アンヨは上手作戦
中華街のメインストリートからさほど離れていないダイニングバーで女子だけのお疲れ様会をやっていたが日付も変わる頃。
普段アルコールはほとんど飲まないというあかりちゃんは潰れてしまい、蘭ちゃんも「どこのホテルに戻っていいかわかんなーい!!」と騒ぐ様になってしまった。
2人に飲ませるだけ飲ませたキミは上機嫌だ。
「え、どーすんのこの2人…」
テーブルに顔を突っ伏してすぅすぅ、と寝息をたてているあかりちゃんに、何かを喋ってカラカラと楽しそうに笑っている蘭ちゃん。
そろそろ閉店時間なので…と声を掛けられ、ホテルに帰すのにタクシーを呼ぼうにも、当人達が訳が分からない状態では話にならず刻々と時間は過ぎてしまう。
「もうお持ち帰りするしかなくない?」
迷惑そうにこっちを見ている店員さんの視線が痛い。
そして、軽々しく物騒な事をいうキミはあかりちゃんと蘭ちゃんの鞄を持ち、蘭ちゃんと手を繋いでさっさと店を出て行ってしまった。
「ちょっと!キミ!!…マジかぁー…」
酔いつぶれて寝てる人間は重い。
だったら多少なりとも自分の足で歩けている方の人間の"介護"の方がよっぽど楽なのだ。
ましてや、こちらも程よくよっている場合は特に…。
職業柄、酔いつぶれて周りに迷惑をかける事もあるし、酔いつぶれてる子を介護する事も勿論ある。
そこはもう「酔ってる時はしょうがないよね」という暗黙の了解で動いてるようなものだ。
優しい世界。うんうん。
そんな中に身を投じて早い10年。
酔っ払ってる人間の介護なんて容易い。
だけど、推し…てめぇは別だ。
想像して欲しい。
自分の神推しメンが目の前で酔いつぶれているんだ。
下心が湧かない方がおかしいだろう。
モノはついてないが、いきり立ちそうなシチュエーションじゃないか。
「あかりちゃん…起きて。帰るから、すこし歩ける?」
「…んー」
少しでも歩いてもらえないものかと声を掛ければムニャムニャ言いながらも反応があった。
よし、コレならいける!
「起きてねー、ゆっくり立ってみてー」
歩き始めの赤ちゃんを歩かせるように両手をとり立ち上がらせ店の外に連れ出すのに成功。
大佐、こちらニノ、作戦は無事に成功!引き続き、アンヨは上手作戦を実行しますっ!!




