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推しからの愛が強い件  作者: しゃのあーる
あなたとそれから
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沼にようこそ!

「あま、うまー」

呪文のような飲み物を飲み、ふにゃふにゃと顔をほころばせ嬉しそうしているキミが車を停めてある場所を案内するために1歩先を歩く。

駐車場にちょんと停まっている私の古いミニクーパー。

車を持ってないキミの愛車になりつつあるのが悲しい。

助手席に乗り込もうとしたところで、キミがコッチコッチ!と運転席側に私を引っ張る。

休日の夕方なんて道は混むし運転したくない。

「じゃーんけーん…」

「「ぽんっ!!!」」

パーを出した私に、チョキを出したキミ。

くそ、自分から勝負をしかけたのに負けた…。

えへへ、と笑っているキミはパーを出していた私の手にキーケースを握らせてくる。

恨みがましくキミと握らされたキーケースを交互に見るも、キミはサッと助手席に乗り込んでしまった 。


「そーいえば、なんで朝いなかったの?」

車が動き出してしばらく経った頃、唐突にキミに朝から家を空けていた事を聞かれた。

「ライブ行くって言ってなかったっけ?」

「聞いてない…カレンダーにも書いてないし」

同居するにあたり私とキミには幾つかルールがある。

例えば、部屋に男を連れ込まない、とか出かける時はどこに行ってくる、とちゃんと伝える。とかそんな簡単なルールだ。

だいたいがお互いにアルコールが入った状態の時に予定を言い合ったりしてるから言った聞いてない、のすれ違いは多い。

喧嘩になるのも面倒くさいのでゴメン、と謝れば、キミはぷぅと不満げに頬を膨らませたまま窓の外を眺めていてた。

ちょっと面倒くさい彼女かよ!!!と内心ツッコミをいれる。


「あ。その袋の中にCDあるから出して」

助手席に座るキミの膝にの上に置いてある戦利品袋を指差し"それ"と言えば、今日買ったばかりのHoneyのCDを出してもらう。

車は古いがオーディオにはこだわった愛車。

キミが乗ってる時は大抵、会いたくて会いたくて震える歌手の曲が流れている。

知ってるか?今は会いたくて会いたくて震えないで、自分の取り扱い説明を歌ってるんだぜ。


CDを出してもらい信号待ちの時にセットすればすぐに流れ出したHoneyの曲。

アイドル特有のちょっと甘酸っぱい恋愛を描いたような歌ではなく、大人風味の歌。

ライブでは歌ってなかった曲だ。

耳障りの良いハスキーな歌声の蘭ちゃん声に、ちょっと媚び感のある歌声のあかりちゃんの声。

「この人達のライブ行ってきたの?」

キミが興味を持ったのかCDのジャケットをまじまじと見ていた。

「そうだよ。すっごい可愛かった」

最近私がアイドルにハマっているのは食事中に延々と話していたからキミも知っている。

ずーっと話している私の話しを適当に聞き流し、興味を持つことがなかった彼女が興味を持っている…!!ここは布教のチャンス!!

「今度、ライブ行ってみようよ」

ここは食いつかずに、それとなく誘う。

これ布教の鉄則。

CDのジャケットから、膝の上に置いてある中身にも興味がでたのか中を見ているキミが「うん」と「ふーん」が混ざったような生返事で返してきた。

よっしゃ、とガッツポーズしそうになるのを我慢してあくまでクールに。

クールにいくのよ私。

楽しめる仲間は多いに越したことないのだ。



沼に叩き落とせばこっちのものなのだから。


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