライターみたいな自分で作詞作曲したりしていて…踊ったりとかは苦手だけど、歌を歌っている時は幸せな気持ちになれるので好きです。」
ああ、なんだこの可愛い子。
歌詞とか書いちゃうんだー。
可愛いなぁー。
なんか、控えめに言って天使か?
先程の残念なイケメンのことをディスれないくらいホッコリとした気持ちでAYAMIを眺めてしまう。
今度、ライブいってみよー。と決めて彼女のパフォーマンスを見ていたら、あっという間に面接は終わっていた。
お疲れ様です。と言われて美人な社員さんにコーヒーを出されて啜る。
残念なイケメンと秘書さんは何か真剣な表情で話していて私のでる幕じゃなさそうだ。
そういえば面接中にずっと携帯鳴ってたっけ…。と思い出し、カバンから携帯を取り出せばタイミングを見計らったように再び鳴り出した。
電話の主は言わずもがな、なあの子だ。
「…もしもし…?」
『ニノちゃん!?やっと出た!!どこにいるの!?』
電話口で捲し立てられる言葉に、はい…はい…。と返事をしていれば、何だかおかしな方に話が進んでしまい東京駅であかりちゃんと待ち合わせする事になる。
まぁ、いいか。と思い電話を切った。
秘書さんとまだ話していた残念なイケメンに、あかりちゃんと合流して勝手に遊んで帰る旨を伝えて会社を出る。
外に出た瞬間に吹き出る汗に、はぁ。と溜息がでた。
「あ…さっきの…」
カバンからハンカチを取り出そうと立ち止まりカバンを漁っていれば、後ろが声がかかり振り返る。
後ろに居たのは黄色いサマードレスが眩しいAYAMIだ。
白いつば広の帽子をかぶって、麦わらのポーチを肩からかけていた。
彼女の周りだけ避暑感が漂っている感じがする。
「ああ、さっきはお疲れ様でした。後日合否に関わらず浅井の方から連絡がいくと思いますのでお待ちくださいね。」
出来るだけゆっくりとちゃんとした口調で挨拶し、私は何も知りません、というスタンスをとる。
私がなにか余計なこと行っちゃったら大変だもんね。
言質を取られないように気を付けながら、その場から「では~…」とサッサと逃げようとすれば、待って!と彼女が走ってきた。
まるで月9ドラマのワンシーンみたいな走り方だ。
ガシッと手を掴まれ、清楚系美人な顔が目の前に来て、泣きそうな表情を作る。
「帰りたいけど、駅の場所がわからなくて…!迷子になっちゃって帰れないんです!!」
「…はい?」




