エゴの結果
茶番劇が終わってからも飲めや騒げやのどんちゃん騒ぎで残念なイケメンにその場を楽しんでもらっていたが、コースの最後のデザートがくればお開きな空気になっていた。
酔いで気が大きくなっているイケメンも何を言っても、ワハハ、ワハハと大笑いしている。
「そうだ、浅井さん。今度、彼女達のライブを見に行きません?ライブデート!」
唐突に切り出した話しにあかりちゃんも蘭ちゃんもビクッと肩を揺らした。
「ん?そうだねっ!それは良い案だ!」
「私、彼女達のことだぁい好きなんです」
残念なイケメンに媚びる私を「え?」と2人は言いたげに見ている。
まだ話の流れが読めていないようだ。
私はHoneyの『営業』を邪魔をしに来た訳じゃない。
「そうなのかい?では、君の事を愛している僕も全力で応援しなければねっ!」
ほらね。主導権は私のモノ。
「本当に?嬉しい!」
とびっきりの笑顔で残念なイケメンに抱き着く。
奴の左肘辺りは今、大変幸せな感触に包まれているのだろう。
また鼻の下が伸びている。
快く私とキミの食事代も出してくれた残念なイケメンは、私達にタクシー代を寄越し、私と連絡先を交換してさっさとタクシーに乗って帰って行った。
うん、動きはスマートなのに何故、あんなに彼は残念なのだろう。
タクシーに乗り込んだ瞬間からメッセージを打ち込んできてるのだろう、ポエムみたいなメッセージがスマホを震えさせている。
こういう所が非常に残念だ。
「あー。疲れた」
タクシーが見えなくなるまで見送ってから、ボリボリと頭を搔く。
ずっと横にいてくれたキミとハイタッチ。
ずっとタクシーが居なくなるまで深々と頭を下げていたHoneyの2人がやっと頭を上げた。
「あ、あの…!」
あかりちゃんが涙目になりこっちに何かを言おうとしていた。
「大丈夫、あれなら私が上手く誘導できるから、Honeyの利益になる様にするね」
「違う…!違うの…!そんな事じゃない!」
へらっと笑う私の手をギューッと握ってきたあかりちゃん。
「あ、あの、ありがとう…。本当にありがとう…」
えぐえぐと泣きながら言われたお礼と握られた手を折れるんじゃないかってくらいに強くて握ってくれて困る。
「あたしからもお礼言わせて…ありがとう、あかり守ってくれて…」
ぴぇーっと子供みたく泣いている、あかりちゃんの肩を抱きお礼を言ってくれる蘭ちゃんを見上げる。
これで良かったのかはわからないし『営業』が彼女達の成果で上手くいったのかどうかもわからない。
良かった、って結果に結ばせられるまでにはまだまだ程遠いかもしれない。
でも、彼女らにお礼を言われる事がこそばゆい。
「いいってことよー」
こういう時にどんな顔していいかもわかんないから笑って胸を張った。