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新たな仲間と新しい敵

騎士団団員証No9

名前: アカネ・ルブルミエス

職業: 二次職 サムライ

特性: 氷の視線

    ???

「「巨大モンスター?!」」

ギルド内にユーマとソフィアの声が響き渡る。

その中心点にいるアリアは耳に手を当てながら

「はい。先日町の観測所から地面の揺れが観測されました。」

日本にいたユーマは地震かと思ったが異世界人のソフィアは

顔の色が変わった。

「それってもしかして?!」

「そうです。アレです。」

「アレ?!って何?」

ユーマは話についていけないと早々に断じ、真面目な話はソフィアに任せることにした。

「まさかアレがくるなんて。伝説じゃなかったの?!」

「はい。私もまさか伝説を相手にする日が来るとは……!」

アリアはテンションが上がっている。どうやら伝説好きなようだ。

周りにいる冒険者も活気に満ちている。

「アレが来るぞぉー」

「報酬が俺がもらう!」

「速く!討伐依頼出してくれ!」

いつも以上に暑苦しい冒険者たちを押しのけてきたのは

「あなたたち!アレが来るのにアタシを呼ばないなんてどういう了見よ!」

オリビアだった。いつも通り修道服が似合わないうえにパツパツだ。

「オリビア!」

「聞いたわよユーマ。ホブゴブリンの件、ごめんなさいね。」

ウインクしながら言ってきているあたり本当に謝っているのかわからない。

「いいよ。俺たちもそれなりに成長したから。」

ソフィアが戦える条件が増えただけだが。

「でもそろそろ俺も何かしらで名を上げたいな。」

「アレが本当に来ているならあなたの出番じゃないかしら。」

(俺の出番……?なんでだ?)

ユーマはオリビアの言っていることの意味がよくわからなかった。

「それよりお前ようやく名前で呼ぶようになったんだな。」

前はボーイとか言っていた。

「それね。区別がつかなくなって誰が話しているのか作者もわからないから変えたのよ。」

余りそういうことを言わないでほしいとユーマは思った。

「まあそれはいいとしてアレは強敵だからねアナタも準備しなさい。」

(あれの正体を教えてくれないと何もできないんだが。)



アレの正体はいずれわかるだろうと思ったユーマは町の散策をすることにした。

(そういえばギルドと外の往復ばかりで町のことは何も知らないな。)

異世界で冒険と息巻いてた割りには最も近くて安全な冒険をしていない。

この町はフル=イマチというらしい。初心者向けの町らしい名前だ。

石畳の整備された道が多くそのわきには観葉植物と思われるものがある。

武器、防具を売る店は初心者向けといわれるせいか安価だが質のあまりよくない

物が多いが食品などの生活必需品はよく揃う。

ちなみに王都からしたらこの町は辺境にあるらしい。ユーマの主観ではここが王都だとしてもおかしくない程度の広さがあるためそれには驚いた。

ユーマは町にある骨董品やを見に行った。ここは入り口からほど近いからか

ユーマもよく利用する。たまにレアアイテムが法外な額で売っているのだ。

「よお、兄ちゃん!」

店主が気さくに話しかけてくる。それなりに仲はいい。

「また何か変なもの仕入れてないよな。」

店主は二ヤリとした後

「しょうがない。兄ちゃんにはこれを見せよう!」

と懐から取り出したのは

「じゃーん!猫耳だ!お値段なんと3万ペル!」

ペルと言うのはこの世界の通貨の単位だ。ほぼ円と言い方を変えただけ。

日本人のユーマに優しい世界だ。言葉も通じるし。

「買った!」

「即答かよ!」

この猫耳ただのアクセサリで確実にぼったくられているのだがそんなことは意にも介さず

「これソフィアにつけたら面白そうだ。」

なんてことを考えていた。



ソフィアは王都の騎士団の団長の一人娘だ。

そのせいか幼いころから剣の訓練を受けていたり人のために動いていた。

将来は騎士になる。そう父に教え込まれていたソフィアは無意識的に自分もそう思っていた。

思春期になり恥ずかしがりの癖が出て父から見放された。ふつう悲しむべきだがソフィアは解放された気分になっていた。そして王都から遠く離れたこの町に根を下ろした。

ユーマと出会うのはその後である。

「ソフィーも変わったね。」

ギルドでしみじみとしていたらアリアが話しかけてきた。

アリアはソフィアがここに来たばかりのころからの付き合いだ。

「何を言ってるのよ。」

「そういうところ。前は『何?』としか返してくれなかったもん。」

昔のソフィアのまねをしながらアリアが言う。

「くくっ何それ。」

「ユーマさんのおかげだね。」

「な……なんであいつが出るのよ。」

ソフィアはわかりやすく不機嫌になる。がその顔が少し高揚しているのを見逃すアリアではなかった。

「好きなの?」

「それはないわ。」

赤かった顔が一瞬で元に戻る。二重人格を疑うレベルだ。

「好きとかじゃないけどなんとなく負けたくないのよ。」

窓から雲一つない空を見上げる。今日はいい天気だ。



町に来ているのはアレだけではなかった。

フル=イマチよりはるか東の王都より来た騎士団員の

アカネ・ルブルミエス。700人いる騎士団の中でも10本の指に入るほどの

実力者だ。まるで氷のような彼女の視線は荒くれだろうが魔物だろうが凍り付くと言われている。

アカネが町に着いてから思ったのは

「王都に比べてここはきれいね。」

王都はあらゆるところにポイ捨てされたゴミがあり壁には何か模様が描かれている。

アカネはそれに対し何か行動はできないかと色々と提案、行動していたが一つも

上手くいかなかった。それは上層からの威圧とアカネ自身の問題だ。

「よそと争う前にここみたいに中をきれいにするところからはじめるべきね。」

町の入り口には色とりどりの花が迎えてくれる花壇がある。

アカネは花は好きだ。女子なら嫌いな人はいないとアカネは思っている。

「うひょぉぉ!!猫耳だぁぁぁぁ!」

「おい兄ちゃん。さすがに騒ぎすぎだ。」

町の中の方から不愉快な声が聞こえた。この花の都にふさわしくない、どちらかというと王都向けのものが。

アカネは眉間にしわを寄せながら騒いでいる二人組の方へ向かう。

今日は何かあるのか町の入り口付近には他に人はいなかった。

「あなたたち。少し黙りなさい。」

アカネを見るたび店主の方は黙ったがもう一人の珍しい黒髪の男は

「えっと、どなた?」

アカネに対して恐れる様子が全くなかった。



ユーマが猫耳を買って一喜一憂しトリップして逆立ちしながらエビのまねしているような

心境でいたとき赤髪の美女に注意された。

見たところ強そうには見えないのだが店主は

「あの赤髪?!まさか氷の女王か?!」

などと言って固まってしまっている。

(氷って赤髪なら炎じゃないか?)

「えっと、どなた?」

赤髪の美女は懐から勲章を取り出しそれを見せつけながら

「私は騎士団の第6席のアカネよ。あなたたちが騒いでいるから注意したわ。」

ユーマにはピンとこなかったが店主の様子を見る限りすごい人に目をつけられたようだ。

「騒いでるっていってもここじゃ割と普通ですよ?」

「兄ちゃんやめとけって。」

さすがに無実のことで疑われるのはユーマ的にもむかつく。

何より目の前のアカネはユーマがまだ一ノ瀬悠馬をやっていたころ学校でうるさく注意されてきたクラス委員長と似ている。多分名前も同じ。

「これが運命か……。」

「何を言ってるの?」

「別に。」

アカネは腕を組み見ろしたように

「私はあなたたちに謝罪を求めているのよ。美しい花の景観を損なったことをね。」

と言ってきた。

「なんのはな……」

「すいませんでしたァァァ!!」

「俺たちはむじ……」

「これからはァ!注意しますゥゥゥ!!!」

「…………」

それだけ言うと店主は逃げてしまった。

この場にはアカネとユーマのみ。ユーマは腕に装着しているクロスボウに

意識を向ける。

(相手は武器を持ってない。なら脅しくらいは)

アカネは鬼のような無表情でユーマを見ている。まさに氷の女王だ。

(無理だな。殺される。)

どうやって逃げるかの算段を立てていた時、突然轟音と共に地面がはげしく揺れた。

「うわっ」

「きゃ」

(今凄いかわいい声しなかったか?!)

音の主はアカネだ。その証拠に少し顔が赤い。

「これは何?まさかあなた?!」

「知らん。俺じゃねぇし。」

(アレってやつか?)

ユーマは町の入り口を見る。そのはるか遠くの方地平線のかなたから何か来るのが見えた。



フル=イマチは古代の建築様式を使っている。その為か街並みも古い。

町を囲うように壁が張られ入り口からしか入れないようになっている。

壁の高さはゆうに50メートル。

()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()

「アレが……。」

「まさか本当にいたとは。」

それは傍目に見れば大きな亀だ。

だが顔と思われる部分にはあるべき目や鼻がない。その代わりに場違いなほど大きい口がついている。

灰色の皮膚はうねうねとうごめいていて規則性がない。

焦げたように真っ黒の甲羅と皮膚の間からは常に瘴気が出ている。

亀が移動した後は荒廃していた。まるで命を吸っているかの如く。

町の入り口にいるユーマ達にもそれが見えていた。

「何だあの亀?!」

「あれはそんなものじゃないわ。」

この世界には神獣の伝説がいくつもある。あれはその一つ

「崩壊を司る神獣。魔亀(まき)よ。」


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