騙し騙され
ずっと震え続けていた携帯は止まり、カバンの中がようやく静かになる、その頃には残念なイケメンの仕事場所だという場所にも着いた。
新宿のど真ん中にある高層ビルの1つを前に降ろされ残念なイケメンと並ぶ。
オフィスビルらしいそこの入口にはドラマとか漫画でよくある受付嬢がいる。
しかも、ビルの顔というだけあってやっぱり美人さんだ。
田舎には無いその受付嬢というものをじっくり観察してしまいながらも、歩き出した残念なイケメンのあとを付いていく。
うやうやしく頭を下げていた受付嬢達が私達が通り過ぎた後に「きゃあ♡」と声を上げていたのが後ろに聞こえた。
そりゃあ、黙ってれば残念なイケメンはイケメンだもんな。
颯爽と歩く姿はそら美人さん達も黄色い声を出しちゃうわ。
すれ違う社員さんらしき人達に挨拶をされながら行き着いた先は、学校の教室くらいの広さの会議室。
白を基調としていて殺風景なその部屋の中には、長テーブルと椅子のセットが1つとそれに向かい合うような形で椅子が5脚ほど並んでいた。
いわゆる、企業の面接みたいな形で…。
「えっと、浅井さん…?ここは?」
「プロデュースを企画しているんだが、それの顔合わせだよ。ニノ、君も今日来る少女達を見てくれたまえ」
騙された。
面会でちょっと人と会うだけだからとしか聞いてない。
いや、面会は面会なのか。
こんなんオーディションとか面接とかと変わらないじゃん!!とブゥブゥ文句の1つも言いたがったが新しいバックは欲しいので我慢した。
ただ騙されて腹も立っていたから、促されて長テーブル側の椅子に腰掛けた時、残念なイケメンが座る瞬間に椅子を引いてコケさせたのくらいは許されるだろう。




