深夜の徘徊と遭遇
深夜3:00
自分以外に人一人いない道を歩く。
昼間は行き交う人々の喧騒で騒がしい街も、深夜になると人々が寝静まっていて静寂に包まれている。
申し訳程度に置かれた電灯はチカチカと点灯していて暗闇に慣れた目に染みてくる。
電灯の明かりは、灯りの当たっていないところの闇をより深く見せ最早、道路の端の溝と道の差など分からなくさせている。
そのため、幸薄そうな顔をした少年・五十嵐 真司は道の真ん中を歩いていた。
日常になっている深夜徘徊を初めた頃は流石に道の端っこを歩いていた。
しかし、気を抜くと溝に落ちて痛い想いを3回ばかりした頃には道の真ん中を歩くようになっていた。
念の為に言っておくと歩道の真ん中ではなく、車道の真ん中だ。
昼間に同じことをやると速攻で御陀仏案件だ。
深夜特権である。
昼間では考えられない事を平然と深夜では出来てしまう。
だから、深夜徘徊は止められないのだ。
行き先も、目的も決めずにフラフラとしていると1時間が経っていた。
特に用もなかった深夜徘徊を終えようと帰路に向かう道に向かう途端・・・
・・・・・・僅かに地面が揺れた。
それ自体は大したことは無いのだが、同時に風に運ばれて妙な音が真司の耳に入ってきた。
カンッ、キンッと甲高い、金属をぶつけた様な音だ。
暗闇から金属音が聞こえてくるなんて、どこのホラー映画だよ!!
と、思いつつ音のする方に真司は駆けた。
その時、あるはずの恐怖心は好奇心に負けてしまっていた。
「音がしてくるのは森林公園の方か。」
段々、目的地に近づく程あの奇妙な金属音が大きくなってくる。
道路を駆けてやっと、目的の場所に着いた。
よく見ると森林公園の奥が淡く赤く光っている。
「おいおい、公園で焚き火でもしてんのか!?ここ、森林公園だぞ!火事になったらどうすんだよ!?」
火が気になるし行ってみるか・・・。金属音も気になるしな・・・。
意を決して問題の地点に近づいてみることにした。
走ってここまで来たからだろうか、それともこの状況だからだろうか、さっきから心臓の鼓動がうるさく感じる。
身体から嫌な汗が吹き出てシャツが濡れて気持ちが悪い。
あまりの緊張に吐き気もしてきた。
自分が何に緊張して、何を恐れているのか自分でも分からない。
しかし、真司の直感が此処から先を見たら駄目だと叫んでいる事は分かる。
ここに来て自分の知らないものに対する恐怖心が好奇心を上回る。
それでも、ここまで来たには引き返せないと震えていた足を歩かせて息を殺して近づいた。
裏から周り茂みから覗き込む。
しかし、そこには思わず目を疑うような光景があった。
目に飛び込んできたのは、紅い焔を日本刀に纏わせて奇妙な人型の何かと闘う少女の姿であった。