冒険の準備
ギルドカードNo3165
名前: ユーマ・イチノセ
職業: 一次職 マーチャント
特性: 竜撃の王
一ノ瀬悠馬は元々は日本で高校生をやっていた。
特に夢もなかったので日々惰眠をむさぼっていた。
そんな時オンラインゲームに出会ってしまい
学校にも行かなくなっていった。
学校や親からは心配されていたが人付き合いは
悪い方ではなかったので学友との交流が途絶えることはなかった。
なのだが割合的にオンラインの友人との付き合いの方が多くなっていった。
そんなある日ゲームで同じコミュニティにいる人からリアルで会わないかと
誘われた。ユーマはこういう場合の危険性についても理解はしていたが
快く了承した。そして当日悠馬は待ち合わせ場所まで行く途中の駅で
誰かにホームから線路に落とされ死んだ。押した相手の顔は見ていなかった。
「今思えば誰だったんだろうな~」
ユーマはギルドで朝食のパンをかじりながらそんなことを考えていた。
自分が殺された時のことをそんな気楽に考えられるのは
世界広しといえどもユーマくらいのものだろう。
「何の話よ。」
そういうのは目の前で目玉焼きと思われるものを食べているソフィアだ。
金髪をいつもはポニテにしているが今日は無造作に伸ばしている勇者様だ。
いつもの鎧ではなく青を基調としたチュニックを着ている。
ソフィアは謎の卵を使った目玉焼きを一心不乱に食べている。
ここの料理は素材が分からないので少し怖い。オークとかグリフィンとか使ってそうだ。
「いや。弓とかで不意打ちされたモンスターとかってどういう気分何だろうなって話」
「そんなの不意打ちと気づいたころには死んでるんだしどう思うとかはないんじゃない?」
「そういうもんかね。」
昔の記憶を思い起こして出た結論がそれだった。
「お二人とも朝から物騒な話はやめてください。他の人もいますので」
そういって来たのはアリアだ。説教モードなのか少し笑顔が怖い。
朝はクエストを受けに来る人は少ないので給仕の仕事もしているようだった。
受付越しだと全身が見えなくてよくわからなかったのだがアリアさんもなかなかのものをお持ちだった。
下手するとソフィアよりも……
「………」
ソフィアがこちらをにらんでいたので慌てて話題を作る。
「え…えーとここの制服ってかわいいんだな。なんかメイド服みたいだ。」
「メイドさんのですか?でもありがとうございます。結構気に入ってるんですよ。」
「いやーホント。いつまでも見ていたいです」
「ユーマさん。あんまり見られると照れちゃいます。」
と言いながらアリアがクルっと一回転した。サービスなのだろうなかなか慣れてる感じで
スカートがふわっと上がった。周りの男たちから歓声が上がった。
ギルドの制服はメイド服のようなデザインだ。
そして乳袋がある!
アリアが白髪で柔らかい雰囲気があるせいか清楚さと色っぽさがいい感じで両立している。
といつものコントをしていたらコーヒー(?)を飲んでいたソフィアが言った。
「ユーマあなたまたナンパする気?」
剣こそない物のその目は殺意すら感じられた。
「やっぱり人数増やすべきじゃないか?」
朝食が終わった後ソフィアと今後について会議をしていた。
議題は仲間を増やすか否か。二人だとやれることに限界があるし
何よりソフィアの性格強制にも人数が多ければいいと思ったからだ。
アリアに相談したところ募集はかけておいてくれるらしい。
「で…でも今のままでもやっていけてるわよね?」
「まあなんとかなってはいるけど。それは簡単なクエスト選んでるからだし。」
実際戦闘になると俺は目隠しをしているので、何もしていない。
さすがにこのままというのも男として情けない。
せっかくの異世界だから死なない程度に戦ってみたいし。
「ソフィアがどうしても嫌だというなら二人でもいいけどな。」
こういえばソフィアが折れることは一週間の付き合いでわかっていた。
「ま…まあそこまで嫌とは言ってないし。あなたがいいなら私は問題ないわ。
私にとっても悪い話ではない気もするし。」
ソフィアはあまりこういう時自分の主張を通そうとはしない。
なので基本的に方針はユーマが一人で決めていたのだ。
「問題はだれを入れるかだよな。」
「そうね。私はナイトであなたはアーチャーよね。となると僧侶系とか魔法使い系かしらね。」
聞き慣れた単語がどんどん出てきた。この世界にはそういった職業があるらしい。がユーマは自分なんなのか分かっていない。
「何の話をしてるんだ?」
「あなたギルドカード持ってないの?」
「持ってるぞ。ステータスとか特性とか載ってるやつだろ?」
「そこに職業も書いてあるのよ。」
ほら、とソフィアが自分のギルドカードを見せてくる。
確かに二次職 ナイトと書いてある。
オンラインゲームの職業と同じイメージで正しいようだ。
ユーマは自分のカードを確認してみる。
色々と自分の認識と違っていた。
ソフィアはユーマがクロスボウを扱うからアーチャーと言っていた。
自分もそのつもりだった。もとよりやってたゲームでアーチャーだったから武器としてクロスボウを採用していたのもあるが。ギルドカードには一次職マーチャントと書いてある。
「な…なあソフィア。マーチャントってなんだ?」
「マーチャントは商人のことね。基本的に冒険者向けではないわね。自衛ができるようにするためにそれなりには戦闘スキルも使えるとは思うけど。」
基本的に冒険者向けではない。その言葉が頭の中で反芻する。
「職業って替えられんの?」
ユーマはかなり声が震えている。特性に続いて職業も死にそうなのだ。
「無理ね。職業は神の御意思によるものだから。」
「マジか。」
つまり神様に転生させられた挙句、職業も特性もほとんど意味がないということか。
特性に関しては超レアと言われているだけに悲しくなってくる。
「死にたくなってきた。」
次は馬車あたりに轢かれようか。
「大丈夫!ユーマにだってできることはあるわよ!」
ソフィアが必死でフォローを入れてくれた。
だがその程度で納得するほどユーマは調子よくはない。
「例えば?」
「え~と、え~う~ん………目隠しできるところ?とか?」
確かに最近は言われる前に察して目隠しをしている。
だがそんなところを褒められても無意味である。そもそも褒めていない。疑問形である。
ふと背後に強烈な気配を感じた。
「あなたたち、パーティメンバーを探してるって聞いたけど」
振り返ってみると化粧をした大男(?)が立っていた。