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推しからの愛が強い件  作者: しゃのあーる
あなたとそれから
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天使降臨

Honeyのステージが終わる頃、何故か私は後ろから押されに押され所謂"最前ドセン"にいた。

最前ドセンとは最前列のど真ん中のアイドル用語であり、そこはコアなファンで埋め尽くされている。

ステージ前ではグイグイ後ろからも、横からも押され足を踏まれこれ以上流されないようにと、ステージ前に設置されている柵を必死に掴んだ。

最前列のど真ん中に居るせいで会場から出ることも出来ず、ひたすら人との密着度の高さに二日酔いを呼び戻されて吐き気と戦っていればにゃんだふる!の曲がかかりはるかちゃんとみみちゃんがステージ上にでてきた。

歓声は地鳴りのように響き、気持ち悪さで俯いてた顔を上げれば目の前にいるにゃんだふる!の2人が近過ぎて鳥肌が立つ。

最前列すげぇ。いい匂いする。と思いながらも、ライブが始まってしまえばぎゅうぎゅうに押してきていた人達も落ち着き少し人との間に隙間が出来ている。

グルグルと視界と胃の中の内容物が回る感じが我慢しきれず最前から離れた。


なんとかロビーまで人を押し退けて出てきて酸素を求めるように深呼吸…。

ライブハウスに設置されている自販機で水を買い、隅の方で壁に寄りかかりながらそれをがぶ飲みしていた。

「大丈夫?」

自分のステージが終わり、ステージ衣装のドレスから少し長めの丈のTシャツに着替えていたHoneyのあかりちゃんに声を掛けられ危うくペットボトルを落としそうになる。

「あ、あかりちゃん…?」

「うん、あかりだよ~。大丈夫?顔を青いけど…。気分悪い?」

自称155cmの私よりも10cmくらい高い身長を少し屈めて心配そうに覗き込んでくるあかりちゃん。

状況を把握しきれずに手に持っていたペットボトルをこねくり回して「えっと、え、えっと」とコミュ障全開になってしまう。

さっきまで気持ち悪くて冷や汗が止まらなかったのに今は顔が熱い。

「だ、大丈夫…です、あ、ありがとう…」

「楽しむのも重要だけど、無理しちゃダメだよ!」

にっこり笑ってくれた時に出来る目尻の笑い皺が優しすぎて、首振り人形みたいになる私の頭をポンポンと撫でてあかりちゃんは物販スペースへと戻って行った。


まだちょっと冷たさが残るペットボトルを頬に当てて「あー…」と小さく声を出せば、自分を落ち着かせるようにふぅと息をつく。

うおおおおぉー!!っと謎に叫び出したい。

多分、青かった顔は今は真っ赤になってるだろう。


なんだ?天使か、今のは。

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