推しの属性
「うーん、シンプルで美味しい!」
なんだろ。
何が起きてるんだ…。
うちであかりちゃんが具なし中華を食べている、この異様な光景。
キミは私の横にずっとくっついたまま離れないであかりちゃんを睨んでいる。
「…家…なんで知ってるんですか…?」
大好きな具なし中華なのに緊張のせいで味がしない。
そして、1番の疑問を最初に口にする。
「え?横浜で一晩一緒に過ごした時に教えてくれたじゃない!」
キョトンとした顔で言われた言葉に肌が粟立つ。
多分、接しちゃいけないヤツだよ!!
これ!!!
頭の中で警鐘が鳴ってる。逃げてー全力で逃げてー。と叫び声付きで。
「えっと…教えた…っけ?」
私の問いにあかりちゃんがスマホを少し操作して画面を見せてくれた。
画面いっぱいに映るのは眠たそうなすっぴんの私が貼り付いている免許証。
「ひぇ…い、いつの間に…」
推しのストーカー属性にドン引きである。
横にいたキミがあかりちゃんのスマホを取ろうと手を出すも、ひょい、とかわされスマホはあかりちゃんの鞄の中に戻っていった。
「てめぇ、ニノさん困ってんじゃん!!困らせてんなよ!!」
キャンキャン吠え出すキミを見るあかりちゃんの目が冷た過ぎて怖い。
「は。いつも独占してるんだから、たまに私が遊んでもらったって良いじゃない。おじゃま虫、空気読んでどっか行きなさいよ」
「なんだと、てめぇ!!表出ろや!!」
「暑いから嫌よ。アンタ1人で出てけば?」
この2人は本当に仲が悪いんだなぁ…。
流石、アイドルという女社会を生きてる事あってあかりちゃんは強かだし、負けん気も強い。
それに比べて、キミの煽り耐性の無いこと…。田舎のクソガキヤンキー丸出しなのだ。
いや、まぁそういう所がキミの魅力でもあるんだが。
キャンキャン吠えているキミに、ツンと澄まして煽っているあかりちゃん。
犬と猫みたいだ。
そんな2人のやり取りを眺めつつ、自分の分の具なし中華を食べきりHoneyの公式グッズのマグカップに入った冷え冷えの麦茶を飲み干す。
あー、麦茶がうまい。




